「企業内容等の開示に関する内閣府令」改正への対応

【解説動画】「企業内容等の開示に関する内閣府令」改正への対応

2022年6月に公表された金融庁金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告における、「サステナビリティに関する企業の取組みの開示」、「コーポレート・ガバナンスに関する開示」などに関する制度整備を行うべきとの提言を受けて、2023年1月に企業内容等の開示に関する内閣府令（以下、「内閣府令」という。）の改正が行われ、主として、以下の事項について開示要件の拡充が行われました。

この内閣府令により、広範囲での非財務情報開示が有価証券報告書の開示で求められるようになったため、多くの企業は部門横断的で複雑かつ多様な課題に直面していると想定されます。その一方で、開示は企業の行動変容につながることから、今回の内閣府令対応をサステナビリティ経営高度化の好機ととらえることができます。

サステナビリティ情報開示で企業が直面する課題を整理すると、「制度対応」、「経営管理への組み込み」、「プロセス構築」、「システム構築」、「組織設計／人材育成・教育」の5つの領域に整理することができます。これらの課題を着実に解消していくことが、開示対応の先にある目指すべきサステナビリティ経営の実現につながります。

• 開示基準対応：現状を把握、国内外の制度との差異分析、対応の優先順位付け
• マテリアリティの再検討

• 社内ルール設計：規制を反映した社内管理ルールの作成・見直し
• サステナビリティ開示項目の経営戦略、事業戦略での活用方法の決定、反映、目標設定（KPI化）
• KPI化した項目の業績管理（計画策定、実行、業績評価、改善策策定）への反映

• 情報収集～開示・報告までの、組織体制（職務分掌作成）、方針・マニュアル策定、開示・報告スケジュールの策定、早期化
• 正確性の担保、監査・保証も見据えた内部統制の整備、対応
• プロセスルールの管理・見直し

• 情報入力、集計、管理体制と整合したITツール運用の方針策定、ツールの開発・改修
• システムの管理・見直し

• サステナビリティ開示に対応した、あるべき組織体制の検討
• 財務・非財務情報を統合した開示、経営管理に対応した人材の育成・採用
• サステナビリティ経営の重要性の全社への浸透

課題整理とその対応を的確に進めていくうえでは、「課題の原因や所在を正しく理解すること」、「課題解決のゴールを設定すること」、「解決戦略の実行につなげること」が重要と考えます。まずはその起点として、縦軸に課題洗い出しの観点として、プロセス／システム／組織・人材、そして横軸に検討領域として制度対応（外部向け開示）／社内管理から成る課題整理のフレームワークを活用し、課題を網羅的に把握・整理することが必要となります。

そして、その課題整理結果に基づき、対応を検討し、実効性の伴った計画の策定につなげます。

従来、有価証券報告書開示は経理・財務部門が中心に対応されてきたものの、このような幅広い検討領域における課題整理と着実な対策の実行には、サステナビリティ担当、人事担当など、関連部署を巻き込んだ全社的対応が必須となります。

3月決算会社における2023年3月期有報開示対応を通じて、どのように課題整理を実施していくべきか、その検討アプローチは、下図の通り2段階になると考えられます。

課題の網羅的な整理は重要ではあるものの2023年3月期開示までには限られた時間しか残されていないことから、まずは優先度が高い制度対応の（報告）プロセスに焦点を当てて課題整理と対応の実施を行います。そのうえで、2023年3月期有報開示対応後、より長期的な視点から、検討スコープを社内の経営基盤であるITシステム、組織・人材にも拡げて網羅的な課題整理を実施し、対応策を実行計画に落とし込み、2024年3月期以降の開示対応およびサステナビリティ経営の高度化を進める、という検討アプローチが現実的かつ実効性を伴うものであると考えます。

KPMGは、財務報告の高度化支援や内部統制構築支援、サステナビリティ経営高度化支援で長年培ったノウハウを生かし、企業の非財務情報報告プロセスの高度化、および、その先のサステナビリティ経営の実現をご支援します。