不安定な国際情勢や、特定国への過度なサプライチェーン依存への懸念、先端技術の軍事利用などを背景に、経済安全保障・地政学リスク対応の重要性が増しています。
KPMGは、企業におけるリスク管理体制構築、リスク評価および対策の立案から実行まで総合的に支援します。
経済安全保障・地政学リスクの視点
経済安全保障・地政学リスク管理は、関連分野が広汎かつ、情勢変動や法規制・規制リストの更新が早いため、各領域の専門チームと連携しつつ、リスク情報を経営層に共有できる仕組みの構築が肝要です。
分野 | 対応事項(例) | 具体的なリスク(例) |
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安全保障貿易・経済制裁 | 輸出管理規制の改正・規制リスト更新への対応 | ・先端技術・基盤技術等に関する輸出規制 ・米国原産品等の再輸出規制対応 ・米国OFAC規制に基づくSDN(Specially Designated Nationals and Blocked Persons)リスト更新 ・中国輸出管理法・反外国制裁法への対応 |
地政学 | 各規制・政策の背景やカントリーリスクの影響 | ・不安定な国際情勢下での有事の可能性 ・国際的軍事同盟への加盟等を巡る国・地域間の摩擦 ・領土問題を巡る国家間の摩擦 |
サプライチェーン | サプライチェーン関連規制・政策を踏まえた対応 | ・各国の投資規制 ・半導体不足下のサプライチェーンの見直し ・経済安全保障推進法等の各国サプライチェーン強靭化策 ・拠点・物流等の見直しに係る移転価格税制対応 |
情報セキュリティ・知的財産 | 情報流出リスク対応、特許等の知的財産管理 | ・技術情報の持ち出し・軍事転用 ・各国データ関連規制 ・ハイブリッドクラウド化対応 ・基幹インフラのセキュリティ ・機微技術に関する特許の公開制限 ・セキュリティクリアランス |
人権/役職員等の安全 | 人権施策・役職員等の安全に向けた対応 | ・人権問題に伴う調達先の見直し ・人権侵害被疑物品の輸入差止め ・紛争に伴う役職員等の安全 ・言論統制への対応 ・政情不安に伴う人権侵害 |
散見される経済安全保障・地政学リスクの課題例
経済安全保障・地政学リスクの観点から、サプライチェーンを含むリスク評価、リスクを踏まえた取引・投資判断、危機への備えなどの取組み上の課題や、組織横断的なリスク管理体制を十分に整備・運用できていない例が散見されます。
経済安全保障・地政学リスク管理のアプローチ
組織・リスクテーマに関して横断的に対応すべき事項と、各リスク主管部門が従来より職責とされている事項(またはその延長)の両観点から、抜け漏れなく対応することが不可欠です。
経済安全保障・地政学リスク管理体制・取組みの整備 ~支援概要
KPMGは、グローバルネットワークや各セクターの専門家等と連携しながら、リスク評価、リスクシナリオ分析からサプライチェーン戦略、BCP・危機対応プロセス、経営判断プロセスの見直し、各取組みを支える体制の構築を支援します。
【取組み推進】
サービス概要 | 実施事項例 | 論点例 |
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リスク評価 | カントリーリスク、関連法制を踏まえた、リスクの洗い出しと対応状況の可視化を行い、その脆弱性や課題を評価 | ・バリューチェーン/サプライチェーンにおけるリスクの洗い出し ・脆弱点、統制上の課題の把握 |
シナリオ分析・シミュレーション | 想定されるシナリオを分析し、各対応策を整理のうえ、必要に応じてシミュレーションを実施し、関係者間の認識共有等を図る | ・予兆期/リスク顕在化期等のシナリオ分析 ・各シナリオへのフェーズ別対応策 |
サプライチェーン戦略 | サプライチェーンの寸断等を想定したサプライチェーンの脆弱性・課題を診断し、対応策や見直し案を策定 | ・脆弱点を踏まえたサプライチェーン再編 ・各国サプライチェーン強靭化政策を踏まえた見直し |
BCP・危機対応プロセスの策定 | 紛争等のリスクを想定したBCPを策定するとともに、駐在員の退避等の危機対応プロセスを明確化し、危機に備える | ・各種テーマのBCP・危機対応の共通事項/固有事項の整理 ・サプライチェーン戦略との平仄 |
経営判断プロセスの見直し | 取引審査・投資プロセス・事業撤退方針へのリスク基準等の見直しを行い、リスクを踏まえた意思決定をサポート | ・リスク評価結果と取引判断等基準への統合 ・デューデリジェンスの設計 |
【基盤構築】
サービス概要 | 実施事項例 | 論点例 |
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経済安全保障・地政学リスク管理体制の設計 | 統括部門の設計や既存機関の見直し、インテリジェンス機能の設計等を推進することにより、司令塔、参謀機能を強化 | ・統括部門の導入要否・設計 ・インテリジェンス機能の設計 ・リスク主管部門との連携方法 ・グループ間の連携方法 |
アプローチ例:経済安全保障・地政学リスク評価・対策の策定
KPMGのグローバルネットワークを活用しながら、日本企業に重要な影響を与える経済安全保障・地政学リスクを中心に、最新の動向を踏まえ、リスクシナリオや事業への影響を分析し、効果的・効率的な対策の立案と実行を支援します。
アプローチ例:経済安全保障・地政学リスク管理体制の構築
KPMGは、体制基盤の構築にあたり、現状診断のうえ、体制のミッション/機能設計(新設や既存機関の見直し)、役割分担の整理、インテリジェンス機能の設計など、組織運営に必要な対応をサポートします。
ステップ1 現状診断・戦略策定
経済安全保障・地政学リスクや体制・取組みを現状診断のうえ、見直しに向けた戦略を策定
ステップ2 体制・業務の見直し
リスクベースアプローチに基づき、人材施策、プロセス・IT、情報等に関する施策の具体化・準備を推進
ステップ3 改善の実行
体制・取組みの改善施策を実行し、経済安全保障・地政学リスク管理に関する新たなPDCAを推進
【経済安全保障・地政学リスク管理体制構築の視点例】
業務プロセス | ・法規制改正・リスト更新への対応 ・リスク管理と既存プロセスの統合 ・有事対応体制・エスカレーションプロセス |
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システム | ・スクリーニングシステムを活用した取引審査 ・GRCツール、マターマネジメントツール等を活用した統合的リスク管理 |
ナレッジマネジメント | ・データベースの構築・活用 ・関連業務の集約・管理を行うプラットフォーム |
インテリジェンス機能 | ・インテリジェンス機関との連携 ・情報センター機能の設置 |
アセスメント | ・サプライチェーンリスク(情報・人権等) ・リスク評価の取引・撤退基準への反映 ・統制の脆弱性・課題 |
ミッション | ・経営者をサポートする参謀機能 ・関連部門/グループのハブとなる統括機能 ・サプライチェーン施策等の戦略への反映 |
育成 | ・視野の広い/専門性を有する部員の育成 ・関連部門とのコミュニケーションスキル |
アサイン | ・リスク統括部門とリスク主管部門の兼任 ・リスク分野別の専門人材のアサイン ・海外拠点における担当者・専門家のアサイン |
関連リスクテーマに関するKPMGによる支援
KPMGは、グループ会社間で連携し、専門知識やスキルを活用しつつ、経済安全保障・地政学リスク管理における各リスクテーマへの対応を総合的に支援します。
支援例 | 関連トピック例 | |
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安全保障貿易・経済制裁 | ・安全保障貿易・経済制裁リスク管理体制の高度化 °体制・取組みの診断(アセスメント) °ポリシー・業務プロセスの改善 °モニタリング改善 |
・米国EAR※・OFAC※規制の厳格化 ・米国ECRA※に基づく新興技術等に関する輸出規制 ・中国反外国制裁法等との板挟み ・改正外為法(みなし輸出の明確化等) |
情報セキュリティ | ・経済安全保障に係る情報管理体制アセスメント ・経済安全保障関連データマッピング(国際データ移転状況に関する調査) ・情報セキュリティに関するグローバルガバナンスおよび標準ルール(委託先の選定・管理を含む)の構築 |
・ハイブリッドクラウド化対応 ・セキュリティクリアランス制度対応/ソフトウェア部品の出所管理 ・重要インフラにおけるサイバーセキュリティ関連基準の順守 |
サプライチェーン | ・経済安全保障・地政学リスクを踏まえたサプライチェーン再編 ・サステナブルサプライチェーンの構築 ・各種デューデリジェンスプロセスの構築 ・救済メカニズムの構築 |
・リスクを踏まえたサプライチェーン多重化・最適化 ・生産拠点・物流拠点等の立上げ・移管 ・原産地・係争関連等の各種証明 ・各国サプライチェーン強靭化政策 ・半導体不足下のサプライチェーンの見直し |
税務 | ・コンプライアンスチェック(通関手続き・関税視点) ・関税に関する文書化(グループポリシーの策定等) ・FTA※対応 ・サプライチェーン見直しに係る移転価格税制対応 |
・拠点・物流等の見直しに係る移転価格税制対応 ・米中貿易摩擦 |
※FTA:自由貿易協定、EAR:米国輸出管理規則、OFAC:米国財務省外国資産管理室、ECRA:米国輸出管理改革法