知的財産・契約遵守サービス(ロイヤリティ監査・ソフトウェアライセンス監査)は、企業が主に知的財産に関して他社と締結した契約関係を遵守して取引を履行しているかどうかについて、KPMGが第三者の立場から確認するサービスです。グローバルな競争の激化を受け、自社完結型ビジネスモデルから脱却し、他社の優れた技術やノウハウを活用する企業が増加しています。つまり、製造・販売を自社内で完結するのではなく、競合会社を含むビジネスパートナーとアライアンスを結ぶことで、コスト削減と収益向上を実現するのが潮流となっています。企業間の資本関係とは別に、ロイヤリティ契約等の個別契約により、企業の支配権を変更することなくアライアンスを実現するケースも増加しています。こうした契約関係においては、企業から他企業に対する「数値の自己申告」を伴うのが一般的です。

KPMGの推計では、世界の自己申告経済は少なくとも3,000億ドルに達している一方、誤解や錯誤、そして時折の意図的な虚偽記載のために、自己申告報告書の70%は不正確であると推計されています。

このような状況において、他社からの自己申告の正確性を確認することは、自社の保有する知的財産権を他社に供与する企業、特にそれ自体を主たるビジネスモデルとする企業にとって必須の業務といえるでしょう。

通常の契約書は、企業による自己申告関係の監視・調査を実施する権利に関する条項を含んでおり、欧米企業においてはこの条項に基づき、ビジネスパートナーに対する調査を日常的に実施しています。日本においては、当該権利の行使は相手先に不信感を伝えていると解釈されることもあるため、積極的に実施されていないのが実情です。しかしながら、KPMGはこれまでの経験で、そのようなネガティブなイメージとは逆に、ビジネスパートナーに対する調査は良好な信頼関係の強化につながり、継続的なビジネスの発展に寄与すると実感しています。また、グローバル化に伴い、コンプライアンス意識の低い地域においては、このような調査は不可欠になっていくでしょう。

KPMGは、ロイヤリティ調査、ソフトウェアコンプライアンス調査、リセラー・ディストリビューター調査、ベンダーコンプライアンス調査を始めとした、主に知的財産に関わる契約を中心に、ビジネスパートナー企業における契約コンプライアンス状況を確認するサービスを提供し、企業のキャッシュフロー回収を支援します。

お問合せ

数値の自己申告を伴う契約関係の広がり

典型的な自己申告の関係には、ライセンスに基づく販売、支払記録、経費の開示など、情報の申告を必要とする契約に書かれた信頼に基づく取り決めが含まれます。
KPMGは、全世界の自己申告経済は少なくとも3000億ドルであり、自己申告の70%は、誤解や間違い、時には意図的な虚偽記載のために不正確であり、これらはすべて財務リスクにつながると推定しています。

数値の自己申告を伴う契約関係の広がり

KPMGの提供するサービス

KPMGの知的財産・契約遵守サービスチームは、企業間で締結されたさまざまな契約に規定された監査条項に基づき、その履行状況を調査します。契約当事者の一方から業務委託を受けるものの、中立的な第三者としての立場から調査を実施します。企業にとって、ビジネスパートナーを調査するにあたり、第三者を利用することは、調査の公平性を保つとともに、調査を自ら実施することで発生する相手方との摩擦等を避けることにもつながります。

主に下記のサービスでは、他企業からの数値の自己申告(ロイヤリティ報告書等)の正確性を、売上データ等の電子データを分析することにより確認します。

調査方法は状況に応じ臨機応変にカスタマイズしますが、基本的には以下のステップに則って作業を実施します。

1. 契約内容・条件の把握

調査対象となる契約書に基づき、論点になりうるポイントを事前に把握します。

2. データリクエストの提示/データ提出

契約内容に基づき、調査に必要なデータの準備を対象会社に依頼します。

3. 事前データ分析

データは原則として実地調査(フィールドワーク)前に受領し、事前に分析を実施しておくことで、調査の効率化を図ります。

4. フィールドワーク

対象会社に協力頂き、インタビューを中心とした実地調査を行います。

5. データ分析最終化・報告書作成

事前データ分析結果にフィールドワークにて得た情報を加味してデータ分析を最終化し、クライアントに対する報告書(ロイヤリティ過少申告額等の数値的な検出結果が中心となります)を作成します。

また、世界143の国と地域に広がるKPMGネットワークを通じ、海外のビジネスパートナーを対象とした調査にも対応し得る体制を擁しており、多くのクロスボーダー調査の経験を有しています。
KPMGのリソースを活用することにより、企業は効果的・効率的に調査を実施することが可能となり、調査実施による費用対効果(調査に要した費用に対する検出された過小申告額等)の向上が見込めるでしょう。

ロイヤリティ調査

ロイヤリティ(特許権・著作権使用料)収入は企業の利益に大きな貢献をしています。多くの場合、ロイヤリティは支払側であるライセンシーにより計算が行なわれ、ライセンサーへと自己申告されています。しかしながら、ライセンス契約が複雑化する中、正確かつ網羅的にロイヤリティを計算するインセンティブはライセンシー側に存在しないのが実情ではないでしょうか。

KPMGは、ライセンサーに代わってライセンシーのロイヤリティ算出過程を調査し、企業による逸失収益の回復とコンプライアンスの強化を支援します。具体的に実施する主な調査内容は以下のとおりです。

ロイヤリティ報告プロセスの確認

ライセンシーによるロイヤリティ料計算過程を確認し、ロイヤリティ誤報告の原因となり得る領域を特定します。

ロイヤリティ対象製品の網羅性の確認

ライセンシーがロイヤリティ計算に含めている対象製品の網羅性を確認します。

ロイヤリティ再計算

ライセンシーから提示を受けた売上データ等を用い、ロイヤリティを再計算します。同時に、客観的で独立した第三者を活用して調査を実施することにより、利益の相反するライセンサーとライセンシーの緊張関係や不信感を低減し、両者の関係の維持、改善を支援します。

ロイヤリティ調査

KPMGは、消費財、工業製品、エンターテインメント、ソフトウェア、アパレルおよび製薬をはじめ、多種多様な業界におけるロイヤリティ調査の経験と知識を有しています。また、グローバルネットワークを通じ、国境を越えたロイヤリティ契約に係るサポートも提供します。中国等の海外ライセンシーに対する調査も実施しております。

KPMGは豊富な経験に基づき、ライセンシーによるロイヤリティ過小報告の根源的な原因を特定し、将来の収益損失リスクを軽減するための方策を提案します。ロイヤリティ調査サービスを活用することにより、ビジネスパートナーとの関係を損ねることなく、ロイヤリティ報告プロセスの適正化によるロイヤリティ収入の安定化を実現することが可能となります。

これまでに発見された過小報告の例

調査を実施した殆どのケースにおいて、何らかの誤報告が検出されています。
  • ライセンス対象となる製品群の申告漏れ(特に新製品に関するもの)
  • 純売上高の計算における不適切または不正確な費用控除
  • 誤った為替レートの使用
  • 実施していない現金割引の控除
  • 契約期間終了後への売上計上の先送り
  • ライセンサーの許可を得ない第三者へのサブライセンス供与
  • ロイヤリティ計算時における市場価格より低い価格(子会社販社への販売価格等)の使用
  •  誤ったロイヤリティ料率の使用
  •  減耗や証明文書が存在しない廃棄等による製品の除外
  • 他製品との抱き合わせ販売、コンボ製品等における不適切な販売価格の配賦


ソフトウェアライセンスコンプライアンス調査

私たちは、パソコンを始めとして、さまざまなITシステムを利用して業務を遂行しています。そのITシステムは、無形資産であるソフトウェアを利用しており、その利用についてはソフトウェアベンダーとの間に契約が交わされています。

自社開発したソフトウェアを販売するソフトウェアベンダーにとって、顧客やITサービスプロバイダーが、使用状況に応じて適切に自社製品を購入することは、ビジネスモデルの大前提となります。また一般的に、ソフトウェアベンダーは、ソフトウェアライセンス(使用許諾権)のみならず、その後継続したキャッシュフローが見込めるメンテナンス(保守サービス料)を販売することで収益を挙げ、開発コストを回収しています。

しかしながら、ソフトウェアは目に見えない資産であり、1枚のインストール用メディアから複数の機器に導入することも可能であるため、顧客が適切にソフトウェアライセンス/メンテナンスを購入しているかどうか把握することが難しいのが現状です。そのため、顧客の利用実態について確認することが求められています。

一方で、ソフトウェアベンダーにとって、調査対象である顧客は「自社製品を購入して下さるお客様」であり、収益を確保する上で顧客に対する調査が必須でありながら、その実施に躊躇するというジレンマに立たされます。顧客は、あるソフトウェアベンダーが調査の過程で、システム構成や他社製品に関する情報を目にすることを嫌うでしょう。

KPMGは、ソフトウェアベンダーに代わり、顧客のソフトウェア使用状況を確認し、ソフトウェア・メンテナンス購入履歴情報と突合することで、ソフトウェア・メンテナンス購入の過不足がないかどうか確認します。具体的には以下の手続を実施します。

1. 契約内容の確認

顧客がソフトウェアベンダーと締結した契約の内容(購入履歴)を確認し、当該顧客が使用許諾されているソフトウェア製品・ライセンス/メンテナンス数を把握します。一般的にライセンス体系は製品によって異なり(台数課金、 CPU課金、ユーザ課金等)、各々に応じた調査手続を実施することになります。

2. 利用実態の把握

顧客によるソフトウェア利用・管理の実態を把握します。一般的な手続として、まず顧客から提供を受けたシステム構成図等の資料を分析した上で、フィールドワークを実施し、インタビューおよび実機確認(ソフトウェアの導入状況・CPUに関する情報等を実機上でコマンドを叩いて確認すること)を行います。この結果に基づき、必要な(=現在利用している)ライセンス/メンテナンス数を算出します。

3. 契約内容と利用実態の突合分析(過不足数の検出)

1で確認したライセンス/メンテナンス保有数と、2で算出した利用数を突合し、ライセンス/メンテナンスの過不足が発生していないかどうかどうかを確認します。

4. 報告書作成・報告会の実施

上記の内容をソフトウェアベンダーへの報告書に取り纏めます。3での分析結果は顧客に提示され、間違いがないことを確認した上で、報告会を実施し、調査をクロージングします。

ソフトウェア製品、ライセンス体系が多岐に亘り、技術の進化に伴い、その内容も変化し続ける中、効率的かつ適切に調査を行う上で最も重要となってくるのは、経験に基づいた知識です。豊富な経験からこれらの資質を培ったプロフェッショナルは、ソフトウェアベンダーの収益確保を支援します。同時に、調査対象となる顧客においても、KPMGによる調査を通じ、今後過不足なくライセンス・メンテナンスを購入するためのプロセス・体制を構築することにつながるのです。



リセラー・ディストリビューター調査

企業は売上を拡大するために、さまざまな流通経路を通して製品を販売しています。そして中には、販売代理店契約等の契約により流通経路を規定することで、知的財産の保護や製品品質の維持を図る企業もあります。

多くの企業は、自社製品が契約で認められていない流通経路(=グレーマーケット)やブラックマーケット等の違法な流通経路で販売されることにより、自社の売上やコストがどれほどの影響を受けているのか把握していません。さらに、リセラーやディストリビューター等のビジネスパートナーが、不適切なチャネルを通した販売実績に基づき、リベート等のインセンティブ支払を不正に要求するケースも発生している可能性があります。

こうした問題は、流通経路に関する契約の遵守状況が、ビジネスパートナーの自己申告に基づいており、企業側がその正確性を確認するためのリソースを十分に持たないことが原因の1つと考えられます。KPMGのリセラー・ディストリビューター調査は、流通経路に関する契約(チャネル契約等)について、ビジネスパートナーの遵守状況を確認し、このような問題の解決を支援します。

KPMGのプロフェッショナルは、独自の方法論とデータ分析ツール等を用いて、詳細な調査を実施します。ビジネスパートナーから報告されていない売上や、売上過大申告に伴う過大なインセンティブ請求等が発見される場合には、過去収益の適正化を支援します。また、こうした調査を実施することにより、より徹底した契約遵守を実現するためのコンプライアンス体制・プロセス導入を促進することができます。企業は調査を通じ、グレーマーケットへの製品流出、およびビジネスパートナーによる不正なリベート・ディスカウント要求のリスクを把握し、どのように流通プロセスを管理すべきかについて、対策を練ることが可能になります。

さらに、リセラー・ディストリビューター調査は、金融商品取引法における財務報告に係る内部統制評価手続の強化策としても有効です。コストや利益の誤報告は財務諸表作成プロセスにおける統制の欠如の兆候です。契約に従って取引が行なわれていないということは、財務諸表に直結する取引が正しく把握されていないことを意味します。リセラー・ディストリビューター調査はこのような問題点の把握や、詳細な調査が必要な領域の把握を支援し、企業の内部統制強化をサポートしています。

今日の企業にとって、リセラーやディストリビューターと契約を締結し、これが遵守されている状況を維持・継続していくことは、ビジネスの健全性の確保にとって、極めて重要です。
KPMGのプロフェッショナルは、豊富な業界知識と経験に基づき、誠実にサービスを提供することで、企業が当該調査の実施によるメリットを最大限に享受できるよう支援します。



ベンダーコンプライアンス調査

企業とベンダーはお互い何らかの便益を得るために、契約を締結して、共にビジネスを遂行します。ベンダーが新たな収益を獲得する一方、企業はベンダーへの委託を通じて、コスト削減や品質の向上等の促進を図ります。しかし当然ながら、もしベンダーが契約を遵守しなければ、この便益は直ちに消滅します。契約が企業の意図とおりに(結果として)遵守されない原因としては、オペレーション上のミス、不明瞭な契約条項、プロセス管理の欠如、もしくはベンダーの故意による不正などが考えられます。しかし企業には、ベンダーが契約を全面的に遵守しているかを確認する時間もリソースもありません。

仮に企業側にリソースが十分にあったとしても、ベンダーは顧客である企業に対し、自らの機密情報を開示することには消極的です。KPMGのベンダーコンプライアンス・レビューサービスは、このような問題の解決を支援します。

具体的には、企業(クライアント)および調査対象会社(ベンダー)に対するインタビューを含む、以下のような手続を実施して、問題の明確化を図ります。提供するサービスが企業とベンダー間の関係向上に資するよう、対象会社に対し中立的で客観的な第三者として、以下のような手続を経ながら適切に作業を進めます。

  • 技術仕様書や価格設定などを確認することで、製品やサービスに対する理解を深めます。
  • ベンダーの顧客基盤や内部プロセス等を確認します。
  • ベンダーの対象契約の遵守に関する体制と手続について文書化し、それを評価します。
  • コンプライアンス違反の可能性が存在する範囲を把握するため、原則として全取引データを分析対象とし、検出事項に関しては、クライアントの了解のもと、最終的にベンダーに確認して頂きます。精度の高い分析を用いることにより、ベンダーによる最終確認手続を円滑化し、ベンダーとの関係悪化防止に役立ちます。

KPMGはさまざまな業界に適応可能であり、クライアントに対する以下のような付加価値の提供を企図しています。

  • 不当な価格設定の回避
  • 製造コストの低減
  • コストの配賦や計算方法の改善
  • 契約内容の更新(文言の明確化)による将来的な問題の回避
  • 契約内容及び遵守プロセスに対する相互理解促進によるベンダーとの関係向上(信頼の醸成)

KPMGはこれまでサプライチェーンの主要な領域において業務を提供しており、企業とベンダー間の関係の重要性・複雑さに対する理解を培ってきました。具体的には以下のようなベンダーとの契約に関するサービスの提供実績があります。

サービスの提供実績

業種
  • 原材料及び機材ベンダー
  • 業務プロセスのアウトソース先
  • アプリケーションサービスプロバイダー(ASP)
  • 製造委託業者
  • 人材派遣会社
  • 物流業者
  • 広告代理店
  • 専門サービス業者(廃棄物管理、施設管理など)
契約条件
  • 優良顧客(国)向け契約条件
  • 価格設定の条件(コストプラス、マージンベース、時間及びコスト配賦方法)
  • リベート、ディスカウント等のインセンティブ条件(プライス・リダクション・プログラム、コスト・リダクション・プログラム)
  • 競争入札条件
  • 業務再委託条件

 

主要メンバー

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