KPMGコンサルティング、「グローバル カスタマーエクスペリエンス エクセレンス(CEE)レポート 2022」(日本語版)を発行

顧客体験に関して、25の国と地域の消費者を対象にしたグローバル調査結果および日本国内のブランドを対象にした考察レポートを発行しました。

顧客体験に関して、25の国と地域の消費者を対象にしたグローバル調査結果および日本国内のブランドを対象にした考察レポートを発行しました。

KPMGコンサルティング株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 兼 CEO:宮原 正弘、以下、KPMGコンサルティング)は、日本を含む25の国と地域、89,000人以上の消費者を対象にKPMGが実施した顧客体験に関する調査からみえた実態や課題をまとめたレポート「グローバル カスタマーエクスペリエンス エクセレンス(CEE)レポート 2022 ー連携の取れた顧客体験をオーケストレーションする」(以下、CEEレポート)の日本語版を発行しました。

CEEレポートでは、消費者に対し実施した3,077にのぼるブランドとの実体験調査を基に、顧客体験を企業の利益につながる行動へと喚起するために必要不可欠な6つの特性である「誠実性」「問題解決力」「期待の充足」「利便性」「パーソナライズ」「親密性」からなる「Six Pillars(優れたカスタマーエクスペリエンスを構成する6つの要素)」で分析し、優れた顧客体験を提供するブランドを評価およびランキングするとともに、先進的な顧客体験の取組みを考察しています。

今回の調査では、調査の対象となった25の国と地域のうち、11の国と地域において前年と同じ企業が先進的な企業として選出されています。長年にわたりリーダーであり続ける企業は、世界的なパンデミックに対処するだけではなく、軍事進攻による原材料やグローバルサプライチェーンへの影響のほか、異常気象の増加、国家規模の災害の発生とESGへの注目度の高まり、人工知能(AI)やロボットなどの先端技術の急速な普及など、新しい世界に柔軟に適応しています。

また、今回の調査からは、先進的な企業にはサービスを提供する市場の顧客を理解し、ポジティブな顧客体験の提供に意識的に重点を置いているという共通の特徴があり、変化し続ける不確実な未来に備え、柔軟で機敏な姿勢を貫いていることが明らかになりました。そして、先進的な企業は予測が困難な状況下においても、顧客を理解することを最優先し、意図を持って顧客体験をオーケストレーション(調和・調整)することに注力し、順応力、機敏性、適応力を維持しており、未来に向かって進むための十分な備えができていると言えます。

さらに、今回の調査からは、企業が引き続き「顧客中心主義」を重視し、調和・連携のとれた顧客体験(顧客のニーズ、事情・状況、嗜好を捉えた体験)を設計、構築、提供しようとしていることが明らかになりました。先進的な企業では、顧客体験を1つのチームや部門のこととして考えるのではなく、営業、マーケティング、サービス、製品などを担当する各チームが足並みを揃え、組織横断的に連携し対応しています。

日本の主な調査結果

3回目となる今回の日本の調査では、147のブランドを対象に実施しました。
  • 「パーソナライズ」がSix Pillarsのなかで最も重要な要素
  • 顧客体験において「誠実性」の重要度が高まっている
  • 前年と比較してCEEスコア平均は低下傾向
  • ほとんどの要素でスコアが前年より低下

日本市場は、「Six Pillars(優れたカスタマーエクスペリエンスを構成する6つの要素)」のなかでも、特に「誠実性」と「パーソナライズ」が重要な要素であることが今回の調査で明らかになりました。近年の傾向として消費者は、顧客体験をより自分に合ったものに(パーソナライズ)してほしいと望んでいます。また、「誠実性」も前年の調査より重要度が高まっており、「期待の充足」を上回る2番目に重要な要素となっています。消費者は、企業・ブランドがどのような姿勢で企業活動および社会貢献をしているのかを、これまで以上に注目し、評価するようになったことが背景と考えられます。

今回の調査では、日本国内の調査対象ブランドのCEEスコア平均は6.79となり、前年の調査に比べてわずかに低下(対前年比マイナス0.03ポイント)しました。さらに、CEEスコア平均が7.0以上を獲得したブランドは全体の20.4%にとどまり、前年を大きく下回り、顧客体験に関して高い評価を獲得できるブランドが2021年より減っているという厳しい状況が伺えます。

【日本国内の調査対象ブランドのCEEスコア概況】

CEEレポート2022図表2

今年の調査では、Six Pillarsの6つの要素のうち、「親密性」を除くすべての要素において、日本のブランドのCEEスコアは前年より低下しました。日本のブランドは、「誠実性」や「利便性」、「パーソナライズ」に対する評価が高い傾向は引き続きみられるものの、これら3つの要素においても前年を下回り、また低下率はその他の要素より高い傾向がみられます。

ここ数年に起きたパンデミックや円安・インフレなどによる経済状況の悪化など、これまでに経験したことのない多くの要因により、消費者の価値観、意思決定基準、行動に変化がもたらされたことが背景と考えられます。

【日本国内の調査対象ブランドにおけるSix Pillarsごとの平均スコア推移(2020-2022年)】

 CEEレポート2022図表3

日本企業に求められる顧客体験向上のポイント(変革への視点)

1.企業・ブランドに求められるESGへの対応
ESGの観点で、環境や社会に配慮・貢献している企業・ブランドから、商品やサービスを購入したいという意識は世界中で高まっており、日本市場においても今後この流れが加速すると考えられます。

近年、倫理に反する取引によって生産された商品を扱っているとされる企業・ブランドに対して、不買運動やネガティブキャンペーンが起こり、株価下落やブランド価値の毀損につながる事例が世界全体で見受けられています。日本でも、短期的な利益のみを追求し、社会や消費者に対して不誠実な対応をする企業に対して批判の声が挙がるようになり、リスクの観点からも、ESGへの対応はセクターを超えた課題となっています。

2.パーパスの明確化と一貫したメッセージの発信
消費者は商品やサービスの良し悪しだけではなく、企業・ブランドに対して共感できる要素を求めています。企業・ブランドのパーパス(存在意義)を明確に定義したうえで、一貫したメッセージを社会に発信し、浸透させることが重要です。消費者に安心と信頼を与え、共感してもらえるような土壌づくりをすることが企業に求められています。また、パンデミックをはじめとする不測の事態が発生した際も、メッセージに基づいた行動をすることが「誠実性」を高める要因になります。

3.さらに高度な「パーソナライズ」を実現するための緻密な顧客理解/顧客体験の設計
さまざまなブランドにおける取組みにより、パーソナライズされた顧客体験が消費者にある程度浸透している昨今において、消費者は自身の趣味嗜好や行動をより深く理解した、さらに高度な「パーソナライズ」を求めています。ブランドはそのニーズに対応するために、位置情報や音声情報の収集などの先進技術を積極的に活用した高水準の情報分析を基に、顧客理解をより深めていくことが重要です。

一方で、先進技術を顧客体験においてどのように活用するかは慎重に検討しなければなりません。不適切なアプローチを行うと、顧客は自信のプライバシーが守られていないように感じ、パーソナライズされた体験自体が不快なものになるリスクを抱えているためです。顧客理解に必要な先進技術の積極活用と、顧客感情への配慮のバランスを緻密に調整しながら顧客体験を設計することが不可欠です。

4.オーケストレーションされた組織
企業・ブランドは、消費者の置かれた環境の変化に応じたエンドツーエンドかつ速やかな対応で、優れた顧客体験を提供し続ける必要があります。そのためには、顧客体験を中心に据えた商品やサービスの設計を迅速に行い、フロント、ミドル、バックオフィスを連携させ、組織全体が一体となって高度な「オーケストレーション」を実現することが肝要です。また、ブランドに対する信頼やロイヤルティを高めるには、組織全体で企業・ブランドのパーパスを理解し、各タッチポイントにおいてパーパスが反映された一貫したメッセージを発信することも必要です。

多くの日本企業は、依然としてサイロ化された組織運営のもと、「部分最適」を追求し、企業側の都合でビジネスを行っています。世界のなかでも特に厳しい目を持つと言われる日本の消費者が、「パーソナライズ」と「誠実性」を顧客体験やブランドのロイヤルティを評価する要素として重要視するようになってきた今、オーケストレーションされた組織で顧客に真摯に向き合い、適切な対応ができなければ、市場で生き残ることは難しいでしょう。

本レポートの全文はこちらからダウンロードできます:グローバル カスタマーエクスペリエンス エクセレンス(CEE)レポート2022 ー連携の取れた顧客体験をオーケストレーションする(日本語版)

KPMGコンサルティングについて

KPMGコンサルティングは、KPMGインターナショナルのメンバーファームとして、ビジネストランスフォーメーション(事業変革)、テクノロジートランスフォーメーション、リスク&コンプライアンスの3分野から企業を支援するコンサルティングファームです。戦略策定、組織・人事マネジメント、デジタルトランスフォーメーション、ガバナンス、リスクマネジメントなどの専門知識と豊富な経験を持つコンサルタントが在籍し、金融、保険、製造、自動車、製薬・ヘルスケア、エネルギー、情報通信・メディア、サービス、パブリックセクターなどのインダストリーに対し、幅広いコンサルティングサービスを提供しています。

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