市場の成熟、製品のコモディティ化、海外新興企業の台頭などにより、売上利益の向上に頭を悩ませてきた日本の製造業は、モノづくりからコトづくりというキーワードのもと、新規事業創出に取り組んでいます。そのようななか、想定した成果が出せていない企業が多い要因の1つとして、新規事業検討方法が定義されていないまま計画が進められ、属人的なアプローチにとなっていることが挙げられます。

1.新規事業創出における課題

経営層、新規事業推進部門、新規事業実行部門における課題の例は以下のとおりです。

部門 課題例
経営層
  • 新規事業にどの程度投資すべきかわからない。リソースもひっ迫している状況で人員投入できない。
  • 新規事業が既存事業の延長線のようなものが多い。自社でできるアイデアしか出せていない。
新規事業推進部門
  • 新規事業検討の会議体や部門がさまざまあり、全社の新規事業テーマの管理ができていない。
  • 新規事業アイデアのベースとなるシーズの棚卸しができておらず、どのような技術を持っているか把握できていない。
  • 新規事業は途中で頓挫するケースが多い。継続させるための組織や人材活用をどのようにすべきかわからない。
新規事業実行部門(事業部、研究所など)
  • 新規事業の評価基準があいまいで、Go/No Goの判断が偏っているように見える。
  • 新規事業を創出するためにオープンイノベーションというが、外部とどのように提携を進めてよいかわからない。

このような課題の解決には、新規事業検討のプロセスと組織・人材の視点からアプローチを行うことが有効です。また、適正なプロセスを構築するには3つの論点を解決できるような進め方を立案する必要があります。

2.新規事業創出におけるプロセス構築の方法

新規事業創出のあるべきプロセスとして、まず、新規事業テーマを全体俯瞰し、自社戦略に応じたポートフォリオ管理の実施が挙げられます。次に、新規事業テーマの市場投入年度を見定め、そのタイミングと整合が取れるように技術ロードマップを策定します。そして最後に、新規事業の検討ステージに応じた検討内容と審査方法を定義し、Go/No Goの判断を共通のモノサシで審査できるようにします。

論点 対応
1.正しい新規事業を選定すること(ポートフォリオ)
  • テーマの全体俯瞰を行い、バランスよくテーマを配置する(リターン、技術的成功確率、ステージ、投入資源量)。
  • テーマを優先順位付けし、経営資源の上限を考慮してテーマ選定を行う(NPV、開発効率などによる優先順位付け)。
2.計画と進捗を可視化させること(ロードマップ)
  • 全社の新規事業のロードマップを策定し、全体の計画と進捗を把握できるようにする。
  • 製品・サービスロードマップと技術ロードマップの時間軸の整合を確認する。
3.新規事業の検討と審査を正しく進めること(ステージゲート)
  • 新規事業の検討プロセスや審査プロセスを定義し、共通のプロセスや指標でGo/No Goを正しく判断できるようにする。

あるべきプロセスは、どのような新規事業を創出するかによってカスタマイズが必要となります。下図を基に解説します。

製造業における持続的な新規事業創出を実現するには_図表1

基本となるのは、A象限の新規事業創出です。既存クライアントとの接点を活用して、クライアントの将来ニーズを掴みながら、獲得すべき要素技術を研究所または既存事業の先行開発部門で構築していくアプローチです。新規市場に出ていくアプローチとしての基本はB象限の方法で、既存事業で獲得した要素技術を他製品やサービスで活用できるように用途展開を図ります。C象限(飛び地)は、クライアント接点のない市場においてニーズを把握すること、また自社が保有していない要素技術を外部から獲得することが必要となるため、A・B象限の新規事業検討に比べると難易度の高いアプローチです。

しかし、自社の事業環境、新規事業テーマのポートフォリオ拡充のためなど、新たなアプローチを模索したい場合はC象限のアプローチも1つの手段となり得ます。ただし、外部技術探索など自社で知見、経験の少ない検討作業が必要となるため、組織構築、人材育成(外部人材の活用も含む)などの施策もあわせて検討することが求められます。

3.KPMGによる支援

継続的な新規事業創出の仕組みを構築するためには、戦略、事業環境、これまでの新規事業への取組みを理解したうえでクライアントに合った新規事業創出のプロセス定義と組織設計を行っていく必要があります。

KPMGでは、以下の4ステップの支援内容をベースに、クライアントの課題やスピード感に応じて個別にカスタマイズした提案が可能です。

製造業における持続的な新規事業創出を実現するには_図表2

執筆者

KPMGコンサルティング
アソシエイトパートナー 大木 俊和

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