新規事業の立ち上げやM&Aでは、「自社の既存事業とのシナジー」や「対象企業とのシナジー」の効果創出が新規事業やM&Aを行う理由として期待されます。

しかし、実際にはシナジーの効果が十分に発揮されていない、あるいはそもそもシナジーがあったのか疑わしいといった事例も数多く見受けられます。新規事業やM&Aを進める際に掲げられるシナジーを、“幻想”に終わらせないためにはどうすればよいのでしょうか。
本稿では、この課題を乗り越え、シナジー効果を実現するための具体的なポイントと道筋について解説します。

1. シナジーが幻想となる“罠”

新規事業の立ち上げは「千三つ」(千のアイデアのうち、実現するのは3つ)、M&Aも目標達成率は3割強という言葉が象徴するように、成功率の低さが指摘されます。新規事業やM&Aの計画立案・推進・経営判断においては、成功が難しい事業経営戦略の1つといえます。新規事業やM&Aの推進において語られるシナジーですが、蓋を開けてみると、想定していた効果が出ていないことが多いのではないでしょうか。
なぜシナジーは“幻想”に終わってしまうのか、それにはシナジー効果を享受できない企業における共通の理由があります。

【シナジーを阻む2つの課題】

罠1:シナジー仮説の“踏み込みの甘さ”

まず、計画段階でシナジー仮説を明確に定義できていないがゆえに、効果が発現しないことが多く存在します。シナジー効果の創出ロジックを明確化すること、そして必ず定量化することが必須です。また、計画段階でシナジー創出ロジックが不明瞭なシナジーは無理せず、数字に組み込まないなどの線引きが重要となります。

罠2:シナジー仮説をアップデートする“思考と行動の欠如”

シナジー創出のための計画を一度作っただけで終わらせず、計画の進捗を確認し、必要に応じて都度修正とアップデートを行うことが必須です。またそれを確実に行うため実行段階でのモニタリングや再考の仕組み・体制を整えることが重要です。

2.シナジーを実現するための道筋

このようなシナジーの「罠」を回避し、シナジー効果を確実に引き出すためには、シナジー仮説の構築、シナジーロジック導出・定量化、具体化、モニタリングのステップを繰り返しながら推進していくことが重要となります。

 【シナジー検討プロセス】

シナジー実現にむけた道筋_図表1

(1)シナジー仮説の構築

「経営(業務)機能」×「経営資源」のフレームを整理軸としつつ、「シナジーの発現パターン」や「財務インパクト」の視点を用いてシナジー仮説を網羅的に導出します。

【シナジーの整理フレーム】

シナジー実現にむけた道筋_図表2

【シナジー着想の視点】

シナジー実現にむけた道筋_図表3

たとえば、「拠点・設備・資材」といった有形資産のシナジーを網羅的にかつ、発現パターンと財務インパクトで分類した例を示します。リソースの相互利用・融通によるQuick Win施策に加え、物理的な拠点集約などの構造改革による大規模な固定費削減などが期待されるシナジーとして導出できます。

【シナジー仮説構築の例(拠点・設備・資材)】

シナジー実現にむけた道筋_図表4

(2)シナジーロジックの導出・定量化

さらに、一つひとつのシナジー仮説について、「どのような施策を打つことでシナジーが発現するのか」、「どれぐらいの財務インパクトなのか」を自社事業活動の文脈で考え、具体的なシナジーの定量効果を算出できるレベルまで施策内容の解像度を高めます。

【シナジー詳細化の例(調達領域におけるシナジー)】

シナジー実現にむけた道筋_図表5

(3)シナジー具体化に向けた優先順位付けと管理・推進体制の整備

シナジー実現のための優先順位を設定し、シナジー単位の推進チームを編成します。施策の実行優先度や集計方法、推進部署などを定義し、確実なシナジー実現を担保します。

シナジー実現にむけた道筋_図表6

(4)シナジー仮説の再考とモニタリングの仕組み整備

計画の進捗を定期的にモニタリングし、必要に応じて計画を再考する仕組みを整備することが重要です。
初期に計画策定を担ったチームで検討された「シナジー仮説」を、“現場視点”で再考することも必要です。また、現場目線だけではなく計画全体を統括するチームが俯瞰的視座をもって全社計画との整合性を担保しつつ、視点や意見の異なる立場からの意見を積極的に取り入れ、保守的・楽観的になりすぎないように偏らない議論を進めることで、計画の現実性を向上させることができます。

シナジー実現にむけた道筋_図表7

さらに、モニタリングフォーマットを各階層が管理しやすい粒度に整えるとともに、必要に応じてシナジー単位の詳細へアクセスできる構造を構築します。これにより、リスクの早期摘出が可能となり、必要な調整や改善を迅速に行える体制を整えることができます。

シナジー実現にむけた道筋_図表8

3.KPMGによる支援

KPMGでは、グローバル規模での支援実績により培った知見や、最先端の事例を踏まえたインサイトを活用し、実効性のあるシナジー実現を支援します。

(1)シナジー導出からモニタリングの仕組み構築・推進の支援

シナジー導出の支援やモニタリング体制の整備といった、シナジーを実現するための包括的な仕組みを構築し、推進を支援します。

(2)導出した個別シナジーの実現に向けた支援

研究開発や調達、製造などの各領域におけるノウハウや知見が体系的に集約されたKPMGの支援プロジェクトによって、個別シナジーの実現を全方位からサポートします。

部門 代表的なシナジー 個別支援例
研究開発 開発プロセスの統合や片寄せによる工数削減、設計開発リードタイム短縮 設計システム(PLM)導入支援
調達 サプライヤー情報共有による一物一価実現、サプライヤーマネジメント徹底による調達費用削減 調達改革・コスト削減
製造 生産ラインレイアウト、生産プロセスの共通化・標準化による原価低減 生産シミュレーション構築支援
物流 物流拠点の集約による固定費削減 サプライチェーン最適化支援
販売・マーケ 製品ラインナップの再編によるSKUの最適化や、ブランド統廃合によるポートフォリオの最適化 セグメント別事業収益構造改革
顧客インサイト導出、ブランドマネジメント
経理・財務・総務ほか キャッシュフローマネジメント統合による企業価値の向上 トレジャリーマネジメント高度化支援
人事・組織 (統合後の新たな)企業風土・文化の醸成による企業価値向上 エンゲージメントサーベイ、企業理念策定・浸透
IT アプリケーションの統合 システムセパレーション方針策定、システム統合支援
全組織共通 業務プロセスの統合や片寄せによる効率化、工数削減 全社業務改革(BPR)支援

4.最後に

シナジー効果は、新規事業の立ち上げ時やM&A直後でのみ特定・創出できないものではありません。仮に10年前の取組みで期待していた効果が得られていなかったとしても、今から行動を起こすことで十分に挽回の余地があります。今すぐシナジー創出に向けた営みを開始すれば、“失われた10年”は取り戻せなくとも、今後の10年を失わずに済むことでしょう。

執筆者

KPMGコンサルティング
パートナー 青木 聡明

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