1.グローバル
AIへの関心高まり、ベンチャーキャピタルによる投資額は過去7四半期で最高水準に
2024年第4四半期は、AI(人工知能)への関心の高まりを背景に、世界のベンチャーキャピタルによる投資額は過去7四半期で最高水準に達しました。Databricksによる100億ドルの資金調達を筆頭に、当四半期の上位5案件をAI分野が占めました。
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2025年第1四半期に注目すべきトレンド
米国大統領選挙が終了し市場環境が改善するなか、Reddit、Rubrik、Astera Labsなどの企業がIPO後に成功を収めていることから、2025年にはイグジット市場が回復するとの期待が高まっています。大手テック企業が競争を繰り広げるなか、業界各社がAIを活用して業務効率を向上させ、顧客により多くの価値を提供しようとしているため、AI分野への投資は引き続き高い関心を集めると考えられます。防衛テック、医療、バイオテクノロジー、サイバーセキュリティ、代替エネルギーなどの分野も、引き続きベンチャーキャピタルから注目されると考えられます。
2.米国
AI分野で米国初の100億ドル規模の投資ラウンドも
2024年第4四半期、米国ではAIへの関心が引き続き非常に高く、ベンチャーキャピタルによる投資総額が2022年第2四半期以来の高水準に達しました。AI分野は、米国初の100億ドル規模の投資ラウンドを含む、上位10案件のうち半数以上を占めました。
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2025年第1四半期に注目すべきトレンド
政権交代に伴う不確実性を考えると、多くの企業が2025年第2、第3四半期のイグジットに向けて準備を進めており、2025年第1四半期中にIPO申請や関連した活動が活発化する可能性があります。また、米連邦準備制度理事会(FRB)が金利引き下げを続ければ、M&A活動も2025年第1四半期に活発化する可能性があります。AI分野は、引き続き魅力的な投資分野である一方、防衛テックのほか、サイバーセキュリティ、ライフサイエンスなどの分野への投資も予想されます。さらに、暗号資産の分野についても政権交代を機にベンチャーキャピタルの関心が再燃する可能性があります。
3.南北アメリカ
AI企業の米国での取引総額の大幅な増加により、10四半期ぶりの高水準
2024年第4四半期の南北アメリカにおけるベンチャーキャピタルによる投資は、AI企業のDatabricksによる100億ドルの資金調達を含む米国での取引総額の大幅な増加により、10四半期ぶりの高水準を記録しました。
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2025年第1四半期に注目すべきトレンド
投資家が引き続きAI分野に注目していることから堅調に推移すると考えられます。一方、米国の政権交代に伴う不確実性が、当四半期首の投資活動を抑制する可能性があります。特にカナダなどでは、新政権の政策方針が明確になるまで様子見の姿勢が強まると予想されます。
ブラジルで2025年第4四半期に開催が予定されているCOP30の影響により、クリーンテクノロジーとクライメートテック(気候テック)分野への投資家の関心が一層高まると予想されます。
カナダでは優良で収益性の高いテック系スタートアップが増えており、IPO市場が活性化すれば、カナダでも今後1~2年の間に質の高いIPOによるイグジットが複数みられる可能性があります。
4.欧州
少数の実績のある質の高い企業に投資が集中。英国が欧州で最大のシェア。
2024年第4四半期は前期比では増加しましたが、2024年は2023年の実績を下回る結果に。当四半期、投資家が少数の実績のある質の高い企業に投資を集中させたこともあり取引件数は低調に推移しました。英国を拠点とするAIを活用したデータプラットフォーム企業のGreenScaleが13億ドルを調達したこともあり、当四半期、英国が欧州で最大のシェアを占めました。
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2025年第1四半期に注目すべきトレンド
依然として地政学的な不確実性の高い状況であるものの、市場環境は改善の兆しを見せています。金利の引き下げは市場活動を活発化させており、2025年第1四半期に向けたベンチャーキャピタルによる投資にとって有望な兆しと捉えられます。
AI分野は最も注目される投資先の1つであり、防衛テック、エネルギー、エネルギー貯蔵、ヘルスケア、バイオテクノロジーなどの分野も引き続き投資が集まると予想されます。さらに、サイバーセキュリティ分野への投資も増加する可能性があります。
この先数ヵ月以内に大きな地政学的な事変が起こらなければ、2025年には欧州でのIPOが増加する可能性があり、特に大手暗号資産企業やデジタル資産運用企業でその動きがみられると考えられます。
5.アジア
大幅な投資減少。中国の代替エネルギー企業による11億ドルが最大の案件。
2024年第4四半期、アジアにおけるベンチャーキャピタルによる投資は、地域内の主要な国や地域では投資家が様子見の姿勢を取る状況がみられ大幅に減少しました。中国は引き続きアジアで最も多い投資を獲得しており、代替エネルギー企業CNNP Rich Energyによる11億ドルはアジアにおける当四半期最大の案件となりましたが、メガディールは中国においても数件にとどまりました。インドと日本も減少しましたが、日本はこれまでの傾向を考慮すると堅調を維持しているといえます。
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日本におけるベンチャーキャピタルによる投資は堅調
好調だった第3四半期に比べてやや減少しましたが、1年を通してベンチャーキャピタルによる投資は2023年を上回りました。
成熟したスタートアップが資金を確保することに伴い、ベンチャーキャピタルによる投資ラウンドの規模は大幅に拡大しており、平均取引額は2023年の570万ドルから、2024年第3四半期時点で過去最高の660万ドルに達しています。
日本の市場全体も進化を続けており、日本でのビジネスを目指す外国のベンチャーキャピタルが増えています。
2025年第1四半期に注目すべきトレンド
中国と香港(SAR)におけるベンチャーキャピタルによる投資は、春節(旧正月)の大型連休の影響もあり低調に推移すると考えられます。注目すべき分野としては、AI、ロボティクス、クリーンテック、バイオテクノロジー分野が挙げられます。
インドでは、IPO前に行われるプレIPOラウンドの増加のほか、IPOやその他のイグジット活動の増加が予想され、1年を通してベンチャーキャピタル市場の活動が活発化すると考えられます。
日本のベンチャーキャピタルは今後数四半期にわたって、従来からの小規模なIPOから、スタートアップの成長を加速させ、世界的な競争力を持つためにビジネスを拡大することに重点を置くようになると考えられます。
英語コンテンツ(原文)
Venture Pulse 2024 日本語抄訳版
Venture Pulse 2024 日本語抄訳版(Q1~Q4)を紹介します。※都度更新