リース会計 激動の時代への一冊

改訂版である「図解&徹底分析 IFRS会計基準「リース」」では、初めてIFRSリース会計基準に触れる方にとってはもちろん、基準を既に理解されている方にとっても、特定の論点についてピンポイントで解釈等を調べることができる書籍となっています。

改訂版である「図解&徹底分析 IFRS会計基準「リース」」では、初めてIFRSリース会計基準に触れる方にとってはもちろん、基準を既に理解されている方にとっても、特定の論点についてピ

先日、企業会計基準委員会から企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等が公表されました。これにより、日本基準においてもIFRS第16号「リース」(以下、「IFRSリース会計基準」という)と同様に、借手は原則としてすべてのリースを使用権資産として貸借対照表に計上することが求められるなど、リース会計に関する企業の関心がますます高まっています。このようななか、あずさ監査法人ではIFRSリース会計基準の解説書として2016年7月に刊行した「図解&徹底分析 IFRS新リース基準」の初の改訂版となる「図解&徹底分析 IFRS会計基準「リース」」を2024年8月に刊行いたしました。

改訂版である本書では、従来版でカバーしていた会計基準の解説に加えて、基準の解釈や考え方についてさまざまな論点を幅広くカバーした解説を新たに追加しています。本書は、初めてIFRSリース会計基準に触れる方にとってはもちろん、基準を既に理解されている方にとっても、特定の論点についてピンポイントで解釈等を調べることができる書籍となっています。

また、新しい日本のリース会計基準における借手の会計処理は 、IFRSリース会計基準と整合するように開発されました。 IFRSリース会計基準の解釈を理解することは、新しい日本のリース会計基準を理解するうえでヒントになることが多く、これから新しい日本のリース会計基準の適用を進める方にもご活用いただける内容となっています。
 

I.改訂版の刊行に至る経緯

本書の前身となる「図解&徹底分析 IFRS新リース基準」(以下、「従来版」という)は、IFRS第16号「リース」(以下、「IFRSリース会計基準」という)が2016年1月に公表された直後(同年7月)に刊行いたしましたので、IFRSリース会計基準の適用により大幅な変化が生じるリース会計の処理を理解することを目的として、基準の基本的な解説や設例を中心に取り扱っていました。

しかし、従来版の刊行から数年が経過し、IFRS解釈指針委員会のアジェンダ決定が複数公表されるなど、IFRSリース会計基準の解釈や、考え方の整理が進むなかで、企業のニーズも基準の基本的な理解から、基準の解釈や考え方に徐々にシフトしてきていることを実感していました。そこでこのような企業のニーズの変化に応えるべく、改訂版では、基準の解釈や考え方について幅広い論点からKPMGの最新の見解を詳しく掲載するとともに、書籍に掲載する設例についても大幅な見直しを行いました。一方で、従来版の特長でありました図解を用いた易しくわかりやすい解説は踏襲し、パワーアップした図解により、さらに深く、より広範囲にわたる情報を提供しています。

II.本書の特徴

本書では図解や設例を用いて解説を追求しています。また、複雑なリースの会計処理をわかりやすくイメージできるように、各章の構成にも気を配っています。具体的には、まず第2章の「借手の会計処理」や第3章の「貸手の会計処理」では、難しい論点には踏み込まず、借手・貸手の基本的な処理をイメージしていただくことを重視しています。そして、リースの借手・貸手の基本的な処理をイメージできた後に、個別の論点を第4章以降で詳細に解説していく構成となっています。

次の図表は、第2章で借手の会計処理を解説している図解です。この図解では「リース料」を割引計算して「使用権資産」、「リース負債」を測定すること、また「使用権資産」と「リース負債」で認識する項目が異なることを図解で示すことで、借手の処理をざっくりとイメージできるようにしています。一方で、リース期間をどのように決定するのか、リース料には何が含まれるのか、また割引率には何を使用するのか、といった難しい論点は、第4章の「当初測定における個別論点」以降で説明しています。

借手の会計処理(当初認識:リース負債から使用権資産への調整)

借手の会計処理(当初認識:リース負債から使用権資産への調整)

出所:KPMG作成

III.改訂版でパワーアップした内容

冒頭に記載した通り、改訂版では従来版に織り込めなかったIFRSリース会計基準の実務上の解釈や考え方を織り込み、幅広い論点をカバーしています。ここでは、改訂版で新たに織り込まれた内容について、「リース期間の決定」を例にご紹介したいと思います。

リース期間の決定は、使用権資産およびリース負債の金額に影響するとともに、借手の短期リースに係る免除規程の適用可否にも影響するため、IFRSリース会計基準の適用において非常に重要である一方で、リース期間の決定には見積りを伴うこともあるため、一般的に実務上最も難しく、かつ影響が大きい事項です。改訂版ではリース期間の決定において実務上の論点となることが多い次のような事例について解説を追加しています。

  • リース開始日に解約不能期間が確定していないリース契約
  • 自動的に継続又は更新され続けるリース契約
  • 使用期間が無期限の契約
  • 解約オプションの行使が条件付きであるリース契約

IV.現行日本基準との比較

本書は、IFRSリース会計基準と日本の現行リース会計基準(企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」等)の比較を掲載しています。2024年9月13日に、企業会計基準委員会から企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等(以下、「新リース会計基準」という)が新たに公表されましたが、新リース会計基準における借手の処理はIFRSリース会計基準と概ね整合するように開発されました。従って、IFRSリース会計基準の解釈や考え方の理解が、新リース会計基準の理解に役立つと考えられます。また、これから新リース会計基準の適用を進めていくなかで、IFRSリース会計基準と日本の現行リース会計基準を比較することにより、日本の現行基準と新基準の差異を把握することができるほか、新リース会計基準を適用することによる影響を概観することが可能です。

IFRSリース会計基準と日本の現行リース会計基準の比較は、各章のトピックにおいて「日本基準との比較」という項目を設けて解説しています。加えて、各章の冒頭で、両者の比較表(「IFRS第16号と日本基準の主な差異」)を掲載している他、巻末の付録に、各章で取り扱った日本基準との比較(「日本基準との比較 一覧」)をまとめて掲載しています。新リース会計基準の適用にあたりご活用頂けますと幸いです。

執筆者

あずさ監査法人
名古屋統轄事業部
シニアマネジャー 松村 和宏