• 1000

COP29で押さえておきたい10のポイント

COP29(国連気候変動枠組条約第29回締約国会議)は「ファイナンスCOP」とも称され、資金に関する議論が多くみられました。もう1つは、2025年2月までに更新されるNDC(各国が決定する温室効果ガス排出削減目標)で、より野心的な目標を設定することが重要な議題となりました。新たな気候ファイナンスの目標や化石燃料の廃止については、期待ほどの進展はありませんでしたが、政府以外の組織の建設的な取組みが見られ、COP29は前向きな雰囲気を醸成していました。

COP29で押さえておきたい10のポイントは次のとおりです。

1. 気候ファイナンス


  • 新規合同数値目標(New Collective Quantified Goal、NCQG)は、公的資金および私的資金の両方を大幅に促進するためのインセンティブとなることが期待されています。
  • 次の各国が決定する貢献(Nationally Determined Contribution、NDC)は2025年2月までに策定され、これにもとづいて投資のためのパイプラインの整備が促進されます。
  • 民間セクターの新興市場への投資に対する関心の高まりがみられ、多くのパートナーシップが発表されました。
  • 産業の脱炭素化や資本を駆動するための保険と移行ファイナンスの役割など、さまざまな支援策が議論されました。

2. 気候移行計画


  • 気候移行計画(Climate Transition Plan、CTP)が気候アジェンダ全体で主流になるという明確なメッセージがありました。
  • CTPはCOPで重要な議論のトピックとなり、投資家、保険会社、規制当局などが推進していました。
  • 情報開示の増加、バリューチェーン全体の協力および異なる基準間の相互運用性(例:ISSB™基準、TPT、EFRAG)と誠実性の推進も議論されました。
  • 議論の焦点は主に気候緩和の転換計画でしたが、KPMGは、良い転換計画には気候適応、自然、および社会も反映されるべきという見解です。

3. 需要主導の脱炭素化


  • 多くの企業が2030年までの中間目標および2050年までのネットゼロ目標を達成するための運用上の脱炭素化策に関する困難を抱えているため、需要主導型の脱炭素化イニシアチブ(製品レベルのLCA/PCF測定を含む)に焦点を当てる動きが増えています。
  • これはすべてのセクターに関連しており、新たな気候政策の設計や、低炭素製品・素材の需要創出のためのバイヤーアライアンスなど、さまざまなアプローチが含まれます。
  • 主な目標は、農業、製造業、交通などの分野での運用上の脱炭素化を促すために、上流のサプライチェーンに大きな圧力をかけることです。

4. 産業の脱炭素化


  • セメント、アルミニウム、空運、海運などのHard-to-abate産業の脱炭素化に重点が置かれています。
  • これに関連して、「Industrial Transitions Accelerator」というイニシアチブが設立され、資金、技術、政策を結びつけて産業脱炭素化に必要な新興技術への需要を創出し、そのコスト削減を促進します。

5. エネルギー移行


  • 再生可能エネルギー容量を3倍に増加し、エネルギー効率を2倍にするというCOP28の目標達成には難題が多く、進展が遅れています。その主な理由は、技術のコスト競争力の低さ、開発者への経済的リターンの低さ、政策の不確実性、技術の大規模展開の不足、重要な鉱物資源へのアクセスの困難さとなっています。
  • エネルギー転換ソリューションの商業化には政策的な介入が必要であり、蓄電池と送電網に関する有志国による公約は、目標達成に寄与するとされています。

6. 気候政策


  • 主要国は2025年2月までにNDCを見直す義務があります。これにより新たな気候政策やインセンティブ措置が増加することが見込まれます。特にEUの炭素国境調整措置(CBAM)は企業に大きな影響を与えるため注目されています。

7. NDC


  • 2025年2月までに策定される次のNDCは、各国がどのようにパリ協定の目標を達成するかを示しています。イギリス、ブラジル、UAEはCOP29で、以前の目標より意欲的な新たなNDCを発表しています。
  • 各国の野心的なNDCを企業の移行計画と一致させ、投資を促すことが重要です。

8. 炭素市場


  • パリ協定の第6条4項が正式に採択され、国連主導の「パリ協定クレジットメカニズム(Paris Agreement Crediting Mechanism、PACM)」が設立されました。これにより国家と企業はNDC達成のために、炭素市場での取引が可能となります。COP29では自発的な炭素市場における企業の需要促進についても議論されました。

9. 適応とレジリエンス


  • COP29では適応とレジリエンスに大きな焦点が当てられましたが、NCQGでは適応策の資金需要が明示されていません。適応資金の不足を満たすためには、民間、公共、国際開発金融機関(MDBs)の資金を動員する必要があります。
  • 国別適応計画(National Adaptation Plan、NAP)の更新および提出は、COP30の重要な検討事項となるでしょう。

10. 報告への取組み


  • 主要な基準設定団体(国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)、CSRD、GRI、SBTI、ISO、GHGPなど)は、移行の実現に必要な開示と関連する行動を推進する役割について引き続き議論しています。
  • COP29では基準間の調和と相互運用性に重点が置かれ、企業はこれらの動向を引き続き注視し、戦略的に行動する必要があります。

COP30に向けて

ブラジルのベレンでの開催が予定されているCOP30では、引き続き気温上昇を1.5度に抑えること、そして地球規模での適応とレジリエンスの強化が焦点となります。特に、NDCにおける野心的な目標をいかに達成するかは、国や企業の移行計画を通じた実経済におけるコミットメントが議論の対象となるでしょう。COP29での合意に基づいて財政を活用するとともに、公的および民間の財源から少なくとも1.3兆ドルを開発途上国に提供することを目指して、助成金、優遇金利、非債務手段を含む「1.3兆ドルに向けたバクーからベレンへのロードマップ」のスケールアップに向けて働きかけています。

また、議長国であるブラジルは、自然が主要議題の1つとなることを公表しており、生物多様性条約と気候枠組条約の間の共同作業プログラムを検討するよう各国に呼びかけ、これらの問題に対するより統合的なアプローチの重要性を示しています。

 

本ページに掲載した情報は、KPMGインターナショナルのウェブサイトTop 10 takeaways from COP29を要約し、翻訳したものです。