グローバル

地政学リスクと投資減少でVC市場冷え込む、取引総額759億ドルに減少

地政学的緊張やイグジットの不足、レイターステージ案件への投資の減少により、2024年第1四半期のベンチャーキャピタル投資は7,520件、759億ドルに減少しました。

  • 南北アメリカでのベンチャーキャピタルによる投資が、アジアや欧州を大幅に上回る
  • AIは引き続きベンチャーキャピタルによる投資の大きな原動力
  • コーポレートベンチャーキャピタルによる投資が5年ぶりの低水準に落ち込む

2024年第2四半期に注目すべきトレンド

2024年第2四半期に向けて、IPO市場は注目されており、第1四半期の結果を受けて他のスタートアップも準備を進めています。一方、ベンチャーキャピタルはリミテッド・パートナーシップ(LP)からの圧力を受ける可能性があり、また、追加資金を調達できない企業が財務的に困窮し、小規模なM&Aが活発化する可能性もあります。

米国

イグジット機会不足でVC投資減少、AIとクリーンテックが主役

2024年第1四半期の米国におけるベンチャーキャピタル投資は、イグジット機会の欠如から大型案件に消極的であったため、2023年第4四半期の401億ドルから366億ドルに減少し、取引件数も3,457件から2,882件に減少しました。AIとクリーンテック分野が主要な取引となり、AIのAnthropicが40億ドル、電池会社のAscend Elementsが7億400万ドル、Figure AIが6億7,500万ドルを調達しました。

  • IPO市場は依然として停滞し、取引活動の鈍化がアーリーステージにも波及
  • AI分野は引き続き注目分野に
  • 規制問題が表面化するなか、M&Aの動きは依然として低調
  • 米国は引き続き国内での半導体製造能力の増強に注力

2024年第2四半期に注目すべきトレンド

2024年第2四半期にはダウンラウンドの割合が上昇し、資金不足で事業から撤退する企業が増加する可能性があります。また、IPOの見通しが立たず資金調達できないスタートアップが売却を検討するため、M&A市場が活発化すると予想されます。

南北アメリカ

南北アメリカの投資額急減、主要国の停滞が影響

2024年第1四半期の南北アメリカにおけるベンチャーキャピタル投資は、米国、カナダ、ブラジル、メキシコなどの主要国で投資が停滞したため、2023年第4四半期の430億ドル(3,878件)から380億ドル(3,205件)に減少しました。

  • ヘルスケアとバイオテック分野への注目が継続
  • 南北アメリカ全域でイグジットが停滞するなか、セカンダリー・マーケットは増加
  • 投資家が投資先を厳選するなか、スタートアップで二極化が進む
  • カナダへのベンチャーキャピタルによる投資は前四半期比で大幅に減少
  • フィンテックがブラジルにおける最大の投資分野でしたが、他分野も台頭

2024年第2四半期に注目すべきトレンド

2024年第2四半期に向けて、イグジット手段が限られるなか、スタートアップは初期投資家に流動性を提供する方法を模索し続けるため、南北アメリカではセカンダリー・マーケットが堅調に推移すると予想されます。また、Redditの結果次第で他の企業がIPOを試みるかどうかが注目され、IPOが回復すれば、LPからベンチャーキャピタルへの資本投下圧力が高まる可能性があります。

欧州

H2 Green Steelの大型調達で欧州投資額が増加するも慎重姿勢続く

2024年第1四半期の欧州におけるベンチャーキャピタルの投資は、スウェーデンのH2 Green Steelによる52億ドルの資金調達もあり、前年第4四半期の151億ドルから179億ドルに増加しました。欧州のベンチャーキャピタルは、一部の例外を除き、地政学的環境や高金利などのマクロ経済的状況を考慮し、引き続き慎重な姿勢を維持しています。

  • 取引件数が減少する一方、取引総額は堅調
  • クリーンテックが欧州で最大の勝者に
  • 英国では過去5年間で最低水準に
  • ドイツではマクロ経済の不透明感が続くなかでベンチャーキャピタルによる投資はやや減少
  • オーストリアではベンチャーキャピタル市場に明るい兆し
  • アイルランドでは取引総額、取引件数が大幅に減少

2024年第2四半期に注目すべきトレンド

2024年第2四半期に向けて、欧州のベンチャーキャピタルは米国と欧州の選挙に関連する不確実性やマクロ経済的課題、地政学的問題を注視し、慎重な姿勢を維持すると考えられます。クリーンテックとESGレポート関連の投資は規制強化により堅調に推移し、防衛技術分野への関心も高まっています。また、暗号資産への関心も回復し、次の四半期には投資が増加する可能性があります。

アジア

アジアVC投資低迷、中国の大型案件も流れ変えられず

アジアにおける2024年第1四半期のベンチャーキャピタル投資は、189億ドル(2,305件)で、2023年第4四半期の229億ドル(2,920件)から減少しました。中国ではEV企業のIM Motors(11億ドル)、AIスマート・チャットボット企業のYueZhiAnMian(10億ドル)、インターネット・通信衛星企業のYuanxin Satellite(9億4,000万ドル)などの大型案件があったものの、全体的には前期比で減少しました。

  • アジアの投資家の注目を集めるAI
  • クリーンテックはアジアでの注目が高まり続ける
  • 中国へのベンチャーキャピタルによる投資、2024年第1四半期は低調

エコシステムの進化に伴い日本のベンチャーキャピタル市場は健全に

2024年第1四半期の日本のベンチャーキャピタル市場は非常に好調で、前年同四半期と同等の水準でした。消費財を扱うMOON-X(2,300万ドル)やバイオテクノロジー企業のPRISM BioLab(1,000万ドル)など多くの企業が資金調達に成功しました。日本人起業家が設立した米国拠点のOishii Farm Corporationも1億7,300万ドルを調達しました。さらに、台湾のTSMCが日本で初の工場を開設し、日本政府が第二工場建設に最大48億ドルを支援することも発表されました。ベンチャーキャピタルエコシステムの成熟度の高まりもあり、ファンド数も増加を続けています。政府支援のもと、2027年までにスタートアップへの投資額を大幅に増やす計画が進行中です。

2024年第2四半期に注目すべきトレンド

2024年第2四半期もアジアにおけるベンチャーキャピタル投資は堅調に推移し、消費者市場の回復も続きますが、そのペースは緩やかであると予想されます。バッテリー技術やEVバリューチェーン・ビジネス、半導体などのESG関連技術に加え、AIも引き続き大型案件を誘致する可能性があります。

英語コンテンツ(原文)

Q1’24 Venture Pulse Report – Global trends

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