経営者の視点でとらえるサステナビリティー

この記事は、「日本経済新聞電子版(期間:2023年11月27日~12月26日)」に掲載された広告特集です。発行元である株式会社日本経済新聞社の許可を得て、ウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。

これまで企業がCSR活動の一環として取り組んできた環境や社会のサステナビリティー。その経営における重要度が高まっている。今、企業には、サステナビリティーへの取り組みを通じて企業価値を高める「Sustainable Value Creation」を目指す経営が求められている。サステナビリティーが企業経営に影響を与えるようになった背景や、経営者に求められる視点について、KPMG/あずさ監査法人 専務理事の田中弘隆氏が、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)の代表を務めるピーター・バッカー氏と、KPMGインターナショナル ESG統括グローバルヘッドのジョン・マカラリーシー氏に聞いた。

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企業の将来における競争力の鍵、存続に関わるサステナビリティー

田中 これまでサステナビリティーは、環境問題や、人権をはじめとする社会的課題に注意を払うべきという意味合いで捉えられてきました。それが今や、企業や社会の持続可能性に関わる問題として認識されています。サステナビリティーが経営課題として捉えられるようになった背景はどこにあるのでしょうか。

バッカー 環境問題と社会問題は、企業が長期的に存続する上で影響のある課題であることが明確になりつつあります。企業はこれまでもCSR活動に取り組んできましたが、今では、リスク管理やレピュテーション管理、戦略、そしてパフォーマンス管理として、環境や社会のサステナビリティーの視点を統合(Integrate)していかなくてはなりません。

気候変動を例に挙げれば、脱炭素化への取り組みが急務です。科学的には、2030年までにGHG排出量を45%削減する必要があるとされています。今後7年間で大規模な変革が必要となるのです。そのためには、組織内のあらゆる機能を変革し、業績管理、説明責任、情報開示、調達、雇用などあらゆる領域を完全に再設計しなくてはなりません。

マカラリーシー 私も全く同じ意見です。サステナビリティーの問題と経営の問題は基本的に同じと捉えるべきだと考えています。経営陣は、情報開示や報告義務に関するコンプライアンスだけでなく、CBAM(カーボン・ボーダー・アジャストメント・メカニズム)といった新たな規制を常に把握しておかなくてはなりません。そうした規制がビジネスモデルや事業に与える潜在的な影響を理解できなければ、事業が存続できなくなる可能性もあるからです。

WBCSDプレジデント&CEO
ピーター・バッカー

世界的な輸送・物流会社であるTNT NVの最高財務責任者(CFO)および最高経営責任者(CEO)を務めたのち2012年から現職。09年には世界の課題解決に向けてリーダーシップを発揮する人物を表彰するクリントン・グローバル・シチズン賞を、10年には、サステナビリティーに関する功績を表彰するサステナビリティー・リーダーシップ賞を受賞している。複数企業にて持続可能性に関する諮問委員会のメンバーも務める。

ピーター・バッカー 氏

田中 サステナビリティーの取り組みが、企業経営におけるリスクにダイレクトに影響するようになったということですね。

バッカー これはリスクだけの問題ではありません。イノベーションの機会がどこにあるのかにも関わってきます。長期的には企業の競争力にも関わる問題です。ひとたび変革に乗り遅れると、追随は困難になります。サステナビリティーが企業の将来の競争力の鍵となると思えば、考え方も変わってくるのではないでしょうか。

マカラリーシー サステナビリティーに関してはさまざまなリスクがありますが、同時に新しいビジネスチャンスも存在します。新たなテクノロジーが、再生可能エネルギーやEV、水素、洋上風力発電などへの投資につながるのです。また、優秀な人材の獲得にもつながります。

しかし、今後、真剣にサステナビリティーに取り組まない限り、そのような未来はやって来ないでしょう。だからこそ、サステナビリティーと経営の課題は切り離すことができず、経営陣の意思決定や社内外のコミュニケーションにおいても考慮すべきなのです。

ジョン・マカラリーシー

KPMGインターナショナル
ESG統括グローバルヘッド
ジョン・マカラリーシー

KPMGインターナショナルでESG関連サービスの責任者を務め、過去20年以上にわたり、英国、アジア太平洋地域、グローバルで数々の上級管理職を歴任。元KPMG英国ボードメンバーとして、KPMGの戦略的方向性とビジョン、価値観、目的との整合性について明確かつ見識のある助言を提供し、KPMG英国ファームの管理、説明責任、リーダーシップを監督。近年では、ESGの強力な外部提唱者として、数々の組織に参画してインクルージョン、多様性、社会的平等を推進している。

サステナビリティーの視点でマインドセットを変える

田中 つまり、サステナビリティー戦略は経営戦略と一体化して検討し、実行しなければ、中長期的な企業価値向上につながらないということですね。では、経営者はサステナビリティーに対してどのような視点を持つべきでしょうか。

バッカー まず、ビジネスについて考える視野を広げる必要があります。次の四半期といった短期計画ではなく、5~10年先を見据えた移行計画を実施しなくてはなりません。また、資本市場関係者だけでなく、さまざまなステークホルダーを考慮する必要があります。

そしてサステナビリティーの世界における説明責任とは何かを根本的に考え直し(rethink)、マインドセットを変えることも大切です。

経営者は、サステナビリティーの観点で、原材料から製品の最終段階までのバリューチェーン全体に責任を持つことになります。自社だけでなく、バリューチェーン全体に与える影響について考えなければなりません。自社だけで解決できる問題ではないため、そこにはコラボレーションが求められます。それが脱炭素化につながっていくのです。

田中 弘隆

KPMGジャパン あずさ監査法人
専務理事/サステナブルバリュー統轄
田中 弘隆

2007年、あずさ監査法人パートナーに就任。08年から3年間、KPMG IFRG(英国)に赴任し、KPMGのIFRS®会計基準ガイダンスの作成、IFRS会計基準コンサルテーションに従事。その後、グローバル企業へのIFRS会計基準導入支援および監査責任者を歴任。グローバルIFRS会計基準パネルメンバー、品質管理本部長を歴任し、19年、常務執行理事就任。23年からサステナブルバリュー統轄専務理事を務める。

マカラリーシー KPMGが「KPMGグローバルサステナビリティ報告調査2022」にて世界の売上高上位250社を調査したところ、既に96%がサステナビリティーに関する報告を行っていることがわかっています。ただし、重要なのは、報告が目的なのではなく、報告を通じて変化を促すことを目指すべきだということです。

クライアントとの議論を通じて、経営陣のマインドセットの変化を実感します。サステナビリティーに関する報告に取り組む企業が増えており、自社のサステナビリティーに関する情報を収集すべきだと認識し始めているのです。情報は、経営陣はもちろん、財務や調達、オペレーション全体、そしてサプライチェーン全体で収集し、活用する必要があります。

田中 企業のサステナビリティーに対する取り組みの温度感を、どのように感じていますか。

マカラリーシー 現状では、サステナビリティーへの取り組みに「やらされ感」を感じている経営者もいれば、戦略的にできることから取り組もうと考えている経営者もいます。現段階では少数ですが、理想的には目的主導型のマインドセットを持つことが望まれます。

いずれにしてもKPMGは、企業によって異なる多様な現状を理解することが大切だと考えています。各社の状況を踏まえて経営者と議論を進め、「Sustainable Value Creation(YouTube動画)」を目指し、バリューチェーンを通してトップからオペレーションに至るまでの変革を導いていく。同時に社内を含む自社のバリューチェーンやサプライチェーン全体での情報収集や報告に取り組めば、変化を加速させることにもつながるでしょう。

経営者の視点でとらえるサステナビリティー

Sustainable Value Creation― 持続可能な企業価値創造

持続可能な社会の実現に向け、KPMGは戦略、開示、保証そして変革のためのサポートを通し、企業のSustainable Value Creationを支えています。