パート1 欧州のライフサイエンス - 発展とトレンド
欧州におけるライフサイエンスの重要性
欧州のライフサイエンス業界(製薬、バイオテック、メドテック)は、高付加価値な職種やR&D(研究開発)投資の創出において、多大な貢献をしています。欧州製薬団体連合会(EFPIA)によると、2022年に欧州の製薬業界はR&Dに445億ユーロを投資し、86.5万人を直接雇用しています。また、メドテックヨーロッパ(MedTech Europe)は、メドテック産業はクオリティの高い職種に80万人以上を雇用するなど、EU経済に大きく寄与していると述べています。
欧州のバイオテック、製薬、メドテック市場
世界の医薬品市場は、2020年の1兆2,280億米ドルから2025年には1兆7,010億米ドルへと年平均成長率8%で拡大すると推定されていますが、なかでも欧州は全体の24%を占めています。欧州では、英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペインの主要5ヵ国が市場シェアの約70%を占め、年平均成長率は4.5%と見込まれています。また、2021年のEU医療機器市場は、1,500億ユーロと世界市場の27.3%を占め、米国に次ぐ規模となっています。
- 医療費の対GDP比
欧州のライフサイエンス直接投資に影響を与える最新トレンド
- グリーン戦略を基調とした産業戦略の再開
- 欧州への新規参入者
- BEPS2.0 – 国際的な最低法人税率の導入と市場国への課税権配分
- 規制環境の変化
EUのライフサイエンス戦略と資金提供
EUは、ライフサイエンス産業を支援するため、さまざまな戦略と具体策を展開しています。2021年5月のEU新産業戦略更新版もこれに含まれ、グリーン・デジタル経済への移行を促進し、EU産業の国際競争力と欧州の戦略的自律性を強化する内容となっています。
- 利用可能な資金
パート2 事業拠点の選定
欧州医薬品庁(EMA)は、EUにおいてライフサイエンス事業の展開に影響を与える重要な機関です。EMAの多大な努力と成果にもかかわらず、EUにおける同事業は複雑かつ分断した状況が続いています。ブレグジットの影響で環境が一層複雑化し、欧州単一市場に属さないスイスと英国が、ライフサイエンス分野でリードする状況にあります。
産業政策
産業政策には、ライフサイエンスへの投資を促すための産業戦略、租税戦略、インセンティブなどが含まれています。これらについて明確な産業政策やライフサイエンス戦略を持つ国は、進行中または計画段階の事業活動に具体的な支援が期待できるため、企業にとって魅力的な選択肢となります。
クラスター
事業拠点の選定においては、クラスターの規模や製品パイプラインの比較が有効な指標となります。強力なクラスターは、優秀な人材や専門知識、ノウハウを集め、イノベーションに特に貢献します。これは、創薬や開発の専門家が創造的な環境と強力なアカデミック・エコシステムから恩恵を受けることができるからです。
- 経済ファンダメンタルズ
- 総合競争力比較
- 政治的安定と腐敗
- レジリエンス
- EU市場と国際協定ネットワークへのアクセス
物理的インフラ
ライフサイエンス業界では、製造活動や物流の混乱がサプライチェーンに大きな影響を与えるため、インフラの質が非常に重要です。
- 安全性と危機管理
- 欧州の主要機関
注目:FDA規制が適用される医薬品製造施設
米食品医薬品局(FDA)は欧州にもオフィスを持ち、EU諸国や英国、スイス、ノルウェーなどのEU非加盟国をもカバーしています。FDAのこれらのオフィスは、欧州と米国の共同プロジェクトを進展させ、米国へ輸出される欧州製の医薬品・食品の安全性、品質、有効性の向上に寄与しています。
イノベーション
企業が新たなR&D施設や製造施設の拠点を選定する際、対象国のイノベーション水準、特定治療分野の研究拠点、臨床研究能力、産学連携の水準などが重要な検討事項となります。住民100万人当たりの科学論文発表数が多い国は、イノベーションハブとして好位置にあるとされます(2020年版欧州イノベーション・スコアボード)。
- イノベーション・スコアボード
- R&D支出
人材
ライフサイエンス企業にとって、人材の獲得はきわめて重要です。主要なライフサイエンスクラスターには、事業経営、R&D、製造の各分野で優秀な人材が世界中から集まり、これがライフサイエンス業界への投資を魅力的なものにしています。
- 世界人材競争力指数
- 大学ランキング
- クオリティ・オブ・ライフと環境パフォーマンス/ワークライフバランス
- 労働法規
- 労働生産性と労働稼働率
- 労働コスト
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