KPMGジャパン初の取組みとなる日本での本調査では、消費者に提供されている各種購買支援ツールに係る現況について、企業、消費者双方へアンケート調査を実施し、企業側のツールやサービスに対する現状の取組みと、消費者側が求める水準とのギャップ等の特定・分析を行った。
その結果をもとに国内の小売企業および直販を行う消費財メーカーが目指す購買支援のあり方を考察する。
背景
昨今、国内小売業および消費財メーカーによる直販において、消費者の購買に係る認知・興味から、比較検討、購入、リテンションまでのカスタマージャーニーの一連の流れにおいて、テクノロジーを活用した、消費者向け購買活動の支援ツールやサービスが利用されている。
2019年以降のコロナ禍や、2022年以降の記録的円安などに伴い、国内外の外部環境の不確実性が増すなかで、企業が持続的な成長を実現する難易度は高まり続けている。消費者と直接相対する小売企業は、顧客の購買行動の動向・変化を捉えて、購買体験を高める支援を提供することが、持続的な成長を実現するうえで避けられないテーマの1つとなっている。
しかし、企業が提供する購買支援ツール・サービスのなかには、消費者側の実際のニーズ(求める内容・水準)と、企業側の消費者ニーズに対する認識およびそれに基づく取組みにギャップが生じているものも散見され、多くの企業が最適な対応方法を模索している実態がうかがえる。
概要
このような背景を踏まえて、消費者に提供されている各種購買支援ツールに係る現況について、KPMGジャパンは2023年、企業、消費者双方へアンケート調査を実施し、企業側のツールやサービスに対する現状の取組みと、消費者側が求める水準とのギャップ等を特定・分析した。分析結果を基に、国内の小売企業が目指す購買支援のあり方を洞察し、「テクノロジーを活用した消費者の購買支援ツールに関する調査」としてまとめた。なお、消費者に対する調査の有効サンプル数は6,185。年齢別(20~70代以上の6セグメント)および男女別(2セグメント)で人口動態に合わせて割り付けを実施した。企業に対する調査の有効サンプル数は80で、国内小売業および消費者への直販を行うメーカーを対象とした。
本調査では、オンライン・オフライン両方のチャネルへの影響度が大きい(消費者の購買プロセスのカバー範囲が広い)、「ウェブルーミング」、「BOPIS」、「ネットスーパー・ネットコンビニ」についてまず取り上げている。続いて、チャネルへの影響や購買プロセスのカバー範囲が限定的な、「パーソナライズされた販促」(認知・興味))、「トレーサビリティ」(比較検討・情報収集)、「レジ機能の省人・無人化」(決済)、「非デジタル系サブスクリプションサービス」(購買~CRM)について取り上げる。
テクノロジーを活用した購買支援ツール・サービス別の、現状の企業と消費者のギャップと将来のあり方の概要
目次
- イントロダクション・エグゼクティブサマリー
- ウェブルーミング
フリーライド行動の防止のための来店動機創出の重要性 - BOPIS
日本における定着の可能性 - ネットスーパー・ネットコンビニ
収益化のための新規顧客獲得の重要性 - パーソナライズされた販促
消費者データ取得の障壁と、購買に与える影響 - トレーサビリティ
開示状況が購買に与える影響 - レジ機能の省人・無人化
顧客の利便性に与える影響 - 非デジタル系サブスクリプションサービス
普及に求められる成功要件 - まとめ
購買支援ツール・サービスに対する企業の対応方針の総括・新興テクノロジーの活用可能性
執筆者
KPMGジャパン 消費財・小売セクター
パートナー 梶川 慎也
株式会社 KPMG FAS
シニアアソシエイト 近藤 隼人
アソシエイト 宍倉 理沙