AI倫理とAI社会原則について

政府が定める「人間中心のAI社会原則」について解説します。

政府が定める「人間中心のAI社会原則」について解説します。

最近のAI関連のニュースはChatGPTが中心となっていますが、その利用にあたりさまざまなリスクが取り沙汰されています。これまでもAIに関するインシデントは発生してきましたが、特に不当な差別やプライバシーの侵害など、倫理面に関するインシデントが報告されています。

AIの活用に関して、倫理面も含めたAIに関連する問題が発生しないよう対応が求められています。この点、各国政府や企業は、AIによる問題が発生しないようAI原則を掲げてきました。また、互いに議論が進められ、38ヵ国が加盟しているOECDからAI原則が公表されており、これが基本指針となっています。日本もAI原則を公表していますので、ここでは日本のAI原則について触れたいと思います。

政府は2019年3月に「人間中心のAI社会原則」を公表しました。政府はこの原則を通してSociety 5.0を実現し、日本が経済発展と社会課題を解決し、魅力ある社会になることを目指しています。

この原則の原則名や基本理念から「人間が中心」であることが重要なポイントであることがわかります。当該原則では、人間がAIを理解し、使いこなし、多様な背景を持つ人々が幸せを追求できることが重要だと述べられており、これを「AI-Readyな社会」と定義しています。多様な背景を持つ人々が幸せを追求するために、AIが倫理的な問題を起こさないことは必須であると言えるでしょう。

人間の尊厳が尊重される社会(Dignity)、多様な背景を持つ人々が多様な幸せを追求できる社会(Diversity & Inclusion)、持続性ある社会(Sustainability)の3つを基本理念としている。
 

この「AI-Readyな社会」を実現するため、「人間中心のAI社会原則」の4章でAIに関するステークホルダーが留意すべき基本原則(AI社会原則)が定められています。この原則は7項目で構成され、各項目を要約すると以下のようになります。

AI倫理とAI社会原則について-1

AI社会原則

I.人間中心の原則
AIの利用は、基本的な人権を侵してはならない。

II.教育・リテラシーの原則
あらゆる立場の人がAIを理解して利用できるように、AIのリテラシーに対して平等な教育機会を提供すべき。

III.プライバシー確保の原則
個人の自由、尊厳、平等を侵害しないようパーソナルデータを取り扱わなければならない。

IV.セキュリティ確保の原則
社会はサイバーセキュリティの確保を含むリスク管理に取り組むべき。AIの利用については、少数特定のAIに一義的に依存せず、持続可能性に留意する。

V.公正競争確保の原則
公正な競争環境を実現するために特定の国、企業にAIに関する資源が集中したとしても、その地位を利用した不当なデータの収集や主権の侵害が行われてはならない。

VI.公平性、説明責任及び透明性の原則
人々はAIの利用によって不当な差別を受けてはならない。公平性、透明性のある意思決定とその結果に対する説明責任を確保する。

VII.イノベーションの原則
AIの発展によりイノベーションを推進するために、あらゆる垣根を越えて産官学で協働する。

また、開発者と事業者に対しては、以下のようにAI開発原則を定めるべきと述べられています。

AI開発原則

AIの開発者と事業者は、基本理念とAI社会原則を踏まえてAI開発利用原則を定め、遵守すべきである。

これらの基本原則から読み取れるのは「あくまで人間が中心となり、AIが人権・多様性を侵害しないよう公平性と透明性を確保しつつ、かつイノベーションの推進に貢献できる社会の仕組みが必要」だということです。

この原則を実践するため、経済産業省は2021年7月に「我が国のAIガバナンスの在り方」を公表しています。「我が国のAIガバナンスの在り方」についての解説記事は以下をご覧ください。

AIガバナンスの考え方

あずさ監査法人では、上記のようなAIを取り巻く社会環境も踏またうえで、「AIが目的に沿ったパフォーマンスになっているか」だけでなく「公平性」、「説明可能性」、「追跡可能性」等の観点も含め、AIの適切性を、第三者の立場から評価・検証するサービスを提供します。

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