逆風下でも強い楽観姿勢
世界経済の減速や製造業の厳しい状況が続いていますが、CEOたちは今後3年間の自社の成長に自信を持ち、楽観的な姿勢が強まっています。ただ、各国政府のインフレ対策で、短期的な成長見通しに対する自信は低下しています。もし景気後退が起これば、4分の3以上のCEOが自社の成長見通しに影響が出ることを認めています。
そうしたなか、CEOたちは景気減速に備え、自社の強化を目指していますが、難しい決断が迫られることもあります。86%のCEOは生産性の向上に注力し、自社のレジリエンスを維持できると信じています。
世界のサプライチェーンの変化
インフレ抑制策や地政学リスクの高まりで、経済は不透明な状態が続いています。ロシアのウクライナ侵攻により、世界的な緊張が高まり、88%の企業がロシアでの事業を中止しました。しかし、グローバリゼーションが後退するわけではなく、形が変わっている可能性が高いと考えられます。
パンデミックが明らかにした脆弱性を軽減するため、84%以上のCEOが業務の海外移転や内製化に取り組んでいます。サプライチェーンを分散させているとの回答はさらに上回っています。地政学的な不確実性を受け、世界経済の分断の可能性が増しています。
変革の基本要素の構築
企業は、組織内外の手段を活用して、より速い成長を目指しています。CEOたちは、成長目標の最優先事項として、戦略的提携と内部的成長を挙げています。合併・買収(M&A)の優先度はやや低下していますが、半数以上のCEOが、自社に大きな影響を持つM&Aに意欲的です。
2022年にはM&Aが減少しましたが、製造業では、中核事業の強化や迅速な事業拡大策の重要な手段として、依然としてM&Aが利用されています。これにより、事業再編や変革が加速される可能性があります。
ESG目標に照準
CEOたちは、企業の環境・社会・ガバナンス(ESG)目標に関する透明性向上の要求について、従業員の関心が投資家よりも高いことを認識しています。ESG戦略を進めるため、CEOたちは賃金や人権などの社会的課題に積極的に取り組むことが見込まれます。
ESGで重要なポイントはダイバーシティ、平等、インクルージョン(DEI)です。企業は従業員構成の最適化を優先し、リーダー候補の育成を強化する必要があります。
サステナビリティは大きな課題で、ESG目標に取り組むことが企業価値向上につながる根拠が増えており、ESGを重視する機関投資の重要性も増しています。一方、ESG目標を達成できない企業は財務リスクにさらされることがわかっています。
スキルの重要性の高まり
CEOたちは、事業拡大には従業員の質が重要だと理解しています。今後3年間の成長目標のための人材獲得と定着が最優先課題で、CEOの約3分の1が同意しています。2022年にテクノロジー業界で多くの熟練労働者が失業しましたが、これは製造業がデジタルトランスフォーメーションを後押しする人材を雇用できるチャンスです。
フレックスタイム制や在宅勤務の導入は、熟練した人材を呼び込む大切な方法で、組織にも利益をもたらす可能性があります。ハイブリッドワークやリモートワークがイノベーションや協働に及ぼす影響は「どちらとも言えない」が48%で、「プラスの影響があった」とほぼ同数でした。
デジタルと人材
産業変革における自社の立場について、CEOの見解は分かれています。デジタルオポチュニティへの投資を早める必要があると考えるCEOは78%で、ファーストムーバーアドバンテージ(先行者利益)を確保する戦略があると回答したのは75%でした。製造業は持続的改善を重視した変革に取り組んでいます。
企業のIndustry 4.0の実現には、従業員の姿勢との一致が求められますが、難しい状況です。従業員に新しい働き方を受け入れさせることが、CEOが重要視する要因です。これは、従業員が企業の変革を支援し、デジタルトランスフォーメーションの中心で、テクノロジーを活用して業務プロセスのデジタル化を進めることが重要だと示しています。
新しいテクノロジーの受け入れにあたり、従業員の姿勢変化には、経営者や管理者の努力と時間が必要です。しかし、変革目標の最優先課題に対して、新しいテクノロジー投資を優先するは57%で、スキル育成を優先するは43%にとどまっています。
結論
『世界の製造業の見通し2022』によると、経営陣はデジタル化とESGへの注力を重視しています。しかし、世界経済の減速とテクノロジーの急速な変化により、CEOは持続可能な成長と収益成長の目標を見失ってはなりません。地政学、気候変動、労働慣行の変化が企業の長期目標達成を困難にしていますが、この調査からCEOたちが未来の課題と機会を理解していることが明らかになりました。
英語コンテンツ(原文)
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