変化の兆し
通信事業は常に変化していますが、変化をもたらす要因も常に変化しています。
1.従来型のビジネスは苦難に直面
通信業界はビット(データ)移動で収益を得てきましたが、インフラ投資による収益圧迫が課題となっています。通信業界はビジネスの多様化と収益性向上の方法を見つける必要があります。
2.高まる顧客からの期待
顧客の期待はコンシューマ・法人向けの両事業で高まっていますが、顧客はより良いサービス、柔軟なサービス、請求の透明性、使いやすさの向上を求めています。特に法人顧客は、コールセンターや営業担当者を介することなく、より高度な接続性とデータソリューションを求める傾向が強くなっています。
3.ハイパースケーラーとの競争激化
通信業界が変化するなかで、通信事業者とハイパースケーラー間の競争はますます激しくなると予想されます。ハイパースケーラーの大きな野心と人材への投資は、通信事業者にとって深刻な懸念事項となるでしょう。
4.世界同時不況の可能性
インフレと金利は引き続き上昇する可能性があり、不況が迫っています。金利の上昇により、資本コストが上昇するため、通信事業者の借入能力や資本調達に影響する可能性があります。財務体質が弱い事業者は、財政的な苦境リスクが高まる可能性があります。
5.テクノロジーが生み出す新たなチャンスと脅威
ネットワークのアップグレードは、通信事業者にとって重要かつ高コストの技術投資です。5Gは、顧客の帯域幅ニーズを満たす目的で通信事業者の取組みの中心となっていますが、導入コストが高く、進めるには困難が伴います。AIや機械学習などの活用についても、サービスや運用改善にどのように適用するか注視する必要があります。
6.ESGアジェンダの達成
最近のCEO調査で、経済の停滞により50%の企業幹部が、次の6ヵ月でESGの取組みを一時停止または再考する必要があると回答しています。しかし、これは逆効果になる可能性があります。金融部門がESGを支持するにつれ、企業ローンや債務の多くがESG指標に関連付けられることが予想されます。
7.回避できない規制強化
多くのキャリアは、EU一般データ保護規則(GDPR)や他のグローバルなプライバシー法令に適合するため、多額の資金を投入しています。これらの規制により、通信事業者はネットワーク、アプリケーション、オペレーション全体で、より強固なプライバシーとサイバーセキュリティ対策を確立することが求められるでしょう。
戦略的必要条件
従来の通信事業モデルに変化が迫るなか、さまざまな戦略的必要条件が浮上しています。テレコムリーダーが抱える大きな課題の1つは、将来の成長を実現するために、変化にどう対応するかを見極めることです。
1.ネットワークの強化
このビジネスモデルで成功する要件は、通信事業者がコアとなるコネクティビティとネットワークインフラストラクチャーに集中することです。そのためには、スケール、速度、高可用性を持つコネクティビティを提供することが重要です。
2.デジタル・フロントエンド・プレイへの注力
仮想移動体通信事業者(MVNO)モデルを続けることで、通信事業者は販売とマーケティングに集中し、接続とサービスの大半を他社に任せる戦略です。MVNOや「アセットライト」モデルは、規模の変更を容易にし、マージンの改善、コストの削減、簡素化を推進します。
3.マネージドサービスの充実
マネージドサービスのビジネスモデルでは、付加価値の高い分野への展開が重視され、特に法人顧客には完全なソリューションセットの提供が必要です。一方で通信事業者は、自社ネットワークのトラフィックやボリュームが増加・促進できるでしょう。
4.Telcoからtechcoへのジャンプ
多くの通信事業者(telco)にとって、最も重要な戦略的命題は、自社をテクノロジー企業(techco)として再構築することです。多くの事業者が、従来のネットワークインフラプロバイダーとしてのイメージから脱却するために、「テックカンパニー」を目指しています。彼らは、自社をテクノロジーレイヤーの上位に移動させるため、プライベート5Gネットワークシステムや都市サービスなどの新しい製品・サービスを発表することで、自社の主張をアピールしています。
KPMG Connected Enterprise
通信業界におけるデジタルトランスフォーメーションでは、すべてがつながったオペレーティングモデルに適応させることが必要です。
- 勝利をもたらすオペレーティングモデルを可能にするコネクティビティ
- 将来志向の戦略とアプローチのバランスが、パフォーマンスを促進
- 能力の成熟度評価
ケーススタディ
- 財務オペレーティングモデルの強化(グローバルな通信事業者)
- 市場を捉えた事業拡大(グローバルな通信事業者)
- techcoへの転換(地域通信事業者)
実現に向けて
通信事業者があらゆるコネクティビティ体験を迅速に前進させるのに役立つ、重要なポイントは以下のとおりです。
- 顧客が求めるものに寄り添う。
- アジャイルに取り組む。
- レジリエンスを構築する。
- 人間であることを忘れない。
- 新しい技術の活用。
英語コンテンツ(原文)
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