COSO、サステナビリティ報告に関わる内部統制構築のための補足ガイダンスを公表

2023年3月30日、米国トレッドウェイ委員会支援組織委員会（以下、COSO）は“Achieving Effective Internal Control over Sustainability Reporting （ICSR）: Building Trust and Confidence through the COSO Internal Control-Integrated Framework”（以下、本ガイダンス）を公表しました。これは、1992年に公表され、その後2013年に改訂された「内部統制 - 統合的フレームワーク」（以下、ICIF）を用いて、組織がサステナビリティ報告に関わる有効な内部統制を実現するための補足ガイダンスであり、サステナビリティ¹を取り込む際に必要となるさまざまな分野の専門家や部門横断での協力を促す手段の提供を目的としています。過去20年以上にわたるICIFの財務報告への適用から得た知見を活かし、サステナビリティパフォーマンスデータの信頼性向上のためにICIFの活用を研究した2017年の論文“Leveraging the COSO Internal Control—Integrated Framework to Improve Confidence in Sustainability Performance Data”を参照・発展させ、本ガイダンスはまとめられました。COSOは、本ガイダンスの活用が、サステナビリティ情報の信頼と信用を構築し、企業とステークホルダーの意思決定にとって有用性を増すことにつながるとしています。

本ガイダンスは、現在、期待の高まっている包括的な企業報告の実現とその内容の信頼性確保のために必要となる、財務情報とサステナブルビジネス情報²に関わる有効な内部統制システムの確立と維持に向け、組織と実務者が旅路（journey）を歩む際のカギとなるテーマを示しています。例えば、内部統制確保への責任ある関与、組織の状況に応じたICIF-2013原則の適応、内部統制運用の最適な役割と責任の決定等です。加えて、サステナビリティ報告に関わる内部統制の構築に向け先進的に取り組む組織の経験から得たインサイトや、ICIF-2013の17原則それぞれをサステナビリティ報告に適用するための説明と解釈も取りまとめています。

本ガイダンスの主な内容は、以下のとおりです。

• 提言：サステナブルビジネス情報における信頼と信用の構築
• 背景
• ICIF-2013原則のサステナビリティ報告への適用：サステナビリティ報告に関する内部統制（ICSR）の構築
• Top 10 Takeaways
  

国際サステナビリティ基準審議会（ISSB）によるIFRS®サステナビリティ開示基準と、米国証券取引委員会（SEC）による気候関連開示規則の最終化を控えるこのタイミングで公表された本ガイダンスは意義深いものといえます。後日、本ガイダンスに関するより詳細な解説記事を掲載予定です。
 

本ガイダンスにおける定義

¹ サステナビリティ：今の必要性の充足に際し、将来世代に対し禍根を残さないように、対応すること

² サステナブルビジネス：継続企業の前提のもとに組織が長期的に存在し、組織の目的達成のために資源を提供するすべてのステークホルダーの期待に応じた価値を提供するための活動や取引。サステナブルビジネス情報（またはサステナブルビジネス報告）は、組織のサステナブルビジネスに関わる活動や取引を反映したデータや情報を意味する。

有限責任 あずさ監査法人
KPMGサステナブルバリューサービス・ジャパン
伊藤 友希