ファミリービジネスにはアントレプレナー的な能力、ファミリーの自社に対する帰属意識と感情的愛着といった特徴があり、それらがファミリービジネスの持続可能な競争力に寄与しています。本稿では、これらファミリービジネスの重要な特徴に焦点をあてながら、日本における調査結果を提示しています。同時に、本レポートを通じて、欧州、米州、アジア太平洋、中東・アフリカ地域におけるファミリービジネスの特徴とも比較することが可能です。
主なリーダーシップスタイル
リーダーはファミリービジネスに浸透している文化と戦略に直接的な影響を与えます。リーダーシップのスタイルは1つとは限らず、企業の創業年数と発展段階、経済、社会、ビジネスの状況に応じて変化します。ファミリービジネスでは、以下の3つのリーダーシップスタイルが見られます。
- 独裁型:家父長的で、強力な権威、部下への配慮、道徳的なリーダーシップが見られる。
- 変革型:フォロワーの基本的な価値観、信条、態度を変革または変化させる能力があり、フォロワーは積極的に期待以上のパフォーマンスを発揮しようとする。
- カリスマ型:フォロワーのやる気を高め、鼓舞する能力があり、リーダーへの信頼、集団としてのアイデンティティの意識、エンパワーメントが見られる。
日本では、主に「独裁型」および「カリスマ型」のリーダーシップスタイルが選ばれています。他方、米州や欧州では「変革型」が好まれています。
主なリーダーシップスタイル
ファミリービジネスのアントレプレナー的能力
アントレプレナー主義の継続は、ファミリー自身の能力とリソース、そして受け継がれる起業家マインドの伝統という、他社が真似することが難しい2つの要素の上に成り立っていることから、ファミリービジネスの持続的な競争力の源となっています。アントレプレナーシップには3つの側面があります。
- 革新性:新しい製品・サービスおよび事業運営慣行に関する研究・開発に投資する傾向
- 積極性:新しい機会を捉え、市場の需要を予想し、競争環境の予測を立てる能力
- リスクテイク:高いリターンをもたらす可能性のある、大きなリスクを取る傾向
日本では「積極性」が38%と最も高く、次に「リスクテイク」が続きます。
アントレプレナーシップを示す3つの側面
ファミリーによるコントロールと影響
継続的なアントレプレナーシップを保持するための2番目の重要な要素は、ファミリーの「社会情緒資産」、すなわちビジネスの所有と経営からもたらされる感情的な価値です。社会情緒資産はファミリー独自の問題の捉え方を表しており、3つの重要な特性(ファミリーによるコントロールと影響力、ファミリービジネスへの帰属意識、感情的愛着)が、彼らの行動によってどのような影響を受けるのかを反映しています。
社会情緒資産の全体的な水準については、日本の回答者の65%が「低い」、35%が「ふつう」と回答し、「高い」は0%となっています。
社会情緒資産の全体的な水準
成功に関する測定
優れた財務成績は、ファミリービジネスにとって重要です。一方で、創業者のビジョンの保持、アントレプレナー主義の文化、責任ある所有者という評判は、いずれも同等に重要な評価基準であり、4項目のパフォーマンス状況によって把握することができます。その4項目とは、非財務パフォーマンス(ファミリーへの忠誠心と支援の気持ち)、社内的な社会的パフォーマンス(革新的で多様性のある雇用慣行など)、対外的な社会的パフォーマンス(環境への影響など)、財務成績です。
日本では、「社内的な社会的パフォーマンス」の水準が最も高い数字(16%)となっています。
パフォーマンスの 4側面
優れたガバナンスによるアントレプレナー的能力の向上
優れたガバナンスは、新たな機会を利用する際に必要なチェック機能とバランスをもたらし、同時に潜在的リスクを認識・管理するため、ファミリービジネスのアントレプレナーシップを高めることができます。
日本では回答者の92%が「正式な取締役会を設置している」と回答していますが、世界では59%という結果になりました。またファミリー会議の設置状況については、日本では27%、世界では24%が設置していると回答しました。
正式な取締役会を設置しているか
英語コンテンツ(原文)
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