持続的成長のためのダイベストメント戦略(上)~日本企業の現在地と将来展望~
従来、海外の市場や労働力を獲得することを目的に積極的にクロスボーダーM&Aを進めてきた日本企業は事業売却(セパレーション)には不得手であると言われてきた。しかし、昨今の事業環境の変化に伴う見通しの不透明感や、従業員や投資家だけでなく消費者やサードパーティ・社会全体へと広がるステークホルダーによる圧力により、大胆なセパレーションに着手する日本企業が目立ち始めている。今号では日本企業のダイベストメント戦略にフォーカスし、近年セパレーションにおいて受け皿として存在感を示しているPEファンドの動静、および企業が持つ技術が高度化する現代における技術・知財評価の要諦を整理した上で、セパレーション巧者への道標について解説する。
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特集:Close-up 1
近年PEファンドを受け皿とする大型カーブアウト案件の増加傾向が顕著である。その背景にはセルサイドである企業側の事業ポートフォリオマネジメントの進展と受け皿としてのPEファンドの習熟があげられる。
対象事業の経営陣・従業員にとってカーブアウトは大企業から独立し、「ベストオーナー」の下で企業グループ内の様々な制約から解放され、成長戦略を実現する機会である。事業の選択と集中は大企業が取り組むべき課題として広く認識されつつあり、PEファンドを活用したカーブアウト案件は今後も増加が予想される。
特集:Close-up 2
日本の製造業においても「事業のベストオーナーは誰か?」という課題に向き合い、非中核事業や不採算事業の売却を進める企業が現れている。一方で、2010年頃よりAI、IoTといったデジタル技術の台頭やオープンイノベーションが契機となり、あらゆる分野で従来技術を置換するネクスト技術Sカーブが登場しており、保有技術の潜在的な価値を説明する難度も高まりつつある。本稿では、事業デューデリジェンス(以下、DD)では見えない深層的な優位性を評価し、売却事業の価値向上をサポートする技術・知財DDの実務をセルサイドの視点に立ち解説する。
特集:Close-up 3
昨今の外部環境の変化を受けて、事業売却(セパレーション)の検討に着手しつつある日本企業が増加している。しかし、セパレーションは日本企業にとって未だ経験の少ない取り組みであるため、その計画段階において、売却のタイミング、売却準備のスピード感の欠如や非効率さなど、いくつかの課題が見られる。セパレーションのリターンを最大化するには、明確な撤退基準、売却前のバリューアップ、強力なリーダーシップなどに加えて、十分なリードタイムを見込んだ上でセパレーションの準備に早期着手することが求められる。
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