社会課題解決のためのタネを育てる Society5.0に向けた大学発ベンチャー・スタートアップ支援
今回は、大学発ベンチャーやスタートアップの研究成果を社会実装していくための制度、求められる支援、期待される人材などについて、長く中小企業・ベンチャー企業政策に携わってきた経済産業省新規事業調整官の石井芳明様にあずさ監査法人の阿部博が話を伺います。
今回は、大学発ベンチャーやスタートアップの研究成果を社会実装していくための制度、求められる支援、期待される人材などについて、長く中小企業・ベンチャー企業政策に携わってきた経済産業省
2021年10月8日の所信表明演説において岸田文雄首相は、新しい資本主義の実現に向けた「成長と分配の好循環」のため、「イノベーションの担い手であるスタートアップの徹底支援を通じて、新たなビジネス、産業の創出を進めます」と述べました。来たるSociety5.0の世界では、医療、環境、SDGsなどの社会課題を解決するソリューションや、DX、モビリティ、ロボットといった技術が、日本の産業を活性化させ、グローバルに戦っていくための力になります。
そこで重要なのが、先進的な技術や知識を有する大学発ベンチャーやスタートアップです。今回は、大学発ベンチャーやスタートアップの研究成果を社会実装していくための制度、求められる支援、期待される人材などについて、長く中小企業・ベンチャー企業政策に携わってきた経済産業省新規事業調整官の石井芳明様にあずさ監査法人のインキュベーション部で大学発ベンチャー・スタートアップへのサポートを行っている阿部博が話を伺います。
インタビュアー=阿部 博
あずさ監査法人
常務執行理事 企業成長支援本部 インキュベーション部長 パートナー
KPMGジャパン
プライベートエンタープライズセクター スタートアップ統轄 パートナー
対談時には感染対策を十分に行い、写真撮影時のみマスクを外しています。
所属・役職は、2021年11月時点のものです。
石井 芳明氏 経済産業省 経済産業政策局 新規事業創造推進室長。2000年、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科卒業(国際経営学修士)。 2012年、早稲田大学大学院商学研究科卒業(商学博士)。 1987年、通商産業省(現・経済産業省)入省。中小企業・ベンチャー企業政策、産業技術政策、地域振興政策等に従事。2003年、経済産業政策局産業組織課、2006年、中小企業基盤整備機構資金支援課、2007年、同ファンド企画課、2008年、大田区産業経済部産業振興課課長、2011年、地域経済産業グループ地域経済産業政策課、2012年から経済産業政策局新規事業室、2018年内閣府科学技術・イノベーション推進事業局を経て、2021年から現職。 |
大学発ベンチャー支援、スタートアップ支援は政府の重要施策
-大学発ベンチャー関連の動きとしては、東京大学、京都大学、大阪大学、東北大学の 4大学にベンチャーキャピタル(以下、「 VC」という)ができ、それから、石井さんが主導された J-Startupや SCORE、 STARTなどが始動しました。近年、日本のベンチャー育成はかなり進んできたように思えますが、石井さんとしてはいかがでしょうか。
石井:今は日本でも、スタートアップがとても盛り上がってきました。リーマン後に1,000億円を切っていた投資額は5,000億円超まで増え、時価総額が1,000億円を超えるユニコーン企業も増えてきています。カウントしたところ、28社でした。短期間で大きく伸びる企業も出てきています。一方で、アメリカや中国も非常に伸びています。ですから、グローバルに対応するためには、日本ももっと伸ばさなければいけない。こうした状況において、日本のグローバルでの勝ち筋は、やはり大学にあります。
アメリカの経済成長を見ると、ビッグ・テックが引っ張っています。しかし、これらをを除いた株価の伸びは、日本とアメリカとで大きな差はありません。つまり、アメリカではビッグ・テックのようにグッと成長してプラットフォームを取っていく企業が経済を支えているということです。現状、少なくともIT サービスプラットフォームの戦いの勝敗はすでに決しています。これは正直、認めざるをえないところです。そこで次の戦いです。これはインターネットとリアルが融合するSociety5.0の世界での戦いになってくるでしょう。そして、そこでの勝ち筋はTechです。リアルとつながるTech、リアルをより良くするTechだと思います。
技術は大企業の研究所などにもありますが、やはり多くを大学が持っています。中国の追いつきはすごいものがありますが、特許の取得件数、研究開発、研究の論文数などは、日本は国際的に非常に優位に立っています。その一方で、大学の研究成果の事業化や社会実装が進んでいるかというと、その流れはまだまだです。それを推進するためには、研究成果を実装するためのビークルとして、大学発ベンチャーやスタートアップがすごく重要です。
-これまで十数年、政府は大学発ベンチャーやスタートアップの支援を続けてきました。岸田新政権への政権交代は、これにどのような影響があるでしょうか。
石井:大学発ベンチャー支援、スタートアップ支援は安倍政権時代からの政策で、岸田新政権になってからも変わらず重大な柱として位置付けられています。最近の動きとしては、大学のスタートアップを応援するための起業家教育を推進する次世代アントレプレナー育成事業(EDGE-NEXTプログラム)が進んでいます。それから、事業の立ち上げを支援するSCOREやSTARTもあります。これらは科学技術振興機構が提供するプログラムで、SCOREで起業のための知識やノウハウを得てもらい、STARTで顧客ニーズの把握、技術の事業化、ネットワークの構築を支援して、起業・成長段階で出資事業のSUCCESSにつなぐというものです。
これらはいずれも、文部科学省主導による大学発ベンチャーやスタートアップの支援活動です。そして4大学のファンドですが、これは1,200億円の規模で作られました。政策的に大学をしっかりと応援しようという意思表示です。現在は、さらにそれを超えて10兆円のファンドを作る動きも出ています。
最近は、学生の職業選択における選択肢として、いわゆる大企業だけでなく、スタートアップにも意識が向き始めています。いい流れにはなりつつあるということでしょう。しかしこれも、東京大学、大阪大学、京都大学あたりの一部の話で、地方大学ではまだまだです。ですから、私としてはさらに支援を強化しなければいけないと考えています。
スタートアップ創出の鍵は、技術と経営の両方を理解できる人材の流動性にある
-KPMGのインキュベーション部では、社会課題を解決するようなアカデミアからのベンチャー企業の創出を支援しています。私たちのような民間の会計ファームだからこそできることがあるだろうということでスタートし、ここまできました。その中で、今石井さんがおっしゃった課題と成果は私も非常に思うところです。なかでも大きな課題の 1つに、日本は経営者や CEO、または事業開発をし、海外で事業をまとめていくような人材が少ないのではないかということがあります。それに関して、石井さんはどう思われますか。
石井:おっしゃるとおり少ないと思います。技術面と経営面の両方がわかる人は、特に大学発ベンチャーでは本当に少ない。これは、大きな課題だと思っています。大学発ベンチャーの立ち上がりが少ない理由の1つは、まさに人材にあります。研究者の話を正確に理解でき、その技術に関する競争環境を鑑みて、打ち手を組み上げることができる。また、必要に応じてファイナンスや人材、経営資源を積み上げることができる。そういう人材が必要です。
-海外には経営者を生業としている方たちがいることからも、日本と海外のスタートアップとである程度の差があるのはわかります。しかしそれ以上に、日本と海外のスタートアップには決定的な違いがあると思います。この違いはどこから来ると思いますか。
石井:人材の流動性だと思っています。たとえばアメリカでは、エンジニアリングスクールを出て修士号や博士号を持っている人が、ビジネススクールでビジネスを学んだりします。VCにも技術関係の博士号を持っている人がいますしね。人材が流動的で、いろいろなキャリアが組み上げることが可能な社会なのです。
加えて、政府も意識して研究者の経営的なリテラシーを上げ、研究成果の社会実装への道筋をつけようとしています。アメリカ国立科学財団(NSF:National Science Foundation)などでは、研究者向けに経営リテラシー向上プログラムを提供しています。こうしたことも大きいのではないでしょうか。
-日本では、大企業に就職しても、そこを辞めて起業する若者が増えてきました。また、大企業でも出向や転籍を促進する取組みが活発になってきています。政府として、大企業側からのそういった人材の流動化を後押しするにはどうしたらいいと思いますか。
石井:たしかに、今般3 次選定を行ったJ-Startupでは成長スタートアップのCxOや経営陣のキャリアが変わってきたと感じました。特に目立ったのは、大企業を辞めて起業する人が増えてきたということです。また、巨額の資金調達を実現するようなスタートアップには、経営陣に投資銀行出身の人材が必ず入っている点も変化の1つですね。ただ、これはまだSaaS系の企業など一部に限られ、大きな流れにはなっていないように感じます。
こうした企業に対し、大学発ベンチャーや、リスクが大きくてフライするかどうかわからないようなTech系のスタートアップには、なかなか大企業出身の人材は流れ込みにくいのが現状です。ですから、Tech系がもう一段成長するための人材なり、資金なりの支援が必要だと思います。事業化が見えてくれば、大企業の人材ももっと流れ込むのではないかと思います。
自治権のある大学でスタートアップを創出していくには、総長のリーダーシップが 大きく影響する
-世界で戦っていくにあたり、海外でモノ売りができるほど語学力が堪能で、販売ルートを開拓・確保できるような人材が、日本には極めて少ないような気がします。そこで J-Startupのような取組みが重要になりますが、 J-Startupの活動を通じての成功へのプロセス、成果の先に目指すところについて、石井さんはどのようにお考えでしょうか。
石井:J-Startupは、役人ではなく民間の目利きの力で、本当に世界で活躍するポテンシャルのある企業を選ぶのを目的としています。これまで選んだスタートアップは188 社(2018 年の第1次選定で92社、2019年の第2次選定で49社、今回の第3次選定で50社)ですが、第1次と第2次では成長したスタートアップが多く、11社が新規上場しました。ユニコーン規模になっている企業もあり、時価総額5.8兆の企業群ができています。支援がなくてもオーガニックに発展していくスタートアップもあれば、政府の手厚い支援で伸びているスタートアップもあり、それなりの効果が上がっています。
今回の第3 次選定では、医療、デジタルトランスフォーメーション(DX)、モビリティ、ロボット、環境、SDGsなど、日本の勝ち筋だと思われる、または社会的価値の提供が必要だと思われる領域を選定しました。成功例ができると、後に続く人たちも出てきますから、こうしたことはどんどんやっていきたいと思っています。
-成功例を作るということが1つの大きなポイントということですね。
石井:そうです。そういう流れができてきています。ファーストペンギンとして道を切り拓き、成功した事例があるということが大事なのです。もちろん、そこには大きな困難があるわけですが、それを乗り越えていった事例が増えないといけません。
-先程、「手厚い支援で伸びるスタートアップもある」とおっしゃいました。大学関係の研究では、やはりIT、AR、バイオヘルスケア系などが多いですが、日本が今後勝ち残っていくためにはヘルスケアとTech系が必要だと、私は思っています。VCから見ると、この2つは資金も時間も必要な反面、成功確率は高くない。最近のIPOでヘルスケア系の時価総額はさほど大きくないことからも、資金調達は結構厳しいように見えます。そうなると、VCでは支えきれないような気がします。
石井:おっしゃるとおりです。実際、過去にも、最近もそうした事例がありました。VCが言うには「実装までの期間を読み違えた。思った以上に時間がかかってしまった」と。つまり、VCが早く投資しすぎたということです。こうした場合には、VCが成功確率を見極めてから投資するというのが1つの手ですが、見極めるまでの期間にも支援が必要です。そこは、おそらくグラント(補助金)、いわゆるギャップファンディングが担うことになるでしょう。グラントの強化で、ある程度実装が見えた段階でVCが入っていけるように資金供給するのが大切だと思います。
一方、VC側にも、もう少し長い期間のファンドが必要かもしれません。通常のVCファンドは10年、IT系ではもっと短くなります。でも、10年では育たたないことも少なくない。ですから、技術を信じて15年程度、場合によってはもっとロングで投資をするVCファンドが増えてほしいと思います。
-4大学に対する国からの補助金で、 1号ファンドはほぼ 終わり、今、2号ファンドが動いています。その2号ファンドの半分は民間企業からで、その枠内では他の国立大学にも投資できるようになっています。ここでは地方の国立大学に対する投資の案件を積極的に見極めているということで、非常にいいことだと思っています。しかし、次の3号ファンドに国からの補助金がなく、全額民間から調達するのだとしたら、それは民間のVCと変わりがありません。
たとえば、東北大学ならば素材、京都大学ならばバイオ系やiPSが強いといったように、各大学の研究はそれぞれ違います。であるなら、その大学の研究に合った独自のファンドでないと、大学の色を出せるようなギャップファンドがなくなってしまう気がしますが、いかがでしょうか。
石井:大学が意識してスタートアップ支援に動くかというのは、総長の裁量がとても重要になってきます。たとえば、名古屋大学は4大学のファンドからは外れましたが、民間のVCを呼びこみ、起業家育成プロジェクトTongali ※を動かしています。これは、まさに総長が牽引しているからです。今後は、総長のリーダーシップによって変化が生まれてくるでしょう。よりスタートアップの研究成果が社会実装されやすくなるような、各大学の強みを応援するような仕組みができてくることを期待しています。
日本のスタートアップがスケールしない 2つの理由
-日本のスタートアップは、あまりスケールしていません。数千億規模のユニコーンはあるかもしれませんが、海外のように1兆円超えまでスケールするスタートアップは少ないように思えます。今後日本のスタートアップがスケールしていくためには、どのような取組みが必要だと思われますか。
石井:スケールしない理由としてまず、レイターステージのファイナンスの規模の違いがあります。そもそもVCのファンドサイズ自体、日本では、大きいファンドでも数百億円なのに対し、海外では数千億と規模がまったく違う。その大きなファンドがレイターステージで大きな投資をし、さらに投資銀行や機関投資家が入ってくるような流れができています。ですから、米SpaceX社が7~8兆、中国ByteDance社が14兆といったように、ものすごい時価総額になるわけです。やはりそれは、上場前に大きなファイナンスを実現しているからだと思います。
日本はプレーヤーがまだ少ない状態ですから、まずはVCファンドのサイズを大きくする必要があります。そのためには、年金基金含め機関投資家からの出資を増やさなければなりません。そういう意味では、創業時からグローバル市場、成長するエクイティストーリーを描けるスタートアップが増える必要があるのですが、現状、課題を抱えています。それは、マザーズ市場に上場するとスタートアップの成長が止まってしまうことです。経営者は「上場後はリスクが取れない」「大きな投資をすると、株価が下がってしまう」という悩みがありますから、上場の仕組みや上場後のルールなど検討の余地があります。
-確かに、マザーズ上場で株式公開し、信用が広がって、組織として大きくなる。問題はその先ですよね。
石井:M&Aが少ないことも課題です。スケールしていくには、M&Aをもっと増やさないといけない。そのためには、M&Aをしやすい環境、場合によっては制度が必要になるでしょう。
-そうですね。特 に 大 学 発 ベンチャーはIPOする確率が非常に低い。そうなると、VC側としても投資するわけにはいきません。結局、M&Aで買い手がつきそうかどうかで投資を判断することになります。投資家もそうですし、経営者もそこを意識することは大事だと思います。
石井:そこは大事ですね。たとえば、アメリカの起業家などには、起業した時から「M&Aがゴールだ」と明言する方もいますが、日本ではあまり意識されていません。大企業側も、どんどんM&Aを仕掛けていくような動きが進んでほしいと思います。
-大企業ではコンプライアンス上、投資もできないし、M&Aもできないことがあります。それならば、連結対象外でベンチャーを作るという形で進めることもできそうですよね。
石井:いわゆる出島を作るという形ですね。それはありだと思います。組織形態として外に出島を作ってやるというのも1つの方法ですし、既存の事業の中で規制のサンドボックスや新事業特例といった制度を活用しながら、スタートアップと連携していくというものあると思います。
スケールするには、 研究室の横断的協力関係による価値創出が不可欠
-日本のバイオ会社をM&Aした海外 のある 投資家が、「日本のスタートアップは1つの特出した技術でマザーズ上場を狙っている会社が多い」と言っていました。でも、1つの技術で上場しても、その後が続きません。成長のタネがいくつもあるような形にしないといけないと思うのですが、いかがでしょうか。
石井:それはすごくあると思います。たとえばバイオや創薬系でいうと、パイプラインがきちんとできていない。日本もそうですが、海外のメガファーマーが日本のバイオベンチャーに対して投資しにくい理由として、パイプラインが貧弱であることを挙げることが多いです。
ものづくりでも、要素技術はあるけれども、それで1つのユニットを作ることができるかというと、それができない。いろんな素材や技術はあるけれども、それを1つの形でまとまった価値にできる状況になっていません。裏返せば、そこをうまくつなげていくことによって、伸びるベンチャーが出てくるのではないかと思っています。
やはり、大学の研究室が縦割りになりすぎているのは問題です。1つの研究室ですべてを作ろうとするのではなく、他の研究室と組めば、もっといい形になるでしょう。海外では、オープンイノベーションでいろいろな要素技術を組み合わせることに抵抗がありません。M&Aで技術を取り込むというのもありますが、もっと前の、研究室や研究の段階で結合させて会社を作る。そういうことも進むといいのではないかと思っています。
-技術はたくさんあるけれども、横のつながりがないのでまとまらない。仮にVCが入り、それぞれが企業として上場しても、バラバラに動いているので、結局グローバルで戦えるような成長はできないということですね。
石井:まずは、研究室が横断的に協力しあうという空気を作ることが大切です。プラスして、そういう協力関係をプロデュースして価値を作り出す。バイオロボット、グリーンテックといったように、特定の分野ごとに技術を俯瞰して、それらをつなぎ合わせて価値創造できるような人材、つまり、プロデューサーが必要でしょう。本来、JSTなどがそれをやるべきなのでしょうが、民間ベースからもそうした人材が出てくることを期待しています。
-社会実装には、大企業の関与も重要だと思います。日本の大企業には優秀な研究者が多いですし、たとえば新規事業開発の担当者なんかは、プロデューサー的な役割に適していると思うのですがいかがでしょうか。
石井:そうですね。研究者と営業系の人材の両方が活かせるチーム作りが大切です。こうしたことに大企業にはぜひともリスクを取ってチャレンジしてほしいですが、難しいかもしれませんね。得てして新事業は、成功ありきで、失敗しないためにはどうすべきか、というのが先にきます。プランも、VCのように、マルチプルで勝負するという考え方はあまりない。それが課題ですね。VC投資は10年の投資で1本大ホームラン、2,3本ヒットなら成功になります。大企業の新事業創出の部門を明確に分けて、このようなチャレンジを進めるべきと思います。
-日本はベンチャー企業を作っても、失敗を許容せず、敗者復活もありませんからね。一方、投資の場合もどうしても失敗、成功ということになります。そこで、たとえば寄付みたいな形で資金を拠出し、ある程度成長したらそこから投資に切り替えるというスキームも考えられます。
石井:スタンフォード大学やハーバード大学などでは、寄付金を運用するエンダウメントファンドがすごく大きな金額になっているそうです。エンダウメントファンドではVC経由でスタートアップにも大きく投資しています。また、エンジェル投資家の間では将来的に株式転換できるコンバーティブル・エクイティも、スタートアップの資金調達のため使われます。
日本でも、早稲田大学のウエルインベストメントや慶應義塾大学の慶應イノベーションイニシアティブといったファンドがOBOGや大学関係者の資金で活発に動いています。米国からは遅れますが、私学でも支援の動きが拡大しています。大学発ベンチャーのシードがどんどん成長するのを期待しています。
-国公立大学だけでなく、私学からも大学発ベンチャーやスタートアップを創出することは十分に可能ということですね。これからどのようなスタートアップが誕生するか、楽しみですね。本日はありがとうございました。
インタビュアー(写真左)
阿部 博
あずさ監査法人
常務執行理事 企業成長支援本部 インキュベーション部長 パートナー
KPMGジャパン
プライベートエンタープライズセクター スタートアップ統轄 パートナー
有限責任 あずさ監査法人に入社して以来、主に金融商品取引法監査・会社法監査をはじめ、株式公開支援業務、デューデリジェンス業務などに従事。 現在は監査業務の他に、企業成長支援本部 インキュベーション部長として大学発ベンチャーへのサポートや、オープンイノベーションのイベントを推進している。
また、KPMGジャパンの活動としてプライベントエンタープライズセクター スタートアップ統轄を担当し、スタートアップの発掘・育成支援に従事している。