コロナ禍によって、企業は「働き方」の大きな変化を余儀なくされています。今後1~2年におけるニューリアリティを見据えた際に、リモートワークを継続すると答えた日本企業も非常に多くなっています。こうした環境においては上司が部下の仕事ぶりを側で見て支援する、評価するということも難しい状況であり、個々の業務を明確化、分担し、主体的かつ自律的に各自に任せるマネジメントスタイルが求められるようになってきています。
一方で昨今のDX(デジタルトランスフォーメーション)による革新を背景に、あらゆる業界・業種でデジタル化への対応が進んでおり、AIの活用等を含めて人事領域もその例外ではありません。
多様な社員を動機付けて活性化させる役割を担い、不確実性を増している環境下でも力強く生き残っていくために、人事部門はどうあるべきなのでしょうか。
本調査では、優れた人事機能を持つ企業をパスファインダーと位置付け、その特徴を調べることで、日本の人事部門が価値提供部門へと進化するためのポイントを探ります。
今回の調査は人事部門の現状と未来への展望、そしてその存在意義を明らかにすることを目的に実施し、世界中のHRリーダー1,288人の回答をまとめたものです。
本レポートが、優位性を生み出す人事戦略の立案等につながり、人事部門を価値提供部門へと変革する一助になれば幸いです。

目次

COVID-19による人事部門への影響
日本の人事部門が価値提供部門となるための4つのポイントと変革のステップ13
・データ活用
・ワークフォースシェイピング
・チェンジングカルチャー
・EX(エンプロイー・エクスペリエンス)

COVID-19による人事部門への影響

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を契機として、日本政府の推進もあり、日本企業の多くがリモートワークを実施しています。しかし、それに伴い、新たな課題も出ているのが現状です。
With/Afterコロナにおける人事部門の在り方はどのように変化していくのでしょうか?
本調査から、今後もリモートワークを継続すると考えている日本企業が大部分である一方、コロナ禍への対応が遅れていると認識していることがわかります。

Q 今後1~2年におけるニューリアリティを見据えた際に、リモートワークを継続しますか?

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※一部またはすべての従業員がリモートワークを継続した企業の合計

Q COVID-19の影響への対応という観点で、現在の自社人事部門の状況を最もよく表していると思われるものを選択してください。

HRサーベイ2021_ 2

また、日本企業の人事部門の立ち位置に関する設問では、「付加価値を生む存在ではなく、未だに管理者とみなされている」との回答が全体の60%を占め、昨年と同様の結果となりました。

日本の人事部門が価値提供部門となるためのポイントと変革のステップ

人事部門が価値提供部門となるための4つのポイント
KPMGは、ニューリアリティの環境下において人事リーダーがフォーカスすべき領域を抽出し、先進的な企業に変わるポイントを明らかにしました。また、この指標を日本企業用にカスタマイズし、未だに管理部門とみなされている日本の人事部門が価値提供部門となるためのポイントとして、以下の4つを提示しました。

  • 将来の組織と要員に関する予測・戦略立案を担う「ワークフォースシェイピング」
  • 事業戦略や外部環境に沿った組織風土のデザインと改革をリードする「チェンジングカルチャー」
  • 従業員個々人の経験から働きがいをデザインする「EX」
  • これらの3点にデータドリブンな施策を可能とする「データ活用」

データ活用

本調査の結果によると、回答した日本企業のうち40%が将来の労働力・人材要件の予測が人事部門にとって最も重要な取組みと回答し、37%が将来的な人材要件の予測と労働力の最適化が人事部門に必要と思われるスキル・能力・行動だと回答しています。
これらの取組みはデータ活用に直接言及してはいませんが、データを活用することを念頭に置いた項目となっており、日本企業のデータ活用の関心の高さを表しています。

ワークフォースシェイピング

「ワークフォースシェイピング」とは、「目的に沿った柔軟な労働力の形成」のことであり、その重要性は著しく高まりつつあります。
DXや、ギグワーカー・フリーランスといった新しい雇用形態、AIやロボットによる代替労働など、これまでにない変化に対応すべく、中長期視点に基づき、幅広い雇用形態や労働力を想定した柔軟なワークフォースシェイピングが求められます。
しかし、調査結果からは、多くの日本企業では課題意識はあるものの実行に移せていない、もしくは実行へのスキルが足りていない状況が伺えます。

チェンジングカルチャー

本調査の回答企業の97%以上がリモートワークを継続する、との結果が出ています。リモートワークをきっかけとした働き方の多様化に加え、採用においても入社後の職務を限定したジョブ型雇用が導入されるなど、さまざまな変化が想定される環境において、変化に耐えうる組織の変革が必要となっています。
しかし、人事部門の重要な取組みとして「組織風土の強化による変化に対応できる体制制度」を選択した企業は全体の約36%となっており、優先度の低い結果となっています。

EX(エンプロイー・エクスペリエンス)

EXと企業業績との相関性は本調査にも表れています。
企業が魅力的なEXを提供し従業員の企業に対するエンゲージメントが高まることで、従業員のパフォーマンスが向上し、顧客に対して付加価値の高いサービスを提供することができます。その結果、顧客のカスタマーエクスペリエンス(CX)が向上して、顧客満足度が高まります。顧客はそのような企業を評価し、製品やサービスをリピートするようになるため業績が上がります。
今後の人事部門にとって最も重要な取組みに、「従業員体験と従業員幸福度を維持する対策」を選択した企業は55%でしたが、EXの結果指標であるエンゲージメントは低いのが現状です。

 

※レポートの全文は、PDFをご覧ください。

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