会社計算規則の改正ポイント 第3回
旬刊経理情報(中央経済社発行)2021年1月1日特大号に、株式交付、取締役への株式報酬等の取扱いは「会社計算規則の改正ポイント」に関するあずさ監査法人の解説記事が掲載されました。第3回は、「株主総会資料の電子提供制度の新設に伴う改正」について、解説します。
旬刊経理情報(中央経済社発行)2021年1月1日特大号に、株式交付、取締役への株式報酬等の取扱いは「会社計算規則の改正ポイント」に関するあずさ監査法人の解説記事が掲載されました
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この記事は、「旬刊経理情報 2021年1月1日特大号」に掲載したものです。発行元である中央経済社の許可を得て、あずさ監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。
株主総会資料の電子提供制度の新設に伴う改正
改正会社法により株主総会資料の電子提供制度が新設された(会社法325の2~325の7)。取締役が株主総会資料を自社のホームページ等のウェブサイトに掲載し、株主に対し当該ウェブサイトのアドレス等を株主総会の招集の通知に記載等して通知した場合には、株主の個別の承諾を得ていないときであっても、取締役は株主に対し株主総会資料を適法に提供したものとする制度である。
会社計算規則では、これに基づき電子提供措置をとる旨の定款の定めがある場合において、連結計算書類に係る会計監査報告または監査報告があり、かつ、その内容をも株主に対して提供することを定めたときは、書面の提供等に代えて当該会計監査報告等に記載され、または記録された事項に係る情報について電子提供措置をとることができるとされている(会計規134(3))。
その他の会社計算規則の改正
2020年12月4日に、法務省は、「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令案」に関する意見募集を開始した。意見募集期限は2021年1月6日である。改正の内容は次のとおりである。
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公布の日からの施行予定とされるが、令和元年改正会社法関連の改正規定は会社法の施行の日(2021年3月1日)からの施行予定とされている。その他失効や経過措置については後述する。
(1)ウェブ開示によるみなし提供制度の対象拡大
ウェブ開示によるみなし提供制度とは、定時株主総会の招集の通知に際し株主に提供する事業報告および計算書類に表示すべき事項の一部について、定時株主総会に係る招集通知を発出する時から定時株主総会の日から3か月が経過する日までの間、継続してインターネット上のウェブサイトに掲載し、当該ウェブサイトのURL等を株主に対して通知することにより、当該事項が株主に提供されたものとみなす制度である(会施規133(3)、会計規133(4)等)。このウェブ開示によるみなし提供制度の適用を受けるには、ウェブ開示をする旨の定款の定めが必要である。
2020年5月15日、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、決算・監査の遅れの影響を直接受ける計算書類や決算数値、新型コロナウイルス感染症の影響に関連する事項をその内容に含む事業報告の内容について、書面提供に必要な時間的余裕を確保することを目的として、特例措置としてウェブ開示の対象に加えるための会社法施行規則および会社計算規則の改正が行われた。これにより、施行日である2020年5月15日から6ヵ月以内に招集手続が開始される定時株主総会に係る事業報告および計算書類の提供に限り、これまでウェブ開示が認められていなかった次の事項について、一定の要件を満たすことを条件として、時限的にウェブ開示が認められた(会施規133の2、会計規133の2)。
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ここでいう「一定の要件」とは、株主の利益を不当に害することがないよう特に配慮しなければならないことである。当該特例措置は時限的なものであり、2020年11月16日に失効している。
今般公表された改正案によれば、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、あらためて2020年5月の改正と同様の改正を行うことが提案されている(会施規案133の2、会計規案133の2)。施行期日は、前述のとおりであるが、当該規定は2021年9月30日限り、その効力を失うこととされている。ただし、同日前に招集の手続が開始された定時株主総会に係る事業報告および計算書類の提供については、なおその効力を有するものとされる。
(2)監査基準の改訂を受けた改正
2020年11月6日、企業会計審議会は、「その他の記載内容」等に関する監査基準の改訂を行った。「その他の記載内容」とは、監査した財務諸表を含む開示書類のうち当該財務諸表と監査報告書とを除いた部分の記載内容である。改訂監査基準において、「その他の記載内容」について、監査人の手続を明確にするとともに、監査報告書に必要な記載を求めることとされた。
具体的には、監査人は、「その他の記載内容」を通読し、「その他の記載内容」と財務諸表または監査人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうかについて検討することが明確にさた。また、「その他の記載内容」と財務諸表または監査の過程で得た知識との間の重要な相違や、財務諸表や監査の過程で得た知識に関連しない「その他の記載内容」についての重要な誤りに気づいた場合には、経営者や監査役等との協議など追加の手続を実施しても当該重要な誤りが解消されなければ、監査報告書にその旨およびその内容を記載することとされた。
これを受け、会計監査人の会計監査報告の内容として、「監査意見(会社計算規則126条1項2号)があるときは、事業報告及びその附属明細書の内容と計算関係書類の内容又は会計監査人が監査の過程で得た知識との間の重要な相違等について、報告すべき事項の有無及び報告すべき事項があるときはその内容」を追加するほか、所要の整備を行うことが提案されている(会計規案126(1)五)。これにより、監査人の会社法監査における「その他の記載内容」は、事業報告およびその附属明細書であることが明確にされるとともに、監査基準により「その他の記載内容」に関して求められる記載が、会社法監査においても要求されることが明確化される。また、それは監査意見(会計規126(1)二)があるときに限られる、すなわち、意見不表明の場合には「その他の記載内容」に関する追加はないとされていることは、監査基準と整合的である。経過措置についても、2022年3月31日以後に終了する事業年度に係る計算関係書類の会計監査報告について適用するとされるとともに、2021年3月31日以後に終了する事業年度からの適用も可能とされる見込みであり、監査基準と整合的である。
なお、金融商品取引法監査に関しても、監査報告書の記載事項等に関する改正が行われることが見込まれるが、現時点(2020年12月11日)では関係府令等の改正案の意見募集は行われていない。
執筆者
有限責任 あずさ監査法人
パートナー 公認会計士
和久 友子(わく ともこ)