【第10回~TCFDを旅する~】TCFDと会計基準:IFRSとの関係
TCFDとIFRS(国際財務報告基準)との関係について解説します。
TCFDとIFRS(国際財務報告基準)との関係について解説します。
本文中の意見等に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。
1. はじめに
TCFDのフレームワークでは、本シリーズ第7回でお伝えしたようにガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標について気候関連リスクに係る11項目を開示することになります。
同フレームワークは、年次の財務報告での開示を原則としていますので、我が国では有価証券報告書への記載が原則と解釈されます。
有価証券報告書は、ガバナンスやリスク情報などを含む前半部分(記述情報=非財務情報)と(連結)財務諸表を含む後半部分(財務情報)とに分かれ、会計監査の対象は後半部分となります。上記の4項目はいずれも記述情報に記載されるものと理解されていますが、今回のテーマである会計基準:IFRSは、それに準拠した(連結)財務諸表が後半の財務情報として記載されます。
2. 気候変動リスクに関連するIFRS
(1)ニック・アンダーソン氏の書簡
IFRSを開発するIASB(国際会計基準審議会)のボードメンバーであるニック・アンダーソン氏は、1つの考え方として「IFRS Standards and climate-related disclosures」(2019年11月)を公表しました。
その目的は、重要性の観点をふまえ、既存のIFRSがどのように気候変動リスクなどの新たなリスク情報に対応できるかを論じることにあり、1つの考え方を示しています。
(2)気候変動リスクに関連するIFRSの例示
以下のように例示されていると思われます。
IFRS | 基準名称 | 気候関連リスクに重要性がある場合に想定される主な影響と開示例 |
---|---|---|
IAS1 | 財務諸表の表示 | 投資家等の意思決定に影響する場合の開示 例:資産の減損などにおいて気候関連リスクを考慮したか否か、どのように考慮したか |
IAS36 | 資産の減損 | 有形固定資産、無形資産、のれん等の資産の減損に関する開示 |
IAS16 IAS38 |
有形固定資産 無形資産 |
耐用年数への影響 |
IFRS13 | 公正価値測定 | 資産の公正価値算定に影響した気候関連リスク |
IFRS9 IFRS7 |
金融商品 金融商品:開示 |
銀行などの貸倒引当金への影響 |
IAS37 | 引当金、偶発負債及び偶発資産 | 気候関連リスクに関連した引当金の計上など |
3. 今後
上記は1つの考え方であるとともに、重要性の有無に影響されます。
気候関連リスクに関連した財務情報及び非財務情報の開示動向を慎重にモニタリングする必要があります。
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※ GSDアプローチとは、Gap analysis(TCFD最終提言とのギャップ分析)、Scenario analysis(シナリオ分析)、Disclosure analysis(開示内容・手法の妥当性分析)を指します。
執筆者
KPMGジャパン
コーポレートガバナンスCoE/TCFDグループ
テクニカルディレクター 公認会計士 加藤 俊治