学校法人の計算書類の見方 第3回:貸借対照表及び注記事項
平成27年度の学校法人の計算書類の様式変更における、貸借対照表及び追加された注記事項について解説します。
平成27年度の学校法人の計算書類の様式変更における、貸借対照表及び追加された注記事項について解説します。
ハイライト
貸借対照表及び注記事項の見方のポイント
見方のポイントは3つあげられます。
- 貸借対照表について、「特定資産」区分の新設等により、決算書が見やすくなりました。
- 第4号基本金に相当する資金を有していない場合には、経営状況に問題がある可能性が高いため、その旨と対応策を計算書類に注記することが義務付けられました。
- 第4号基本金関係の注記以外にも決算書を利用しやすくするための付表及び注記事項が追加されました。
貸借対照表
貸借対照表は、年度末における資産、負債、純資産(基本金、繰越収支差額)の状態すなわち財政状態を表示するものです。今回の改正で、「特定資産」、「純資産の部」の区分が新設されました。
(1)特定資産
固定資産の中科目として「特定資産」が新設されました。基本金に対応する資産は「第2号基本金引当特定資産」、「第3号基本金引当特定資産」として表示されます。
特定資産残高により、将来の設備投資のための積立や退職金の支給のための積立がどの程度準備されているかを把握できるため、現在の資金収支状況及び今後の設備計画等と合わせて将来の資金収支状況を見込む上で、重要となります。
(2)純資産
外部資金を「負債の部」、自己資金を「基本金」と「繰越収支差額」と合わせて「純資産の部」として表示することにより、資金調達源泉が明確化されました。
付表及び注記事項
(1)基本金組入計画の集計表
第2号基本金および第3号基本金の組入計画表について、組入計画が複数の場合には、集計表を作成することになりました。このため、貸借対照表の第2号基本金および第3号基本金残高の内容が明確になりました。
(2)第4号基本金関係の注記
「恒常的に保有すべき資金の額」として第4号基本金の計算および組入れは実施されていましたが、「相当する資金の保有の有無」については記載を求められていませんでした。新たに注記事項として記載されることになりました。
なお、「第4号基本金に相当する資金を有している場合」でも注記の省略はできません。
「第4号基本金に相当する資金」を有するかの判定では、短期借入金により第4号基本金に相当する資金を調達している場合でも「有している」と判定されます。このため、「第4号基本金に相当する資金を有していない場合」の注記がされる場合は、借入金をしても資金が不足している経営困難な状況が想定されるため、継続的に記載されている場合には、継続性に疑義がある学校法人として見られる可能性があります。
(3)有価証券の時価情報
保有する有価証券の種類別の明細表も注記事項に追加されています。これにより、学校法人がどのような種類の有価証券を運用資産として保有しているかを把握することができるようになりました。
(4)学校法人間取引
学校法人間取引が注記事項に追加されました。このため、従来、関連当事者取引に該当しないため注記対象外であった、学校法人間の取引がある場合は、注記対象となります。学校法人間に財政的な支援状況がある場合、当該注記によりその事実を把握することができるようになりました。