近年の傾向として、これまでのPL偏重となっていた経営管理から投下資本に対するリターンを意識した経営が強く求められるようになっています。投資家から見た投下資本に対するリターンは自己資本利益率(以下、ROE)で表されますが、ROEには財務レバレッジも構成要素に含まれるため事業の稼ぐ力を正しく評価することはできません。企業価値向上に最も重要となる本業の稼ぐ力は投下資本利益率(以下、ROIC)で評価することができます。
ROICを経営管理に導入する企業が大きく増加していますが、中身を見てみると全社でROICを算出・評価しているのみで、事業評価や事業ポートフォリオマネジメント、投資管理にまで落とし込めている企業はまだ多くはないのが実状です。自社株買いや財務レバレッジによる一過性の取組みではなく、中長期を見据えて永続的に企業価値を向上していくためにはROICを経営管理のPDCAに落とし込んでいくことが重要となります。
KPMGは、ROIC経営導入によくある課題に対して、ROIC経営の検討フレームワークを用いて各論点のつながりを意識しながら全体の枠組みを整理して経営管理PDCAに落とし込み、運用定着化まで支援します。
ROIC経営導入によくある課題
ROIC経営を導入する企業では、これまでのPL偏重の経営管理からの変革が求められることから、さまざまな課題があり、自社のみでの推進は難しい局面があります。
【ROIC経営導入における課題】
(1)事業ポートフォリオマネジメント |
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(2)最適資本構成 |
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(3)ROIC目標と業績評価 |
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(4)投資管理 |
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ROIC経営の検討フレームワーク
ROIC経営の検討論点は多岐にわたりますが、(1)事業ポートフォリオマネジメント(2)最適資本構成(3)ROIC目標と業績評価(4)投資管理の4つの主要論点について資本コスト(WACC)を基軸につながりを意識しながら全体の枠組みを整理していくことで“手戻り”を防止するとともに、マネジメントから事業部・現場に対してもぶれることなく説明することが可能となります。
【ROIC経営の検討フレームワーク】
上記のROIC経営の検討フレームワークをべースに各主要論点の方針に基づき経営管理PDCAの運用方針とオペレーション、会議体やレポーティングを実務に落とし込み運用していくことが求められます。特に経営管理PDCAにおいては、資本コストに基づいた事業ポートフォリオマネジメントによる事業の選択と集中の方針とハードルレート(資本コスト+α)に基づく事業投資の入口と出口(撤退)の判断が重要となります。
ROIC経営の導入・運用上のポイント
ROICは本業の稼ぐ力を評価することができる優れた指標であるものの万能ではありません。特に、投資を抑制して将来の成長の可能性を阻害する縮小均衡リスクや、過度に“率”の向上を追い求めることで資本収益性は改善するものの企業価値の“金額”が減少するリスクが考えられ、成長が停滞しないように中長期での目標設定、ほかの成長性KPIや“金額”を表すKPIも併用しながら進めていく必要があります。
また、掛声倒れ(形骸化)とならないように事業側への啓蒙活動や経営データ可視化を行うことも重要なポイントです。
KPMGによる支援内容
ROIC経営導入のアプローチは企業の置かれている状況や課題感によって異なります。何から始めればよいかわからないケースでは「ROIC経営のアセスメント」、事業の資本収益性がわからない場合には「事業別ROICのトライアル算出」を迅速に行うことで数字を基に客観的に事業の財務実態を把握し、気づきや課題を浮き彫りにすることが可能です。
また、資本コスト算定や投資意思決定基準の再検討、事業部KPI設定など課題が明確な場合には本格的にプロジェクトを立ち上げ、個別論点の方針検討から現場の実務浸透まで伴走するなど、企業の課題に応じてスコープや支援形式など柔軟に対応することが可能です。