メガトレンドが複合的に絡み合い、急激な環境変化が起こり得る現代において、想定外の事象が発生することに起因するリスク、いわゆる「エマージングリスク」に対処することが重要な経営課題となっています。エマージングリスクが企業の存続・成長に与える影響は甚大であるため、あらかじめそれを特定し、対応の契機となるトリガーの把握と、対応方向性を見通すための仕組みの構築が重要です。これにより、影響を想定内に抑え、企業の持続可能性を高めることにつなげます。
KPMGは、企業のビジネスに影響を与え得るエマージングリスクの分析・特定、影響評価を支援します。

エマージングリスクの時代

世界的なパンデミックや紛争の勃発、気候変動による生態系の危機、デジタルトランスフォーメーション等による既存概念を覆すような破壊的創造等、加速度的なスピードで環境変化が進み、今まで想定していなかったようなリスクが顕在化し、事業戦略や事業継続を脅威に晒していきます。
また、エマージングリスクの特性として、社会全体が影響を受けるものも多く、企業にとっても1つの事業や部門で対処できるものではなく、戦略の方向転換等、経営レベルでの意思決定が必要となるものと考えられます。

エマージングリスク影響評価支援_図表1

従来型のリスクマネジメントの課題と限界

従前より行われているリスクマネジメントのプロセスとして、各部門を中心にリスクを認識し、積み上げた結果に対して重要リスクを評価する「ボトムアップアプローチ」があります。これを採用する企業からは、「メガトレンドや外部環境変化を意識したリスクが把握できていない」 「自社の中長期戦略に即したリスクが挙げられてこない」 「部門を越えた全社横断的なリスクを捉えることができない」といった悩みが聞かれます。
こうした背景には、外部環境変化の激化に伴い、企業が抱えるリスクの多様化・複雑化が進み、かつ影響発生までのスピードがあがっていることがあります。そのため、不確実な段階からリスクを捉え、対応方法等を想定しておかないと、気づいた時にはすでに影響を被っていたなどの状況に陥りやすくなっていると考えられます。

エマージングリスクに対するトップダウンアプローチの必要性

エマージングリスクに対応するためには、事業ポートフォリオや中期経営計画の見直し、事業戦略の変更等、中長期的な目線での経営判断が必要となります。また、このリスクをあえて取りに行くことで新たな自社の強みを創出する等、エマージングリスクを認識する段階で、経営レベルでの俯瞰的な視座からリスクテイク・リスク回避等の判断をタイムリーに行っていくことも重要です。
トップダウンのアプローチでは、外部環境変化を起点にリスクを捉えていくことがポイントです。自社ビジネスに直接関係している事象等の近視眼的な目線のみならず、幅広くメガトレンドを意識することで、現状認識できていなかった潜在的なリスクを明確化することができます。加えて、現状の戦略に重大な影響を及ぼすようなテーマについても注視する必要があります。外部環境変化を自社なりに捉え、今後のビジネスに与える影響が大きいと考えられる事象を特定し、現状の経営資源を鑑みたうえで、発生し得る具体的なリスクや影響を検討することが、トップダウンでエマージングリスクを認識していくことといえます。

エマージングリスク影響評価支援_図表2

エマージングリスク影響評価の手法

KPMGでは、大きく3つのステップに分け、エマージングリスクの特定・影響評価を支援します。

エマージングリスク影響評価支援_図表3

ステップ1では、既存のリスク認識に加え、メガトレンド等の想定される外部環境事象を、政治、経済、社会、テクノロジー等の観点で整理・把握し、自社に影響を与える蓋然性の高い、注視すべき外部環境事象を特定します。具体的には、既存の取組みでのリスク洗い出しに加え、競合他社等の中長期リスクへの認識・取組み状況の把握や、外部機関の公表情報の調査、専門家・有識者へのインタビュー等を行い、自社業界を含め、一般的に着目されている外部環境事象を特定します。

ステップ2では、特定した外部環境事象について、ビジネスにおける7つの観点(「国・地域性」 「経済・資金」「顧客需要・市場」 「物流・調達・製造」 「情報システム」 「レピュテーション」 「その他(オペレーション等)」)を用い、各事業にもたらす影響について、具体的にシナリオを検討・整理します。
たとえば、「国・地域性」の観点からは、紛争地域における事業停止や原材料の調達不能の可能性、「経済・資金」の観点からは、主要国の金利政策変更による急速な円安進行の可能性といった、リスクシナリオを導出し、事業に及ぼす影響を各観点に沿って具体化します。

ステップ3では、想定されるリスクシナリオに対し、バリューチェーンの項目ごとに「ヒト・モノ・カネ・情報」の枠組みで、どのような脆弱性があるかを特定し、その脆弱性が売上低下やコスト増加にどのようにつながるかを分析します。そして最終的な収益低下につながるポイントを特定し、影響度合いを踏まえた金額を試算します。

エマージングリスク影響評価の活用方法

エマージングリスクによる影響評価の活用方法は、主に2つあると考えられます。
1つ目は、影響評価の結果を数値化し、事業間の比較をすることにより、企業全体のリスクポートフォリオを可視化します。それを踏まえ、経営レベルでのリスク判断を行い、適切な対応リソース配分の意思決定に活かします。
2つ目は、想定するシナリオ発現のトリガーポイントを捉えて定点観測をすることで、リスクシナリオの発生をいち早く検知し、リスク対応への迅速な着手とリスク影響の最小化に活かしていきます。
このように、エマージングリスクの評価を行い、意思決定やアクションにつなげることで、組織のリスク対応力を高めていくことが可能となります。

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