モデル・リスク管理では、早くから態勢を整備してきたグローバル金融機関に対するアドバイザリーの経験に加えて、金融庁の「モデル・リスク管理に関する原則」における期待事項に沿った態勢整備・高度化に係る支援をご提供します。
モデル・リスク管理
モデル・リスク管理(Model Risk Management)とは、各種モデル(信用・市場リスク、時価評価、ストレステスト等)について、適切なデータや理論・コンセプトの下に開発されているか、独立した立場からそれらが検証(バリデーション)されているか、モデルの使用中に環境変化に起因する問題が生じていないか等を適切に評価し高度化を図る枠組みであり、モデルのライフサイクルに応じた一連のガバナンスを意味しています
米欧当局の動向
米国や欧州では、適切なモデル・リスク管理の欠如は、リスク評価やビジネス上の判断を誤らせ、金融機関の経営を揺るがすものと認識されており、当局の要請は極めて厳格です。特に米国では、モデル・リスク管理に係るガイダンス(SR11-7:FRB&OCC 2011)をベンチマークに、年次ストレステストおよび包括的資本分析といった規制や内部管理における態勢整備が進み、経営管理に深く浸透しています。
また欧州においても、ストレステストにおけるモデル・リスク管理原則の公表(BOE 2018)や、資本規制における内部モデルのレビュープロセスに係るガイド(ECB 2019)が公表されるとともに、包括的なモデル・リスク管理原則がBOEから出されています(SS1/23:BOE 2023)。最近では、アジアでも当局および金融機関の問題意識が高まっています。
モデルの活用範囲の広がり
モデルの活用範囲が広がっている点にも留意が必要です。例を挙げれば、マネーローンダリング対策(AML)や気候変動リスク管理では、ますますモデルが活用されています。加えて、AI/MLの手法を用いたモデルも、生成AIの盛り上がりを受けて活用が進み、管理すべきモデル数は一層増加することが予想されます。こうしたことを背景に、米国や欧州のG-SIBsでは、保有モデルがすでに数千以上に達しており、今後さらに増加することは間違いないでしょう。
マネージド・サービスの活用
米国や欧州では、管理すべきモデル数の増加を受けて、リソース制約や業務効率化の観点から、外部専門家(例えばKPMGインドのリソース)によるマネージド・サービスの活用が広がりをみせています。グローバルでのモデル・リスク管理への取組みは、新たなステージを迎えています。
本邦での取組み
本邦においては、2021年11月に金融庁から原則(以下、「FSA原則」)が公表されたものの、その適用対象範囲はG-SIBs、D-SIBsであり、モデル・リスク管理を重要な経営課題の1つとして位置付けている金融機関は、まだ多くないと思われます。しかしながら、会計や機動的なリスク管理においてモデルへの依存度は高まる一方であり、モデルの活用範囲の広がりやAI/MLといった手法の進展も踏まえると、FSA原則の適用対象か否かに関わらず、モデル・リスク管理の重要性を強く認識すべきです。データやモデルを活用して新たなビジネスを行い、リスクテイクの際に自信を持った判断を行うことができるよう、モデルの活用という「アクセル」と同時に、モデルの管理という「ブレーキ」が必要不可欠です。本邦金融機関も、モデル・リスク管理の強化に正面から向き合う時期に来ているのではないでしょうか。
KPMG/あずさ監査法人のサービス体制強化
KPMG/あずさ監査法人では、伝統的なリスクモデルからAMLや気候変動リスク管理で使用するモデルといった非伝統的なモデルに至るまで、モデルのレビューや検証業務を幅広く実施してきました。また、KPMG米国やKPMG英国と協働し、本邦のモデル・リスク管理の枠組み構築の支援にも注力してきました。今般、ここで指摘したような環境変化を踏まえ、改めてサービス提供体制を強化しましたので、ご紹介します。我々の取組みが、本邦金融機関におけるモデル・リスク管理の整備・高度化の一助となれば幸いです。
KPMG/あずさ監査法人
金融統轄事業部 金融アドバイザリー事業部
マネージング・ディレクター 曽我部 淳
ディレクター 田中 康浩