サプライチェーン全体でデジタル化と自動化が進むなか、従来の役割の変化とともに新たな役割が登場しています。意思決定はますます重要視され、オペレーションとテクノロジーの両方を俯瞰できる人材のニーズが高まっているためです。また多くの組織が、社内外のas a service(アズ・ア・サービス)プロバイダーと緩やかに連携する形へ転換しつつあります。企業における、正規雇用社員やギグエコノミーワーカー、パートナーなどの幅広い人材を活用する傾向が拡大しており、マネージャーはこれまで以上に多種多様な個性を受け入れる必要があります。さらに、こうしたエコシステムを管理する能力を備えつつ、知識をデジタル化して管理し、知的財産を保護することが必要不可欠となっています。

サプライチェーンワークフォース改革

自動化によってサプライチェーンは変革を遂げています。工場や倉庫は、ロボットやドローン、自律走行車で埋め尽くされるようになりました。在庫、空調や照明、物理的セキュリティのメンテナンスは、センサーによってコントロールされています。人工知能(AI)、機械学習、コグニティブアルゴリズムが需要計画を立て、発注を処理するようになりつつあり、カスタマーサービスは、チャットボットやソーシャルメディアのアプリが担うようになりました。
こうした最新のデジタル環境下で、サプライチェーンの担当者はまったく新しいスキルを必要とし、企業は意思決定を強化するためにヒトと機械の能力の適切な組み合わせについて模索しています。

サプライチェーンワークフォースに対するイメージの刷新

サプライチェーンおよびロジスティクス管理は、サプライチェーンを深く理解したうえで、デジタルテクノロジーやデータサイエンスを取り入れるというハイブリッドな役割へとシフトしていく必要があります。

<新たなサプライチェーンの特徴>

  • デジタルとヒトの共存
    自動化がサプライチェーンの担当者を煩雑な業務から解放し、システムが「考え」、ヒトが「意思決定」を実行できるようになります。
  • 新たな役割
    サプライチェーン部門のリーダーは、シナリオアナリスト、ロボット工学や自動走行のエンジニア、カスタマージャーニーアーキテクト、パートナーエコシステムマネージャーなどの、テクノロジーとサプライチェーンの専門知識を兼ね備えた新たな役割が生まれることを想定しておく必要があります。
  • ビジネスパートナーとしてのサプライチェーン部門
    サプライチェーン部門は、組織横断的なビジネスパートナーとして企業の他部門と密接に連携することで、ニーズの変化にいち早く応え、顧客体験を重視する姿勢を維持できます。
  • デジタルセンターオブエクセレンス
    デジタルセンターオブエクセレンス(横断的組織)を起点としてサプライチェーン教育をすべての部門に行き渡るようにし、従業員に新しい技術とさまざまなビジネスシーンでの応用方法に関するトレーニングを行うプラットフォームを構築します。また、企業全体から集約された共通の学習内容やベストプラクティスを活用・共有します。

流動的なサプライチェーン・エコシステムの構築

戦略的な関係性、あるいは「パートナーシップ」を通じて、パートナーの経験や専門知識を短期的に活用し、同様のスキルや能力を社内で開発・育成するための長期的なプロセスに取り組むことができます。
そのような進化を遂げた結果、サプライチェーンにおけるナレッジマネジメントの在り方にも変化が予想されます。

<予想されるナレッジマネジメントの変化例>

  • デジタル化によって、計画、調達、製造、ロジスティクスにおける個人の経験やスキルが体系化される。
    ・意思決定を支援するアルゴリズムにヒトの専門知識の落とし込みが可能となる。
    ・当初は担当者が機械をトレーニングするが、最終的には機械が自ら学習するようになる。
  • より多くのサプライチェーン機能が「as a service」を利用できるようになり、自社サービスの他社への提供が可能となる。
    ・競争相手との協働に際しては、知的財産(IP)の問題もあるため、自社のコアとなる差別化スキルを継続的に見直し、必要に応じて再考することが必要である。

サプライチェーンワークフォースの将来を見据える

将来的にサプライチェーンにおける雇用形態は、コア社員、「オンデマンド」ワーカーあるいは契約社員、提携パートナーなどが混在すると予想されます。そして最も重要なのは、インテリジェントオートメーションが取り入れられることで、知見を提供し意思決定を支援するロボットや機械、AIを活用できる能力を備えた次世代人材の育成を進めることです。

<サプライチェーンにおける高度人材の確保・育成に向けた対策>

(1) 継続的な労働環境の精査およびワークフォースに影響を与えるトレンドの監視
(2) コンピテンシーギャップの予測および「社会的・創造的」なスキルと技術的スキルの向上
(3) アナリストの採用において、 「アウトサイドイン」のアプローチを取り、ゲームや娯楽業といったこれまで検討してこなかった業界にも目を向けること
(4) 柔軟な勤務スケジュールの設定、多様性と受容性を備えた文化の醸成、高度な学習機会の提供など魅力的な労働環境の整備
(5) 学術機関やサードパーティー・ロジスティクス(3PL)・プロバイダー、社内部門とのサプライチェーンコラボレーションの促進
(6) ヒューリスティックモデリングを活用したスキルの体系化・知識の集約・グローバルなナレッジマネジメントモデルの構築

KPMGは、さまざまなフレームワーク、方法論、そしてツールを最大限に活用することで、サプライチェーン機能の見直し、設計、最適化に取り組む企業を支援します。

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