サプライチェーンのあらゆる部分は、サードパーティである「as a service(アズ・ア・サービス)」プロバイダーに委ねることが可能です。as a serviceの活用により、固定資産に多額の投資をすることなく優れた専門技術を利用できるようになるため、サプライチェーンをより適応性の高い効率的なものにする大きな機会が得られます。さらには、メーカー自身がas a serviceプロバイダーとなり、自社の設備を他社に提供して余剰設備をフル稼働させることで、それを新たな収入源にすることができます。一方、プラットフォームベースのサービスの台頭により、どの企業も、自社で担うべき領域と、他社に委ねる領域について判断を迫られるようになっています。また、拡大するパートナーとサプライヤーのネットワークを管理し、急激な組織変化に対応するための新たなスキルや能力も求められます。

顧客中心サプライチェーンの必要性

今や、サプライチェーンはカスタマーエクスペリエンスの根幹とも言える要素になりました。このサプライチェーンがas a service化されるということは、生産からラストワンマイルまでのあらゆる段階をサードパーティが担うことも可能になるということです。
そこで今、さまざまな業種の企業にとって喫緊の課題となっているのが、自社の製造戦略やサプライチェーン戦略の実現に向けた機能をどのように得るのかということです。サプライチェーンサービスを利用するには、サービスを構築する、購入する、パートナーを活用するという選択肢がありますが、企業はどの機能を自社に残しておくのかを判断する必要があります。これは単に自社が得意な機能を残すということではありません。企業の中核となる機能は、手ごわい競合他社を引き離すことができるだけの大きな差別化要因となる必要があります。
計画、生産、調達、物流のいずれであっても、as a service化されたサプライチェーンの利用には大きなメリットがあります。固定費を削減し、簡単かつコスト効率よく規模の拡大・縮小を行えるようになります。資産投資をせずに新たなイノベーションに挑戦することができ、新製品開発リスクが小さくなります。さらに、製品ライフサイクルの短期化に対して、サプライチェーンのas a service化はビジネスモデル全体の定期的な見直しや変更に関する柔軟性をもたらします。

プラットフォームベースのビジネス

サプライチェーンのクラウド化によって、企業間でコラボレーションできる範囲がますます広がってきています。今後は5PLの登場によって、顧客・企業・サプライヤー間の共同サプライチェーンプラットフォームの運用が始まるでしょう。
KPMGインターナショナルの調査によると、72%のメーカーが直接消費者に商品やサービスを届ける、D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)のビジネスモデルを採用している、もしくはその計画中であり、68%のメーカーがD2Cは自社のサプライチェーンに大きな影響を与えると考えていることがわかりました。
現在、サプライチェーンのどの領域でもプラットフォームを使ったアウトソーシングが進んでおり、以下の幅広い機能がas a service化されています。

【as a service化の機能一覧】

機能 概要
サプライチェーンマネジメント サプライチェーンネットワークパフォーマンスを強化するための、サプライチェーン全体の継続的な管理の実現
サプライチェーン計画 機能を自社で保有するか委託するか、新製品の立上げ、市場参入計画などに関する意思決定支援
営業最適化 契約サポートや契約管理を含む、自社ネットワーク内のパートナーの選定・管理支援
製造 内製もしくは外注に関する意思決定
研究開発(R&D) イノベーションサイクルのスピードアップのためのR&D専門サービスの利用
在庫管理 フルマネージド型で、高度に自動化されたロボットを活用した倉庫設備の利用
ロジスティクス 最先端ロジスティクスソリューションによるルートの最適化、および一般市民を含む幅広いプレイヤーを活用したラストワンマイルの強化

ブランドプロミスの再考

カスタマーエクスペリエンスといえば、かつては購買プロセスの利便性向上が多く取り上げられていましたが、現在ではフルフィルメントが実際の販売商品と同等、もしくはそれ以上に重要な要素になっています。eコマースの普及に伴い、返品時の対応がブランドにとってのカスタマーエクスペリエンス全体を大きく左右するようになっています。
企業はサプライチェーンをより顧客中心的なものにすることを目指していますが、これを進めるにあたり、シンプルではあるものの重要な以下の3つの問いに答えることで、自社のブランドプロミスを再考することを迫られています。

  • 商品の選択肢(パーソナライズされたバリエーションを含む)、ウェブサイトの使いやすさ、購入の容易さの点から見て、商品を購入しやすい企業と言えるか?
  • 顧客が好きな場所で、好きな時に、希望するパッケージ形態で商品を簡単に購入でき、配達状況もすべて確認できるようになっているか?
  • 返品手続きが簡単で、返金も迅速であるか?

R&D、商品開発、販売、マーケティング、調達、在庫、物流の線引きが曖昧になるなか、一貫して優れたカスタマーエクスペリエンスを提供するために、サプライチェーンの担当者は商品の決定に密接に関与し、他部門とシームレスに連携する必要があります。

他社よりはるかに優れたサプライチェーン機能を有している場合は、それをas a service化して他社に提供できる可能性があります。
as a serviceプロバイダーになれば、コストセンターをレベニューセンターに変えることができます。サプライチェーンの特定の領域において重要な役割を確立できるとともに、新規顧客層の幅が広がるため、量産効果がもたらされ、利益の改善を通じて低価格を実現できる好循環をもたらします。

KPMGは、さまざまなフレームワーク、方法論、そしてツールを最大限に活用することで、サプライチェーン機能の見直し、設計、最適化に取り組む企業を支援します。

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