マイクロサプライチェーンとは、限定的で、分散管理され、機敏な「ミニオペレーティングモデル」を指します。サプライヤーと柔軟な契約・協業関係を持ち、顧客の購買地点に近い場所で生産されます。
サプライチェーンのリーダー企業は、多様性がもたらす価値の源泉(スピード、サービス、コストなど)を理解し、標準的なプロセスを用いて価値を提供するデリバリーシステムを最適化することにより、複雑性と多様性のバランスを取る必要があります。

複雑化するサプライチェーン

従来のサプライチェーンには、きめ細かくカスタマイズされた商品の即日配送を期待する、今日の顧客を満足させられるほどの柔軟性やスピード感は残念ながらありません。また、すべての顧客を満足させようとすると、製造、物流、在庫管理、顧客サービスのコストがかさむ恐れがあります。一方、コスト意識が強すぎると、大切な顧客へのサービスが不十分になりかねません。
将来のサプライチェーンの成功は、顧客が求める多様性と、複雑性に伴うコストのバランスを取れるかどうかにかかっています。

複雑性と多様性のバランスを取る

サプライチェーンの複雑性にうまく対応することが、コスト、価値、競争優位性を最適化するための鍵となります。議論の出発点は、コストと価値をより深く理解することですが、コストと複雑性は比例関係にないため簡単なことではありません。「従来のサプライチェーン」の図が示すように、コストは多様性に合わせて急増し、収益の増加ペースがコスト増に追いつかないことがよくあります。

複雑なサプライチェーンに対する2つの重要なブレイクスルー
1.多様性の価値の源泉を理解する(スピード、サービス、コストなど)
2.デリバリーシステムを最適化する

オペレーティングモデルの収益性

マイクロサプライチェーン図表1

マイクロサプライチェーン

マイクロサプライチェーンは、複雑化に伴うコストと、商品・サービスの多様化によって得られる価値のバランスを取ることができます。これは、プロセスではなく顧客を基本とするものであり、特定の顧客セグメントに対応して、製品、ポリシー、生産体制、フロー、システムをカスタマイズすることを企業に促します。
マイクロサプライチェーンは、次のような課題に取り組むことになります。

現地生産・組立のメリット
マイクロサプライチェーンでは、グローバル工場での標準製品の大量生産を継続できます。非標準の部品や製品は、顧客の購買地点近くで生産・組立を行います。これにより、多くの汎用部品で製品を構成し、個人の嗜好に合わせて素早く簡単にカスタマイズできるモジュール化への移行が加速します。
また、現地での生産・組立の拡大により、多くの輸送ルートが大幅に短縮され、その多くは現地ニアショア拠点と自国拠点間の輸送のみとなります。これにより物流コストが削減されるだけでなく、二酸化炭素排出量も削減されます。

委託契約
サプライチェーンが機敏性と柔軟性を求められるようになることから、長期的に固定された契約は時代遅れになると予想されます。4PLや5PLが環境全体の重要なコーディネーターとして機能するに従い、短期的なバリューチェーンが成長し始めています。
パートナー契約を短期的とすることで、生産量の増減や製品の変更・カスタマイズに柔軟性が生まれ、固定資産投資を抑える「アズ・ア・サービス(as a Service)」モデルへの移行が進みます。また、関係者が増えるにつれて、プライバシーデータや所有権も重要な問題となります。顧客データにアクセスできない事態となれば可視性が損なわれ、販売やマーケティングの機会が制限されるからです。

コラボレーション
企業が事業のコストと複雑性を軽減しようと取り組むため、異業種間や競合他社とのコラボレーションが増加するとみられます。マイクロサプライチェーンには、4PLや5PLに加え、より多くの委託製造業者、卸売業者、流通業者、倉庫事業者など、膨大な数のプレイヤーや物流ルートが関係します。サプライチェーン・プラットフォーム事業者の出現によってさらに選択肢がもたらされ、製造業者は顧客、流通業者、卸売業者、そして前述のラストワンマイル輸送サービス向けのチャネルの1つとして、プラットフォーム事業者のサプライチェーンの一部または全体を選択できるようになります。

バランスの取れたマイクロサプライチェーンを実現するためのステップ

マイクロサプライチェーン構築のための3つの主要ステップを以下に示します。

STEP1

・市場における価値の源泉(スピード、品質、価格、利便性、サービスレベル、製品機能、カスタマイズなど)の特定と理解

・各セグメントの規模の測定と、競争優位性・潜在的利益率・成長率の評価

・各セグメントに提供する製品・サービスの開発

STEP2

・各セグメントのコストを測定とサプライチェーン全体のコスト要因の把握

・各セグメントにサービスを提供するための人件費、インフラ、サプライヤー、物流コストの評価

STEP3 ・コストや価値の変化に対応するシナリオ策定のための、さまざまなバリューストリームを組み合わせたモデル作成

KPMGは、さまざまなフレームワーク、方法論、そしてツールを最大限に活用することで、サプライチェーン機能の見直し、設計、最適化に取り組む企業を支援します。

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