あずさ監査法人「KAM事例分析ツールを開発、2021年3月期の約2,600社を分析(速報版)」
有限責任 あずさ監査法人(東京都新宿区、理事長:森 俊哉)は、2021年3月期の財務諸表監査における「監査上の主要な検討事項」(以下、「KAM」)の事例について、EDINET上の約2,600社の分析結果を公表しました。
有限責任 あずさ監査法人は、2021年3月期の財務諸表監査における「監査上の主要な検討事項」の事例について、EDINET上の約2,600社の分析結果を公表しました。
KAMの記載に対する期待
日本では、金融商品取引法に基づいて実施される上場会社の財務諸表監査にあたって、2020年3月期から監査報告書にKAMの記載をすることが認められたほか、2021年3月期からKAMの記載が求められています。KAMの記載は、監査人が実施した監査の透明性を向上させ、監査報告書の情報価値を高めることによって、財務諸表利用者が監査品質を評価する新たな検討材料を提供するとともに、関係者による対話の促進を主な目的としたものです。
KAM事例分析ツールの開発の背景
あずさ監査法人はKAMの効率的な事例の分析を目的として、KAM事例分析ツールを開発しました。KAM事例分析ツールにより、EDINET上の有価証券報告書及び監査報告書のXBRLデータを適時に蓄積したうえで、「業種別」等の任意の条件に基づき、事例を集計し、分析することが可能となります。
2021年3月期の約2,600社の記載事例の分析も、本ツールを用いて収集されたものであり、KAMの個数だけでなく、業種ごとの特徴を効率的に把握することが可能です。KAM事例分析ツールはあずさ監査法人の品質管理本部において利用するほか、各監査チームが会社とのより深度のあるディスカッションのために利用することも想定しています。
ツールを用いた2021年3月期におけるKAMの分析結果(速報版)
2020年3月期から2021年2月期における早期適用事例は60社弱でしたが、2021年3月期(KAM記載要求の強制適用年度)においては、2,600社弱の上場会社等の財務諸表に対する監査報告書においてKAMが報告されています。KAMの分析結果は、主に以下の通りです。
分析結果サマリー
区分 | 集計結果 |
KAMが報告された会社 | 2,588社(注1) |
KAMの数(平均) | 連結財務諸表監査 1.3個 個別財務諸表監査 1.1個 |
KAMの対象 | 固定資産やのれんの減損、工事進行基準の適用、貸倒引当金等、殆どが会計上の見積りに関する事項 |
会社法監査報告書においてKAMが報告された事例 | 2社 |
(注1) 社数については、集計の方法によって一部相違が生じます
先行して開示を行っている海外事例と比べて、結果に大きな差異は見受けられませんでした。2020年3月期の早期適用事例と同様に、KAMとして識別された項目は固定資産の減損等の会計上の見積もりに関するものが多くを占めていました。
また、ステークホルダーの興味をより重視し、財務諸表項目ではなく特定のテーマ(新型コロナウイルス感染症の影響など)をKAMとしていた事例も複数社で存在しました。
業種別に分析した結果、多くの業種で共通の傾向がありました。しかし、建設業では業界特有の工事進行基準や工事原価総額の見積もりをKAMとする傾向、情報・通信業ではM&Aに積極的な業界特性から、企業結合やのれんの減損に関するKAMが多く見受けられました。
あずさ監査法人は今後も、KAM事例分析ツールの活用を通じて、KAM記載の更なる改善とKAMを通じた深度あるステークホルダーとの議論を実施していきます。
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あずさ監査法人について
有限責任 あずさ監査法人は、全国主要都市に約6,000名の人員を擁し、監査や各種証明業務をはじめ、財務関連アドバイザリーサービス、株式上場支援などを提供しています。 金融、情報・通信・メディア、製造、官公庁など、業界特有のニーズに対応した専門性の高いサービスを提供する体制を有するとともに、4大国際会計事務所のひとつであるKPMGインターナショナルのメンバーファームとして、146ヵ国に拡がるネットワークを通じ、グローバルな視点からクライアントを支援しています。