Part1では、現代のビジネス環境における絶え間ない市場とテクノロジーの変化が事業予測を難しくし、企業が法規制の変化に対応する際に直面する課題に焦点を当てて紹介しました。今回は、企業が法規制に対応するうえで直面する属人化、作業負荷の大きさ、および法規と事業知識のギャップという主要な課題と、それらを解決するためのアプローチを考察します。
法規認証業務の課題におけるアプローチ
Part1では、企業が製品やサービスを展開するうえで法規制において直面する課題の要因を大きく分けて、A.属人化による経験・知識の偏り、B.人手による作業負荷大、C.法規制と事業の知識ギャップ、であると説明しました。これらの課題におけるアプローチとしては下図の方法が考えられます。
【法規認証業務の課題におけるアプローチ】
A:属人化による経験・知識の偏り
Aは、とりわけ複数の製品やサービスを展開する大企業でよく見られる傾向です。これらの企業では、個々の製品やサービスごとに担当者が法規認証業務を担っています。担当者が持つ経験や知識の集積と構造化を通じて、法規認証プロセスの効率化を図ることが期待できます。
B:人手による作業負荷大
Bは、担当者自らが大量の社内文書を根拠に影響の評価や判断を行うことが原因として考えられます。評価や判断を誤ると罰金や訴訟を背負うリスクがあるため、担当者は影響が少ないと予想される変更や改定についても分析の対象としてしまう心理が働きます。この「過剰な安全策」は、結果として必要以上の作業負担を招きます。この問題に対する解決策は、不必要に広範囲にわたる分析をせず、変更や法規制改定の影響を適切に評価・判断するためのツールを提供することです。そして、専門知識を有効活用して自社製品やサービスの競争力を高め、有益な議論に時間を割く方向へのシフトが求められます。法規認証業務の無人化が目的ではなく、人間の専門知識と判断力の最大限の活用が重要です。
C:法規制と事業の知識ギャップ
Cは、業務の専門性や社内バリューチェーンに基づくサイロ化された組織構造に起因しています。組織間の専門性の壁を低くするために、担当者同士がコミュニケーションに多くの時間を割いています。製品やサービスの情報が複雑化し、法規制も一朝一夕に読み解けるものではないため、このコミュニケーションのコストは年々増加の一途をたどっています。解決策は、製品やサービスの詳細を含む社内文書の情報と、法規制に記載された要件や基準を、「自然言語」を媒体として結びつけることにあります。これにより「専門性のギャップ」を橋渡しし、組織横断的な情報の流れをスムーズにする役割を果たします。
今回は、法規認証業務における主要課題とそれらを解決するためのアプローチについて解説しました。続くPart3は本稿の最終編として、自然言語処理技術による高度化を具体的に説明し、その展望について解説します。
執筆者
KPMGコンサルティング
マネジャー 小久保 慎平