ハイライト

KPMG米国が最高サステナビリティ責任者やサステナビリティ部門の管理職へインタビューした結果、回答者の半数がESGを戦略的課題として捉えていると回答しています。また、調査対象の企業のうち3分の2以上で、サステナビリティ委員会または諮問委員会などのESGに関する独立した意思決定機関が設置されていることも分かりました。将来的に、サステナビリティをほかの課題(例:コミュニケーション、環境)を扱っている数名規模の一部門の役割から、ビジネス戦略に密接に結びついた、戦略的で中央集約型の部門へと進化させる企業も複数あることが明らかになりました。

企業のESG戦略

インタビューに回答したほぼ全員が、ESGに対して意欲的であると言えます。半数の企業がESGをコアビジネスと戦略の中核課題とみなし、残りの大半は企業のパーパスに基づきESGの取組みを推進し、成長や収益を超えた外部からの刺激を求めていると回答しています。最低限順守するだけとした企業は、50社中2社にとどまりました。

脱炭素ビジネスモデルと温室効果ガス排出量の削減は、ESG戦略に最も多く含まれる課題であり、ほぼすべての回答者が「大いにある」または「ある程度ある」と回答しています。

ESGと取締役会

調査対象企業の4分の1には、取締役会に準ずるサステナビリティ委員会が設置されています。さらに5分の1では、主に監査委員会など他の目的を扱う委員会でESGに関する議論が行われています。このように、サステナビリティは報告要求に応えるために必要とされ、経営、イノベーション、報酬、労働安全や組織文化に関する委員会でもESGの話題が取り上げられています。

ESGに関する意思決定者

調査対象企業の約半数で最高経営責任者(CEO)がサステナビリティの主要責任者であり、専任の最高サステナビリティ責任者(CSuO)も多く見られます。そのほか、サプライチェーンや製造部門、最高リスク責任者(CRO)、最高投資責任者(CIO)などがこの業務を担当しています。

また、調査対象企業の3分の2以上でサステナビリティ委員会またはサステナビリティ評議会と呼ばれるESGに関する独立した意思決定機関が設置されています。

ESGの推進部門

調査対象企業の3分の1強が独立したサステナビリティ部門を設置しています。その他の企業では、ESGの責任は経営戦略部門が最も多く担当しており、環境・衛生・安全部門、コミュニケーション部門、法務部門、コーポレートアフェアーズ部門が担当しているケースもありました。また、ESGを変革、イノベーション、人材への取組みに組み込んで推進する企業もありました。

ESG報告の責任者

調査対象企業の半数以上でサステナビリティ部門がESG報告の責任を単独で担っており、さらに4分の1の企業では複数部門がESG報告の責任を共有していることが判明しました。大半の企業が、サステナビリティ部門と財務経理部門、一部の企業ではコミュニケーション部門がESG報告を担当しています。また、将来的に、財務経理部のなかのESGチームがデータの信頼性を担いつつ、コミュニケーション部門と政府対応部門が報告業務を主導する傾向が高まると予想されています。

業績と報酬

調査対象企業の半数弱が重要業績評価指標(KPI)にESG課題を取り入れており、4分の1以上が管理職レベルの業績評価にもESGを組み込んでいることが判明しました。多くの企業が、業績評価と報酬連動をESG課題で強化する計画を立案しています。また、現在は二酸化炭素排出量を指標としていますが、将来的には他の指標も追加していく予定だと回答しています。

企業構造におけるESGの進化

複数の企業が、サステナビリティをほかの課題(例:コミュニケーション、環境)も扱っている数名規模の一部門の役割から、ビジネス戦略に密接に結びついた、戦略的で中央集約型の部門へと進化させていることが明らかになりました。特に1社は、過去5年間でESGを表層的な取組みから、予算や従業員、取締役会レベルでの報告を伴う中核的な戦略へと移行したと回答しています。さらに、投資家の圧力を受けてESGがリスク管理の一部として扱われ、ESG部門の拡大と最高リスク責任者(CRO)の任命を予定している企業もありました。

成功に向けた確かなESGガバナンスの構築

既存のサステナビリティ部門の効果的な運用には、その特徴、強み、弱みを明確に分析することが重要です。分析を通じて、サステナビリティ部門が企業のビジネスとサステナビリティ戦略とどれだけ密接に連携しているか、または乖離しているかを検討します。

企業は、既存の意思決定権限に基づくだけではなく、専門性、コミットメント、関連データへのアクセスなどを通じて、従業員をサステナビリティ関連業務に関与させることができます。

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