ハイライト
(調査概要)
- 経済的な不確実性にもかかわらず、回答者の55%が今年度、ESGへの取組みを拡大しており、縮小したとする回答は26%に留まっている
- 大企業(従業員1万人超)の66%が、5年前と比較して事業目標と環境目標の整合性を高めつつある
(ESGへの取組みと財務的価値)
- 大企業の経営者のうち43%が、財務業績が向上したと回答しているのに対して、財務業績が低下したとの回答はわずか6%にすぎない
- ESGへの取組みが財務的価値を大きく高めると経営者が考える主な分野には、M&Aの有効性、新たな資本へのアクセス、顧客ロイヤルティがある
- 長期的に見て、ESGへの取組みにより、財務的価値が高まることが期待される分野は、レジリエンスの向上とプレミアム価格での新規顧客の獲得である
(企業がうけるプレッシャー)
- 10社中8社が、サプライチェーンパートナー、従業員、投資家、顧客、規制当局から、環境とサステナビリティへの取組みに関する透明性を高めるよう、少なくとも何らかの圧力を受けている
(時間的制約、リソースの不足、開示要求)
- ESG戦略を遂行し、開示要求を遵守する上での最大の課題としては、時間的制約(51%)と規制の不確実性(44%)である
- 約半数の企業(46%)が、米国証券取引委員会(SEC)による気候関連の情報開示に関する最終規則の決定を待ち、ESG報告への取組みを見合わせたり、取りやめたりしている
1.環境およびサステナビリティへのアプローチが進んでいる
大企業ではESGの取組みにより財務業績が向上しており、景気後退への懸念にもかかわらず、今年度もESGへの取組みを拡大しています。
大企業は、事業目標と環境目標の整合性を高めつつあります。
ESGへの取組みにより、M&Aの有効性、新たな資本へのアクセス、税制上の優遇措置など、多くの分野で財務的価値が高まっています。
長期的には、レジリエンスの向上とプレミアム価格での新規顧客の獲得など、さらに多くの領域でESGが財務的価値を生み出すと考えられています。
2.景気後退への懸念が、ESGの取組みによる差別化の機会につながり、今後もその状態は継続する
「KPMGグローバルCEO調査2022」によると、経営者の70%がESGにより財務業績にプラスの影響がもたらされると考える一方で、59%が組織的なESGへの取組みの一時停止または再考を予定しています。
ESGへの取組先進企業では、ESGに重点を置いた経営陣の役割、テクノロジー、製品戦略を通じて、組織の変革を進めています。
一定のペースでESGに取り組む企業では、半数超の企業が、環境とサステナビリティに関する取組みの拡大に向けて尽力しています。
ESG関連規制の遵守に重点を置く企業では、コンプライアンス重視の企業は、ESG関連の規制が最終決定されるまで、様子見の姿勢を取っています。
3.企業はESGに関する透明性を高めるよう多様なステークホルダーから圧力を受けており、人材リソースの不足が課題となっている
80%の企業がサプライチェーンパートナー、従業員、投資家、顧客、規制当局から、環境とサステナビリティへの取組みに関する透明性を高めるよう、何らかの圧力を受けていると回答しています。
4.時間的制約やリソースの不足が、ESG戦略の遂行や開示要求への対応の障害となっている
主な障害・懸念点は、以下の通りです。
- ESG目標と戦略に取り組む適切な人材の確保
- その他ビジネス上の優先事項とESG目標とのバランスの確保
- 競合他社の取組みに後れを取ること
- 各国・地域でのESG報告に要するリソースに係るコストの増加・ESG関連規制への対応のためビジネス変革に取り組む十分な時間の確保
経営者の懸念点は、時間的制約、規制の不確実性、ステークホルダーの関与などでした。
ESG戦略の効果的な遂行を妨げる多くの障害があり、長期的なリスクとなります。
5.53%の企業が、今後米国の環境・サステナビリティ開示への対応に、ある程度の自信を有していると回答している
今後、米国、EU、その他の国・地域において、ESG開示に対応できると確信する企業は、わずか4分の1にすぎません。また、46%の企業が、米国証券取引委員会(SEC)の気候情報開示に関する最終規則の決定の遅れを理由に、準備の取組みを中断したり、取りやめたりしています。67%の企業が、3~4の国・地域でESG報告が必要になると回答しています。
6.ESG目標の達成に向けた生成AIの活用はまだ初期段階にあり、多くの企業にとって、生成AIでESGへのアプローチを変革できるかどうかを判断するには時期尚早である
77%の企業がESG目標を達成するうえで、生成AIが革新的な役割を果たすかどうか判断しかねており、生成AIが変革をもたらすと確信している割合は、わずか8%にすぎません。
現時点では、52%の企業が、業務の効率化や無駄の削減などを通じて、生成AIがESG目標の達成に役立つと期待しています。
ほぼすべての経営者が、将来、生成AIがESGにどう影響するかは不明確ながらも、ESG目標の達成に向けて生成AIを導入する予定、または導入済みであると回答しています。
業務効率化などにより、生成AIがESG目標の達成に寄与すると大半の回答者は期待しています。