Article Posted date
07 March 2024
グローバル
地政学的緊張と経済課題で取引低迷、取引活動は4年ぶりの低水準に
2023年は、経済的課題、地政学的緊張と紛争、企業バリュエーションの懸念が複合し、ベンチャーキャピタル市場にとって困難な1年でした。投資活動が慎重になり、取引総額、取引数ともに2019年以来の低水準になりました。
- スタートアップに押し迫るダウンラウンド
- 収益性重視の成長計画へ
- AIにフォーカスしたソリューションに投資家の関心が集まり続ける
- 2023年第4四半期、新たなIPOは実現せず
2024年第1四半期に注目すべきトレンド
ウクライナや中東情勢、インフレと金利の高止まりに加え、EU議会議員選、米国大統領選、英国総選挙といった大きな選挙がある2024年第1四半期は、ベンチャーキャピタルによる世界的な投資は低調になると予想されます。
米国
米ベンチャーキャピタル投資が急減、経済不安とIPO後の不振が影響
経済的・地政学的懸念の継続、2023年第3四半期のIPO企業の低調な業績、案件成立までの長期化により、米国におけるベンチャーキャピタル投資は第4四半期に大きく減少しました。
- AIへの関心が米国のベンチャーキャピタルの間で急上昇
- IPO市場は依然として閉鎖的
- ベイエリアが他の米国スタートアップハブと比べて回復力を示す
- ファンドの延命にロールオーバー・ファンドを活用するベンチャーキャピタル
2024年第1四半期に注目すべきトレンド
投資家がデューデリジェンスに時間をかけ、事業環境を踏まえたユニットエコノミクスと持続可能なビジネスモデルを持つ企業への投資を優先するため、米国におけるベンチャーキャピタル投資は2024年第1四半期も低調推移が予想されます。
南北アメリカ
厳しい選択基準が影響、取引総額・件数が大幅減
市場の継続的な課題を考慮し投資先選択を厳格化した結果、南北アメリカにおけるベンチャーキャピタルの取引総額は4年ぶり、取引件数は5年ぶりの低水準に落ち込みました。
- ベンチャーキャピタル市場に広がる警戒感、最も大きな影響を受ける新興ファンドマネジャー
- カナダでは前四半期比でベンチャーキャピタルによる投資が上向きに
- ベンチャーキャピタルが適切な投資先を探すなか、カナダでは依然として楽観論が根強い
- ブラジルでは取引件数が激減するなど低調が続く
- ブラジルのオープンバンキングは長期的な投資成長にとって有利な立場
2024年第1四半期に注目すべきトレンド
2024年第1四半期も南北アメリカのベンチャーキャピタル投資は軟調が続くものの、AI分野では活況が予想されます。IPO活動は年後半に再開される見込みですが、それまではダウンラウンド割合の増加が予測されます。収益性や持続可能なビジネスモデルを重視するベンチャーキャピタルの姿勢により、資金調達に苦戦する企業が増える可能性があります。
欧州
米国投資家の慎重姿勢と地政学的緊張が影響し、前年比で大幅減
欧州におけるベンチャーキャピタル投資は、米国の投資家が大型投資を控えたことや、マクロ経済情勢、ウクライナや中東情勢などの影響により前四半期比で大幅に減少しました。2023年の取引総額は2021年、2022年に比べ減少しましたが、2020年の水準を維持し、それ以前の水準を上回りました。
- AIへの関心が急上昇するなか、エネルギーとESG関連は引き続き魅力的な分野に
- 安定性の欠如が英国における投資の課題に
- ドイツのベンチャーキャピタルによる投資は堅調に推移
- レイターステージの取引が減少し、北欧への投資は閑散とした状態が続く
- アイルランドは低調に推移する一方、2024年に上向く可能性も
2024年第1四半期に注目すべきトレンド
欧州と中東の関係、イグジット機会の欠如、2024年の欧州選挙による不確実性を踏まえ、2024年第1四半期のベンチャーキャピタル投資は軟調が予想されます。多くのベンチャーキャピタルが収益性の確保を求めることにより、スタートアップの倒産が増える可能性がありますが、質の高い企業への注目が高まり、健全なエコシステムに貢献することが期待されます。
アジア
金利上昇と地政学的緊張の影響で投資総額・取引件数が大幅減
金利の上昇、経済的課題、地政学的緊張、資金流動性やイグジット不足を背景に、2023年アジアでのベンチャーキャピタル投資総額と取引件数は大幅に減少しました。Changxin Xinqiao、Lazadaのような大規模な資金調達があったにもかかわらず、2023年第4四半期も投資活動は引き続き低調でした。
- 中国の主要なセクターは引き続き投資を誘引する一方、全体では10年ぶりの低水準に
日本のベンチャーキャピタルによる投資は他の国・地域に比べて好調な年を記録
日本のスタートアップ・エコシステムに対する投資家の関心が高まり、宇宙関連のAstroscale、代替食肉のDAIZ、B2B請求書処理のLayerXなど多様な分野の企業が大型ディールを獲得しました。
日本でのコーポレートベンチャーキャピタルによる投資は堅調を維持するも、他の国・地域は大幅に減少
日本のコーポレートベンチャーキャピタル投資が37億ドルを超え、脱炭素化や自動化を含むイノベーション分野への注目が集まりました。対照的に、インド、オーストラリア、中国での投資額は前年比約50%以上の減少となりました。
- 香港では引き続きフィンテック分野の成長支援に注力
2024年第1四半期に注目すべきトレンド
アジアにおけるベンチャーキャピタル投資は全体として低調が続くものの、AI、ディープテック、クリーンテック、代替エネルギーなどの分野では堅調な投資が見込まれます。
英語コンテンツ(原文)