気候関連のコミットメント(IAS第37号)-IFRS-ICニュース
IFRS解釈指針委員会ニュース -「気候関連のコミットメント(IAS第37号)」については、2024年4月のIASB会議において審議された内容を更新しています。
「気候関連のコミットメント(IAS第37号)」については、2024年4月のIASB会議において審議された内容を更新しています。
Article Posted date
30 October 2024
概要
委員会は、温室効果ガス排出量を削減又は相殺するという企業のコミットメントについて、以下の質問を受け取りました。
- 当該コミットメントによって、当該企業に推定的義務が生じるか否か。
- 当該コミットメントによって生じる推定的義務は、引当金の認識に関するIAS第37号の要件を満たすかどうか。
- 引当金が認識される場合、対応する金額は、引当金の認識時に費用又は資産のいずれとして認識されるか。
前提となる事例は以下のとおりです。
- 20X0年に、家庭用製品の製造者である企業が、次のようなコミットメントを公式に表明する。
i. 年間の温室効果ガス排出量を徐々に削減し、20X9年までに現在のレベルの少なくとも60%を削減する。
ii. 20X9年及びその後の各年における残りの年間排出量については、カーボン・クレジットを購入し、それをカーボン市場から消却することによって相殺する。
- この声明の裏付けとするため、企業は移行計画を公表し、20X1年から20X9年の間に製造方法を段階的に変更して、20X9年までに年間排出量の60%削減を達成する手法を示す。経営者は、企業がこれらの変更のすべてを行い、利益の上がる製品を販売し続けることができると確信している。
ステータス
委員会は以下の検討を行いました。。
- 温室効果ガス排出量を削減又は相殺するという企業のコミットメントに関する企業の声明によってIAS第37号第10項の推定的義務が生じるかどうかは、そのコミットメントについての事実とそれを取り巻く状況による。
- コミットメントの公表によって推定的義務が生じるとしても、公表時点では、推定的義務は過去の事象の結果としての現在の義務ではないため、引当金を認識しない。企業が20X9年以降に温室効果ガスを排出するのに応じて、過去の排出量を相殺する現在の義務が発生する。企業が当該義務をまだ決済しておらず、当該義務の金額について信頼性のある見積りが可能である場合には、企業は引当金を認識する。
- 引当金を認識する場合、引当金を決済するために必要となる支出によってIFRS®会計基準における資産の認識の要件を満たす項目が生じる(又は支出がその項目のコストの一部を構成する)場合を除き、そのような支出は費用として認識されることに留意する。
- 温室効果ガス排出量を削減又は相殺するという企業のコミットメントによって、引当金を認識するかどうかに関係なく、企業が当該コミットメントを果たすために実施を計画している行動は、さまざまなIFRS会計基準の要求により、企業が他の資産及び負債を測定する金額並びにそれらに関して開示する情報に影響を与える可能性がある。
以上より、委員会はIFRS会計基準上の扱いは明らかであるとして、本件に対処するための基準設定プロジェクトを作業計画(アジェンダ)に追加しないことを決定しました。
本アジェンダ決定の内容は、2024年4月のIASB会議を経て確定しました。アジェンダ決定の詳細についてはASBJのサイトに公開されている、IFRIC Update(2024年3月)への補遺をご参照ください。
talkbook -ネットゼロに向けたコミットメント
本冊子は、KPMG IFRG Limitedが2024年4月に発行したNet-zero commitments - When to recognise a liability and how to tell a connected storyの日本語訳です。
IFRS解釈指針委員会によるアジェンダ決定を踏まえた会計処理及び開示上の留意事項について解説しています。翻訳と英語原文間に齟齬がある場合は、英語原文が優先するものとします。本冊子が、IFRS会計基準を理解または適用しようとしている方々に、少しでもお役に立てれば幸いです。