法務省、電子提供制度における電子提供措置事項記載書面等に関する「会社法施行規則等の一部を改正する省令」を公布

法務省は2022年12月26日、「会社法施行規則等の一部を改正する省令」(以下「本改正」という。)を公布するとともに、意見募集の結果について公表しました。

法務省は2022年12月26日、「会社法施行規則等の一部を改正する省令」(以下「本改正」という。)を公布するとともに、意見募集の結果について公表しました。

1.改正の経緯

令和元年改正会社法により、株主総会資料の電子提供制度が導入されました。振替株式を発行する上場会社等については、2023年3月1日以降に開催される株主総会から適用が義務付けられます。電子提供制度とは、株主総会資料をウェブサイトに掲載し、そのアドレス等を招集通知に記載等して株主に通知した場合には、株主の個別の承諾を得ていない場合であっても株主総会資料を書面で送付することを不要する制度です(会社法第325条の2以下)。ただし、株主保護の観点から、書面交付請求をした株主に対しては、法務省令で記載を要しないと定められた事項を除き、招集通知と併せて、電子提供措置事項を記載した書面(以下「電子提供措置事項記載書面」という。)を交付する必要があるとされています(会社法第325条の5第2項)。

この電子提供備置事項記載書面の記載事項について、コロナ禍を契機として顕在化した感染症を巡る将来の見通しの不確実さやデジタル化の進展に伴う社会情勢の変化に対応する必要があるとともに、コロナ禍を契機として導入されたウェブ開示によるみなし提供制度の特例措置の一定程度の実務の積み重ねがあり、その利用によって株主側に大きな不都合が生じたとの指摘もなかったことも踏まえて、見直されました。

また、当該見直しに併せて、ウェブ開示によるみなし提供制度(以下「ウェブ開示」という。)の対象範囲を拡大する改正がなされています。

2.改正の概要

(1)電子提供措置事項記載書面から省略できる事項の拡大

本改正では、電子提供措置事項記載書面から省略することができる事項が拡大されています(会社法施行規則第95条の4第1項第2号~第4号)。

具体的には、表中の下線部が省略可能となっています。


<現行法上、電子提供措置事項記載書面に記載すべき事項(下線部:改正事項)>

株主総会参考書類
  • 議案
事業報告
  • 事業の経過及び成果
  • 資金調達等に関する事項
  • 重要な親会社及び子会社の状況
  • 対処すべき課題
  • 会社役員の氏名等
  • 役員の責任限定契約に関する事項
  • 補償契約・役員等賠償責任保険契約に関する事項
  • 報酬等に関する事項
計算書類
  • 貸借対照表
  • 損益計算書
連結計算書類
  • 連結貸借対照表
  • 連結損益計算書


なお、以下については、電子提供措置事項記載書面への記載は不要です(「会社法施行規則等の一部を改正する省令案」 に関する意見募集の結果について第3意見の概要及び意見に対する当省の考え方 1③)

  • 事業報告に係る監査報告
  • 計算書類に係る監査報告及び会計監査報告
  • 連結計算書類に係る監査報告及び会計監査報告(会社計算規則134条第3項の規定に基づき、電子提供措置をとる場合)

本改正による電子提供措置事項記載書面の記載事項の見直しは、株主に対する情報提供の在り方の一部について、法律による規制ではなく、各社の合理的な裁量に委ねようとするものであり、株主に対する適切な情報提供を前提とする株主との対話の重要性をいささかも否定するものではないこと、今後は、各社の実情に応じた株主に対する情報提供の在り方が問われることとなり、関係各位の合理的な裁量の範囲内で、インターネットを利用することが困難な株主への配慮やサポートの工夫がされることが期待されることが法務省の考え方として示されています(「会社法施行規則等の一部を改正する省令案」 に関する意見募集の結果について第3意見の概要及び意見に対する当省の考え方 1①)。

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(2)ウェブ開示によるみなし提供制度の対象拡大

ウェブ開示とは、株主総会資料の一部について、ウェブサイトに掲載し、そのアドレス等を株主に通知すれば、当該事項に係る情報が株主に提供したものとみなす制度です(会社法施行規則第94条第1項ほか)。上述の電子提供制度と異なり、この制度のもとでは電子化の対象となる資料が株主総会資料の一部であり、また、株主に書面交付請求権はありません。

本改正では、上記(1)に掲げる事項と同様の事項について、ウェブ開示の対象とすることとされています(会社法施行規則第133条、会社計算規則第133条)。

具体的には、以下の事項について、ウェブ開示の対象が拡大されています。


<ウェブ開示の対象が拡大された事項>

事業報告
  • 事業の経過及び成果(※)
  • 対処すべき課題(※)
  • 補償契約・役員等賠償責任保険契約に関する事項
計算書類
  • 貸借対照表(※)
  • 損益計算書(※)

(※)新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、時限的にウェブ開示の対象が拡大している事項(会社法施行規則第133条の2、会社計算規則第133条の2 令和3年法務省令第45号/2023年2月28日失効)。本改正の施行日以降は、当該時限的な拡大措置が不要となるため、本改正では、以下の経過措置が削除されている。

 

(経過措置)

2023年2月28日までに招集の手続が開始された定時株主総会に係る事業報告及び計算書類の提供については、ウェブ開示に関する規定は、なお効力を有するものとされる(附則第2条但書)。

(3)その他

上記のほか、形式的整備を含む所要の改正がなされています(会社法施行規則第2条第3項第14号及び第20号、会社計算規則第126条第2項、第134条第7項)。

3.施行時期

公布の日(2022年12月26日)から施行されます。

ただし、いわゆるウェブ開示によるみなし提供制度に関する改正規定(上記2(2))は、2023年3月1日から施行されます。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえたウェブ開示の対象拡大に関する特例措置((会社法施行規則第133条の2及び会社計算規則第133条の2、以下「特例措置」という。)との適用時期の関係は、以下のとおりであることが示されています(「会社法施行規則等の一部を改正する省令案」 に関する意見募集の結果について第3意見の概要及び意見に対する当省の考え方 2②)。

  • 定時株主総会の招集手続を開始した日(すなわち、取締役会で定時株主総会の招集を決議した日)が2023年2月28日よりも前であっても、2023年3月1日以降に招集通知を発出する場合には、本改正後の規定が適用される。
  • 2023年2月28日までに特例措置を開始している場合には、会社法施行規則第133条の2及び会社計算規則第133条の2が適用され、定時株主総会の日から3か月が経過する日が2023年2月28日よりも後の日である場合であっても、当該措置が継続する限り、これらに規定に基づき、株主に対して提供したものとみなされるものと解される。

執筆者

会計プラクティス部
シニアマネジャー 山田 桂子

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