本連載は、日経産業新聞(2022年4月~5月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。
ブロックチェーンゲームの特徴~従来のゲームとの違い
前回に続き、アプリケーションの観点からメタバースについて解説します。
メタバースの基本構造であるWeb 3.0との親和性が高い分野と言われているのが、ゲームなどのインタラクティブなユーザー参加型コンテンツです。世界で最初のメタバースの取組みと言われる「セカンドライフ」も、ゲームと同じようにユーザーが体験できるコンテンツであったと言えるでしょう。
2021年ごろからの世界的なNFT (非代替性トークン)への注目度の高まりとともに、「ブロックチェーンゲーム」という新たなゲームの分野が盛り上がりをみせています。
特筆すべき点は「Play to Earn(ゲームをプレイして稼ぐ)」と呼ばれる仕組みで、ユーザーはゲームを楽しむだけでなく、同時にお金を稼ぐことも可能になります。フィリピンをはじめとした東南アジアの貧困層の若者たちが、このようなゲームで生計を立てているというニュースが日本でも話題になりました。
従来のゲームコンテンツとは何が違うのでしょうか。
最も大きな違いはゲーム内で使われるアイテムの所有権です。従来のゲームではゲーム会社が作ったコンテンツの「所有権」はゲーム会社にあり、ユーザーには「使用権」のみが与えられていました。
たとえば、オンラインゲームやソーシャルゲームでは、ゲームのサービスが終了した時点でそれまでにユーザーが頑張って獲得した有料アイテムも、消滅あるいは価値がなくなってしまいます。
一方、ブロックチェーンゲームでは、アイテムはNFT化され、その売買にはイーサリアムなどの仮想通貨が利用されます。購入したアイテムはユーザーのデジタルウォレットに保存されるため、そのユーザーの所有物となります。さらに、ブロックチェーンゲームで使用されるアイテム自体もブロックチェーン上の取組みのため、将来そのサービスが終了したとしても、ユーザーはアイテムを他のブロックチェーンゲームで使用したり、あるいは他のユーザーと価値交換や売買したりすることもできるのです。
ブロックチェーンゲームは現時点で、従来のゲームに比べてコンテンツの種類が限られます。30年以上にわたる歴史を持つゲーム業界は、これまでに数えきれないほど多種多様なジャンルのゲームを開発、提供しています。
ゲーム端末もゲーム専用機のほか、パソコンやスマートフォン、最近では米メタ(旧フェイスブック)がゲーム用VRヘッドセットを発表するなど、選択肢が広がっています。
一方、ブロックチェーンゲームは、ボードゲームのようにプレーヤーと対戦相手が決まった順番で対戦するターン制ストラテジーゲームやデジタルカードゲームなどにジャンルが限られ、また端末もスマートフォンとパソコンが主流であり、今後の成長が期待されます。
次回は、より広い観点でメタバースビジネスの取組み事例を紹介します。
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執筆者
KPMGコンサルティング
ディレクター ヒョン・バロ
日経産業新聞 2022年4月22日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日経産業新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。