第三者との契約に基づき使用制限が課されている要求払預金(IAS第7号に関連)-IFRS-ICニュース

IFRS解釈指針委員会ニュース -「第三者との契約に基づき使用制限が課されている要求払預金(IAS第7号に関連)」については、2022年4月のIASB審議会において審議された内容を更新しています。

「第三者との契約に基づき使用制限が課されている要求払預金(IAS第7号に関連)」については、2022年4月のIASB審議会において審議された内容を更新しています。

関連基準

IAS第7号「キャッシュ・フロー計算書」

概要

IFRS-ICは、第三者との契約に基づき使用制限が課された要求払預金が、キャッシュ・フロー計算書及び財政状態計算書の「現金及び現金同等物」を構成するか否かについての質問を受けました。前提となるケースは、以下のとおりです。

  • 要求払預金自体には、企業が当該要求払預金として保有している金額を引出し、利用することを妨げる条項は付されていない。
  • 第三者との契約に基づき、企業は一定の残高を当該要求払預金に維持し、特定の目的にしか当該預金を利用しないとする義務を負っている。企業が目的外でこの残高を使用した場合、これは当該第三者に対する契約上の義務違反となる。

 

ステータス

IFRS-ICの決定

2021年9月のIFRS-IC会議では次のとおり指摘がなされました。

キャッシュ・フロー計算書における「現金及び現金同等物」

  • IAS第7号第6項は、現金を手許現金と要求払預金からなるとしている。同項の定義以外に、ある項目が現金として適格であるか否かを決定する要求事項はIAS第7号にはない。
  • IAS第7号及びIAS第1号の現行の要求事項は、以下のとおり使用制限が課されていることを理由にして「現金及び現金同等物」から排除されないことを示している。

a. IAS第7号第48項は、保有する現金及び現金同等物の残高のうち、当該企業グループが利用できない重要な金額に関する情報を開示することを要求している。

b. IAS第1号第66項(d)は、当該資産を交換すること又は負債の決済に使用することが報告期間後少なくとも12か月にわたり制限されている場合を除き、現金又は現金同等物を流動資産として分類することを要求している。

IFRS-ICは、第三者との契約に基づき要求払預金の使用が制限されるとしても、そのような制限によって預金の性質が変化し、IAS第7号の現金の定義を満たさなくなるのでなければ、当該預金が現金でなくなることはないと結論を下しました。本ケースにおける、要求払預金として保有する金額についての契約上の使用制限は、企業が当該要求払預金を自由に引き出せるという預金の性質を変えるものではありません。よって、この要求払預金はキャッシュ・フロー計算書における「現金及び現金同等物」を構成するとIFRS-ICは結論を下しました。

 

財政状態計算書における表示について

  • − IAS第1号第54項(i)は、企業が財政状態計算書に現金及び現金同等物の金額を示す項目を掲記することを要求している。
  • − IAS第1号第55項は、第54項に挙げられた項目以外についても、企業の財政状態を理解するうえで目的適合性がある場合には、財政状態計算書上に追加的な項目で表示することを要求している。

したがって、IFRS-ICは、本ケースにおける要求払預金は財政状態計算書において現金及び現金同等物として表示し、企業の財政状態を理解するうえで目的適合性がある場合には、要求払預金を別掲すると結論を下しました。

また、IAS第1号第66項(d)を適用し、報告期間後少なくとも12か月にわたり交換又は負債の決済に使用することが制限されているのでない限り、この要求払預金は流動資産に分類すると指摘しました。

 

開示

  • IAS第7号第45項は、現金及び現金同等物の内訳を開示することを要求している。よって、企業は要求払預金について現金及び現金同等物の内訳として開示することになる。
  • また、以下についても追加開示の必要性を検討する:
    • IFRS第7号「金融商品:開示」の流動性リスクに関する開示要求に関して、金融商品から生じるリスク、及びそのリスクがどのように管理されているか
    • IAS第7号及びIFRS第7号の要求事項に基づく開示では、要求払預金についての制限が企業の財政状態に与える影響を財務諸表利用者が理解するのに不十分な場合、IAS第1号第31項を踏まえた追加的な情報の開示

IFRS-ICは、現状のIFRS基準の原則及び要求事項が、第三者との契約に基づき使用制限が課された要求払預金が、キャッシュ・フロー計算書及び財政状態計算書の「現金及び現金同等物」を構成するか否かについて決定するうえでの適切な基礎を示していると判断し、本件を基準設定プロジェクトの作業計画に追加しないことを決定しました。

本アジェンダ決定の内容は、IASB審議会の2022年4月の会議で検討され、IASB審議会が反対しなかったため、アジェンダ決定として確定し、IFRIC Update(2022年3月)の追補として公表されました。

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