ESG要素の情報ニーズを踏まえた企業開示 ―日本企業はどのような対応が必要なのか

経営や投資のテーマとして、ESG要素への注目が全世界的に高まっています。

経営や投資のテーマとして、ESG要素への注目が全世界的に高まっています。

経営や投資のテーマとして、ESG要素への注目が全世界的に高まっています。背景には、2006年に制定された責任投資原則でESG要素の考慮が示されたほか、国連が2015年に定めた「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(SDGs)による貧困や格差、ジェンダー、環境問題などへの取組みに、企業の積極的関与が求められていることが要因として挙げられます。同時に、ESGに関する課題は社会的な課題として広く認識されているため、適切な対応がされていない企業への持分に対する投資は中長期的に高いリターンを得られないという認識が共有されてきたことも重要な要因としてあります。

こうした環境変化を踏まえ、企業開示に対する期待も国内外で急激に変化しており、これを踏まえ、日本ではコーポレートガバナンス・コードの見直しが予定されています。このような潮流のなかで、投資家との対話にあたって重要な有価証券報告書を作成する財務・経理部門に求められる役割は一層大きくなっています。また、財務・経理部門以外の関連部門も関与した全社的な体制の強化も必要となります。本稿では、こうした点について概説します。なお、本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

POINT 1
全世界的な経営テーマとしてESGへの注目が高まっている。背景には、気候変動を含め、事業環境の大きな変化がある。同時に、投資家のESG要素に対する意識も急速に高まっており、今やESG要素に関する情報は投資判断において不可欠なものとの認識が拡がっている。

POINT 2
当該変化を受け、企業開示に対する期待は急激に変化している。具体的には、わかりやすく比較可能な測定指標を示しつつ、企業価値創造に向けた取組みについてストーリーを語ることが企業経営者に期待されている。

POINT 3
こうした中、有価証券報告書の記述情報について、開示高度化に向けた取組みを進めていくことが期待される。その際、財務・経理部門の機能を強化するとともに、異なる専門性を集結させ、わかりやすい開示を行っていくことが必要である。
 

I.今なぜESG要素が重視されているのか

昨今、地球環境を含めて、企業経営を取り巻く環境が大きく変わっています。従来であれば、地球環境は事業活動にかかわらず変わらない「 普遍 」的なものと捉えても大きな問題はなかったかもしれません。しかし、大規模災害の発生や感染症の世界的流行など、ここ数年でこの前提が大きく揺らいでいます。著しく変化する外部環境に目配りしないと、中長期的に事業が成り立たないことが明らかな時代になっているのです。

こうした環境変化を受けて、全世界的に、経営テーマとして、「ESG」への注目が高まっています。ESGとは地球環境(Environment)、社会(Society)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったものです。

このうち、「 E(環境)」については温室効果ガス排出量の爆発的な増加やその累積的影響を踏まえた空気中・海水中の温度の上昇などの問題が大きな社会課題となっています。また、「 S( 社会 )」の要素については、これまで環境問題と比較すると重要度・緊急度の認識が必ずしも高くありませんでしたが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により従業員の健康・安全が一層意識されるようになったほか、性別や地位による不平等への関心も急速に高まっています。さらに、「 G( ガバナンス)」については、変化するリスクを踏まえて自社を取り巻くリスクがどのように変化し、それにあわせて経営方針や経営戦略をどのように適合させていくべきかといった点について戦略的な議論が十分にされているかといった観点から注目度が増しています。

ESGへの注目が高まった背景として、 SDGs( 持続可能な開発目標 )の達成に向けた取組みへの社会的な要請があります。 SDGsでは、貧困や格差、ジェンダー(性別)、環境問題などについて、2030年までに是正を目指す17のゴールが掲げられています。このゴールのほとんどすべてが、 ESGの要素と重なり合うため、「 ESG要素を考慮した投資は、SDGsを達成するための手段」と言われることもあります。

これまで、社会の不平等や環境問題については、国連を中心とする国際的な政府機関やNGO(非政府組織)が中心となり取り組んできました。しかし、こうした課題は極めて大きいため、政府や非政府組織による取組みのみで解決することは不可能です。このため、最近は、こうした課題を「市場主導のアプローチ」によって解決していこうとする動きが強くなっています。

また、企業経営者にとって最も重要な点は、こうした課題に関する取組みは、企業活動の中長期的かつ持続的な成長にとっても極めて重要だという点です。

事業におけるリスク認識の変化を示したものとして、2021年1月末に開催された世界経済フォーラムの年次総会( 通称:ダボス会議)の準備会議で公表されたグローバルリスクに関する調査報告書があります。2010 年に実施された同様の調査では地球環境に関するリスクは、発生可能性に関する認識と発生した場合における影響の大きさに関する認識の双方において上位 5 位に入っていませんでした。しかし、2021年版の報告書では、リスクの発生可能性の認識についての上位5 項目のうち4項目が「異常気象」「気候変動への対応の失敗」「人為的な環境破壊」「生物多様性の喪失」と、環境問題に関するものでした。また、発生した場合に想定される影響の大きさについての認識においても、「大量破壊兵器 」に係るリスクを除き、すべてが環境や社会問題に関するものでした。

とりわけ環境問題がここまで経営者やその他のステークホルダーから関心を集める理由として、気候変動がさらに進む場合、不可逆的な連鎖反応が生じることが広く認識されるようになったことが挙げられます。気温が1.5~2度上昇すると、北極の氷が溶けるだけでなく、海水面が上昇し、陸地が海面に沈むほか、海水の温度上昇によって水中の生態系にも深刻な影響が拡がる可能性があります。その場合、地球の一部の状況の一時的な変化に留まらず、世界全体に連鎖的に長期におよぶ影響が生じることが想定されます。さらにこうした連鎖は残念ながら不可逆的なものと考えられています。

こうした連鎖反応を食い止めるために、政府や規制当局は、後手になりながらも、さまざまな対応を講じていくでしょう。このような経営環境の変化が企業活動にも極めて大きな変化を与えることは想像に難くありません。

II.投資判断においてESG要素の情報がどのように使われているか

こうした問題意識の高まりを受けて、投資家の目線はどのように変化しているでしょうか。

世界的な投資家団体であるCFA協会による報告書「 Future of Sustainability in Investment Management」では、ESG投資の発展を、1971~2005年の「フェーズ1」、 2006~2019年の「フェーズ2」、2020年以降の「フェーズ3」と、大きく3段階に区分して説明しています。

フェーズ1では、1997年に気候変動への国際的な取組みを定めた京都議定書が締結され、2005年に同議定書の発効がされた等の事象がありましたが、この時期では投資判断においてESGの要素は必ずしも十分には意識されていませんでした。

しかし、フェーズ 2に入ると、投資判断においてESG要素への配慮が高まってきます。代表的な出来事は、2006年の国連投資責任原則( Principles for Responsible Investment:PRI)の採択です。これを契機に、投資プロセスにESG要素を取り入れていこうという動きが大きくなりました。

さらに、2020年以降は、ESG投資がメインストリームなものになっています。米国最大手の資産運用会社であるブラックロックのラリー・フィンク会長兼CEOから投資先のCEOに宛てられたレターにおいて、ESG要素に関する情報開示が重要であるとの認識が強調されたことは、メディアにも大きく取り上げられました。

また、CFA協会が2020 年に実施した調査では、ESG要素を考慮した投資を実施している割合は既に85%にも上っている旨が報告されています。なぜここまでESG投資が拡がっているのでしょうか。これにはさまざまな理由が考えられますが、調査では「投資リスクをマネージするため」という回答が最も多くなっているほか、「アセットオーナーの要請に対応するため」との回答が続いており、アセットマネジャー、アセットオーナーの双方でESGへのリスク意識が高まっていることが読みとれます。また、「財務リターンを向上するため」という回答も上位に上がっており、ESGに配慮することは投資リターンを上げるための重要な手段であるとの認識が拡がっていることも垣間見えます。

それでは、ESG投資がメインストリーム化しているとして、具体的にどのような手法がとられているのでしょうか。この点、前述のCFA協会による調査結果では、「 投資判断プロセスへのESG要素の融合( ESG Integration )」が最も多く挙げられています。これは一昔前からすると画期的と言えるかもしれません。これまで、投資判断においてESG要素がネガティブスクリーニングの要因として用いられることが多かった一方で、現在では投資判断の不可欠な一部として組み込まざるを得なくなっていることを物語るものだからです。

III.今どのような開示が求められるか

ESG要素に対する投資家の意識変化を受けて、企業に求められる開示も変化しています。事業環境が大きく変化する中、企業価値を持続的に高めるための取組みが評価されるためには、足元の業績を説明するだけでなく、経営者自らが自分の言葉で企業価値をどのように高めているかを説明することが求められています。また、説明にあたっては、ダイナミックに変化する環境において重要な課題にどのように対応していくかについて、会社の存在意義や使命と照らし合わせながら、経営方針や経営戦略を説明することが求められます。

自社が現在どのような経営環境下にあり、「E(環境)」や「S(社会)」の要素を含め、事業等のリスクについてどのような認識を持ち、どのようなリスクを受容していくのか。また、企業活動を通じて価値を創造していくプロセスの中で、どのようなインプットを用いてアウトプットを生み出し、それによってどのように社会にインパクトを与えていくのか。経営方針や戦略との関係で、当期の業績はどのように評価されるべきなのか。こうした点について、財務情報だけでなく、非財務情報も用いながら、ステークホルダーに対して丁寧に説明していく姿勢が企業経営者に求められるようになっているのではないでしょうか。

では、こうした説明を効果的にするには、具体的にどのようにすればよいでしょうか。具体的な検討にあたっては、国際統合報告評議会(IIRC)が2013年に発行した「 国際統合フレームワーク( 2021年に改訂)」(以下「 IIRCフレームワーク」という) が参考になると考えられます。IIRCフレームワークでは、「 財務資本 」、「製造資本」、「知的資本」、「人的資本」、「社会・関係資本」、「自然資本」 の6つを資本として企業活動を説明することが示されています。図表1「 IIRCフレームワークにおける価値創造プロセス」は、同フレームワークを図示したものですが、タコの足に類似していることから、「 オクトパスモデル」と呼称されることもあります。

図表1

財務諸表の作成にあたっては、維持すべき資本として「 財務資本( financial capital )」のみが意識されていますので、 IIRCのフレームワークにおける6つの資本の考え方は従来と大きく異なるコンセプトとも考えられます。また、6つの資本のうち、「人的資本」、「社会・関係資本」、「自然資本」の3つは、ESGにおける「E(環境)」および「 S( 社会 )」と特に関連性が強いといえます。IIRCフレームワークでは、この6つの資本をインプット・アウトプットの双方において考慮し、どのように社会的な影響を実現したか(アウトカムにつなげたか)を報告することが促されています。

企業経営においてESG要素について語る場合、IIRCフレームワークの考え方が参考になる部分は多いと思います。また、IIRCフレームワークによった開示をするためには、財務・経理部門だけでなく、多くの関係者による協働が必要となり、これによって統合的な思考( integrated thinking)が促される点も重要です。統合的な思考は、企業報告に留まるものでなく、経営方針や経営戦略を考えることと同義とも考えられます。このため、IIRCフレームワークを参照しつつ、6つの資本の流れを意識しながら、企業活動を通じてどのような社会的影響を与えたか(または、与えるか)について検討し、説明していくことは、開示に留まらない重要な意味があるものと考えられます。

IV.開示高度化の出発点「マテリアリティ」の概念

こうした観点から企業報告を行うにあたって出発点となるのが「 何を重要課題と考えているか」の説明です。これは、「 マテリアリティ」の説明とも言われます。

「マテリアリティ」をどのように説明するかについては、考え方も実務も、現状さまざまです。特に最近、「マテリアリティ」については、大きく「ダブル・マテリアリティ」と「ダイナミック・マテリアリティ」という2つの考え方が示されています。

「ダブル・マテリアリティ」とは、「企業が環境や社会に与える影響」と「環境や社会が企業に与える影響」を別のものとして企業にとっての重要な課題を評価する考え方です。このうち、後者が「 財務的マテリアリティ(financial materiality)」に該当します。これに対して、「 ダイナミック・マテリアリティ」という考え方もあります。これは、「企業が環境や社会に与える影響」は短期的には企業業績に影響がないとしても、環境や社会に悪影響を与える企業行動はNGO団体やメディア報道が問題視することで、政府や規制当局から新たに規制が課されることになり、結果的に企業業績にも影響が及ぶとする考え方です。こうした考え方に立つ場合、ダブル・マテリアリティにおける「企業が環境や社会に与える影響」と「環境や社会が企業に与える影響」は、中長期的にみれば一体不可分のものであると考えられるかもしれません。こうした考え方による場合、重要な課題の識別も異なったものとなるかもしれません(図表2参照)。いずれにせよ、重要な課題の識別は、 ESG要素を踏まえた開示の出発点となるものであり、識別に至る思考プロセスを丁寧に説明することは極めて重要と考えられます。

図表2

V.ESG要素に係る取組みの達成度の測定

次に、ESG要素に関する取組みの達成度をどのように測定するかが重要となります。これは、ESG要素は容易に貨幣的に測定できないものが多い一方で、数値で測定せずに定性的な情報だけによる場合、企業にとって取組みを説得力ある形で説明できないほか、投資家にとっても客観的で比較可能な指標なしに適切な評価をすることが困難なためです。このため、何等かの形で目標を測定可能な形(KPI)に落とし込み、KPIの達成度合いを開示することが重要となります。

この点、2020年11月に世界経済フォーラム(以下「WEF」という)が「ステークホルダー資本主義の測定指標」と呼ばれる報告書を公表しています。同報告書では、「ガバナンス」「地球環境」「ヒト」「繁栄(持続的成長)」の4つのテーマについて、21個のコアな指標と34個の補助的に使用する指標が提示されています(図表3参照)。このうち、「 ガバナンス」については、企業の目的、取締役会の構成、ステークホルダーとの対話、贈収賄への対応、通報制度、リスクおよび機会の事業プロセスへの統合について、コアな指標を開示すべきとされ、開示における考え方が説明されています。

次に、「地球環境」については、温室効果ガスの排出量、TCFD提言の適用状況、土地の利用を踏まえた生態系への影響の削減、水資源が枯渇している地域における水資源の消費量等についてコアな指標とその考え方が説明されています。

また、「ヒト」に関しては、多様性の尊重、報酬支払いの平等、賃金水準、児童労働・強制労働の実態、健康と安全、研修体制についてコアな指標を開示すべきとされています。

さらに、「繁栄」については、雇用者数や退職率、経済成長への貢献、資本的支出、研究開発に関する支出や、税金の支払いがコアな指標を設定する対象として挙げられています。

WEFによる報告書は、こうした項目を可能な限り数値で示して客観的に比較できるようにすることによって、ステークホルダーの情報ニーズを満たそうとするもの です。

2021年1月末のダボス会議の準備会合では、61のグローバル企業(日本企業7社を含む)がこれらの測定指標に従った開示をするという声明が出されており、今後開示される情報が注目されます。

図表3

VI.有価証券報告書の開示高度化に向けたヒント

ここまでに示した視点を踏まえると、有価証券報告書の開示高度化を進める際に、どのような点を意識すべきでしょうか。

2020年3月以降、有価証券報告書における記述情報の開示の拡充に向けた取組みが本格的に進められています。当該取組みでは、「経営方針、経営環境および対処すべき課題」において、ESG要素に関する環境の変化も踏まえ、企業が事業目的をどのように実現していくか、また、どのように中長期的に価値を創造するかについて説明することが期待されています。

また、「事業等のリスク」においては、翌期以降の事業運営についてどのような不確実性やリスクがあるか、当該リスクがいつ顕在化する可能性があり、それに対してどのような対応を講じるかについて説明することが期待されています。とりわけ、日本では、2020年9月に政府が温室効果ガス排出実質ゼロを目指す「ネットゼロ宣言」を発表したことを踏まえ、これらに係る規制や達成目標の設定が見込まれます。事業等のリスクの開示にあたっては、こうした新たな規制が導入されることによって自社の製品やサービスの需要が変化するリスクや対応について説明が重要になっていくと考えられます。また、日本では、気候変動に関するリスクに加えて、場合によっては、地震によるリスクが重要と判断される場合があるかもしれません。このため、事業等のリスクの記載にあたっては、こうした点について丁寧な説明が期待されます。

さらに、「経営者による財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の検討と分析(以下「MD&A」という)」の記述において、ESG要素等も踏まえて設定された目標が当事業年度においてどのように達成されたか/されなかったのかについて、説明することが期待されます。その際、経営環境、経営方針や経営戦略、事業等のリスク、リスクを踏まえた経営成績といったそれぞれの事項について「つながり」を意識しながら記載することが極めて重要です。個々の課題や対応をバラバラに記述するのではなく、1つの大きな青写真をイメージしながらつながりを意識して価値創造に向けたストーリーを語ることが読者にとってわかりやすい開示につながります。そのためには、財務・経理部門だけでなく、関連部門も共に全社一丸となって一つひとつ課題を解決するよう、開示への取組みの姿勢を転換していくことが一層重要になってきます。

加えて、日本では、2021年から2022年にかけて東京証券取引所における新市場区分の適用が開始されるほか、コーポレートガバナンス・コードの改訂および改訂後のコードの適用が予定されています。改訂後のコードでは、上場会社に対してサステナビリティに関する取組みについて開示の拡充が促されるほか、プライム市場上場企業には気候変動に関する開示についてTCFD提言も参考にして開示の質・量の充実が促されることが予想されます。

こうした環境変化を踏まえると、財務・経理部門に所属する者にとっても、これまで必要とされてこなかった素養が求められるようになるでしょう。これまでの説明は、主に記述情報への影響に焦点を当ててきましたが、気候変動リスクを含むESG要素の情報開示は記述情報に限ったものではありません。2020年11月には、国際会計基準審議会(IASB)が気候変動リスクをIFRS基準に基づく財務諸表においてどのように反映させるべきかについて教育文書を公表しており、国際的には、気候変動リスク等を財務諸表により適切に認識・表示・開示していくことも強く求められています。こうした点を踏まえると、経理・財務部門に所属する者は、より広範な知見が必要になるのかもしれません。

日本では、有価証券報告書の作成にあたって、財務諸表については財務・経理部門が作成し、記述情報は総務・法務部門が作成し、それぞれの記述について大きな不整合がないかという観点からチェックするといった実務が多かったのではないかと考えられます。このため、経理・財務部門にとっては、ESG要素は総務やIR部門が対処するものと考える傾向があるのかもしれません。しかし、上述のような環境の変化を踏まえると、今後は、有価証券報告書の作成にあたっては、多様な専門性を集結させていかない限り、ステークホルダーからの情報ニーズに応えられなくなるのではないでしょうか。

海外の投資家の方とお話していると、日本企業に向けられる期待は大きいと感じる一方で、日本企業の開示のあり方に非常に厳しい眼が向けられていることも感じます。

企業を取巻く経営環境の変化はとても速く、そうした中で有価証券報告書に求められる情報ニーズも急速に変化しています。企業経営者に対しては、中長期的な視点・視野からどのように企業価値を高めていくかについて、ESG要素に関する課題に着目しながら、これまで以上にわかりやすく説明することが求められています。また、こうした開示に至るまでの思考や検討のプロセスが強い経営を培っていくものと考えられます。

あずさ監査法人は、こうした企業経営者が抱える開示高度化に向けた課題の解決に貢献していきたいと考えています。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
開示高度化推進室長 
関口智和/パートナー

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