【第18回~TCFDを旅する~】EUタクソノミーとESG・サステナビリティ開示2
2019年11月に成立したEUのESG・サステナビリティ関連開示ルールの概要を解説します。
2019年11月に成立したEUのESG・サステナビリティ関連開示ルールの概要を解説します。
1. EUのサステナビリティ関連開示ルール
(1) はじめに
EUは2019年11月に“REGULATION (EU) 2019/2088 on sustainability - related disclosures in the financial services sector”(金融サービスセクターにおけるサステナビリティ関連開示規則、Sustainable Finance Disclosure Regulation:SFDR)を採択しました。その適用は、2021年3月からとされています。
この開示ルールは、第17回「EUタクソノミーとESG・サステナビリティ開示1」でご紹介したEUタクソノミーと深く結びついており、サステナビリティに関連する用語の定義はEUタクソノミーと共通になっています。
SFDRでは、金融サービスセクターでメインプレイヤーとなる金融市場参加者(financial market participant)と金融アドバイザー(financial advisor)に対して契約前、契約後のそれぞれの期間を対象に彼ら自身(会社レベル)とその取扱う金融商品(金融商品レベル)に関する開示義務を負わせています。
(2) サステナビリティに有害な影響を与える事象に関する会社レベルの開示
サステナビリティに有害な影響を与える場合には、その投資がサステナブルな投資に該当しない可能性が高くなり、ESG志向の投資家の意思決定に影響することになります。そこで、SFDRは金融市場参加者(資産運用会社、投資会社など)に対して会社レベルでの開示を要請しています。
まず、金融市場参加者がサステナビリティ・ファクターに基づく投資意思決定においてサステナビリティに与える主要で有害な影響を考慮している場合には、販売しようとする金融商品のタイプ、主要で有害な影響を与える活動の大きさと性質を十分に考慮したデューデリジェンスポリシーに関するステートメントをウェブサイトで公表することを要請しています。ステートメントの中には、サステナビリティに与える主要で有害な影響の特定とプライオリティ付けに関するポリシー及びインディケーターに関する情報、主要で有害な影響に対する計画されたアクションなどを含まなくてはなりません。
一方で、金融市場参加者が、サステナビリティ・ファクター(ESGのうちEとS)に基づく投資意思決定においてサステナビリティに与える有害な影響を考慮していない場合には、考慮しなかった理由、有害な影響を考慮する意思があるのか、あるとすればいつなのかを同様にウェブサイトで公表しなくてはなりません。
次に金融アドバイザー(銀行、資産運用会社など)は、投資アドバイスしようとする金融商品のタイプ、その活動の大きさと性質を十分に考慮してサステナビリティに与える主要で有害な影響を考慮してアドバイスしているかどうかに関する情報をウェブサイトで公表することとされています。これらを考慮していない場合には、その理由と考慮する意思があるのか、あるとすればいつなのかを同様にウェブサイトで公表することになります。
(3) サステナビリティに有害な影響を与える事象に関する金融商品レベルの開示
2022年12月30日までに、金融市場参加者が販売しようとする金融商品に関しては、その金融商品がサステナビリティ・ファクターに与える主要で有害な影響を考慮したものであるか、どのように考慮したのかについて明瞭かつ根拠に基づいた説明、及び定期開示においてサステナビリティ・ファクターに与える主要で有害な影響に関するステートメントを開示することを要求しています。
(4) インデックス利用に関する開示など
その他の主な開示としては、インデックスを利用することでその金融商品をサステナブルな投資であるとしている場合には、そのインデックスがどのようにサステナブルな投資目的と整合しているのかに関する情報、そのインデックスが市場で広く用いられている他のインデックスとどのように異なり、どのような理由でサステナブルな投資目的と整合していると判断したのかに関する説明を開示することになります。
また、EやSを促進するものとして金融市場参加者が販売する金融商品に関しては、EやS、その他のサステナブルな投資目的に関する説明、対象とする投資目的に対するサステナブルな投資であると評価・測定した手法、モニタリング手法、評価・測定に関連するサステナビリティに関するインディケーター、その金融商品がサステナビリティに与える影響の概要を開示することとされています。
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KPMGジャパンでは、GSDアプローチ※によるTCFDアドバイザリーサービスを提供しています。
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※ GSDアプローチとは、Gap analysis(TCFD最終提言とのギャップ分析)、Scenario analysis(シナリオ分析)、Disclosure analysis(開示内容・手法の妥当性分析)を指します。
執筆者
KPMGジャパン
コーポレートガバナンスCoE LEAD of TCFD group
テクニカルディレクター/公認会計士
加藤 俊治