ASBJ、四半期決算における「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方」を公表
企業会計基準委員会(ASBJ)は、2020年6月26日にASBJの議事概要「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方」を更新し、四半期決算における考え方を明らかにしました。ASBJは、2020年4月10日に本件の議事概要を公表し、2020年5月11日に追補を公表しています。
ASBJは、2020年6月26日にASBJの議事概要「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方」を更新し、四半期決算における考え方を明らかにしました。
ハイライト
日本公認会計士協会から公表された以下の資料においても、監査人に対し本議事概要に留意することを求めています。
I. 議事概要「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方」(以下「本議事概要」)の内容
本議事概要は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の広がりにより、特に将来キャッシュ・フローの予測を行うことが極めて困難となっている状況において、以下のとおり、会計上の見積りを行う上での留意事項を示しています。
(1)「財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて、その合理的な金額を算出する」上では、新型コロナウイルス感染症の影響のように不確実性が高い事象についても、一定の仮定を置き最善の見積りを行う必要がある。
(2)新型コロナウイルス感染症の影響については、会計上の見積りの参考となる前例がなく、今後の広がり方や収束時期等について統一的な見解がないため、外部の情報源に基づく客観性のある情報が入手できないことが多いと考えられる。この場合、新型コロナウイルス感染症の影響については、今後の広がり方や収束時期等も含め、企業自ら一定の仮定を置くことになる。
(3)企業が置いた一定の仮定が明らかに不合理である場合を除き、最善の見積りを行った結果として見積もられた金額については、事後的な結果との間に乖離が生じたとしても、「誤謬」にはあたらない。
(4)最善の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に関する一定の仮定は、企業間で異なることになることも想定され、同一条件下の見積りについて、見積もられる金額が異なることもある。このような状況における会計上の見積りについては、どのような仮定を置いて会計上の見積りを行ったかについて、財務諸表の利用者が理解できるような情報を具体的に開示する必要があると考えられ、重要性がある場合は、追加情報としての開示が求められる。
II. 議事概要「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方(追補)」(以下「本議事概要追補」)の内容
本議事概要追補では、上記(4)の「重要性がある場合」については、当年度に会計上の見積りを行った結果、当年度の財務諸表の金額に対する影響の重要性が乏しい場合であっても、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある場合には、新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定に関する追加情報の開示を行うことが財務諸表の利用者に有用な情報を与えることになると思われ、開示を行うことが強く望まれることが示されています。
III. 四半期決算における開示
2020年6月26日に更新された本議事概要は、上記I、IIで示した会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方に関して、四半期決算における考え方を明らかにしています。
(1)前年度の財務諸表において上記I(4)に関する追加情報の開示を行っている場合で、四半期決算において新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定に重要な変更を行ったときは、他の注記に含めて記載している場合を除き、四半期財務諸表に係る追加情報として、当該変更の内容を記載する必要がある。
(2)前年度の財務諸表において仮定を開示していないが、四半期決算において重要性が増し新たに仮定を開示すべき状況になったときは、他の注記に含めて記載している場合を除き、四半期財務諸表に係る追加情報として、当該仮定を記載する必要がある。
(3)前年度の財務諸表において上記I(4)に関する追加情報の開示を行っている場合で、四半期決算において新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定に重要な変更を行っていないときも、重要な変更を行っていないことが財務諸表の利用者にとって有用な情報となると判断される場合は、四半期財務諸表に係る追加情報として、重要な変更を行っていない旨を記載することが望ましい。
執筆者
有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部
マネジャー 吉原 智子