「IFRS第17号『保険契約』 - 修正案の解説とIFRS17導入における課題」開催報告
本稿は、2019年8月30日に開催された、保険会社の実務担当者を対象としたセミナーについての報告です。
本稿は、2019年8月30日に開催された、保険会社の実務担当者を対象としたセミナーについての報告です。
2019年8月30日、保険会社の実務担当者を対象としたセミナー「IFRS第17号『保険契約』 - 修正案の解説とIFRS17導入における課題」を経団連会館カンファレンスにて開催しました。IFRS17の最終基準書が2017年5月に国際会計基準審議会(IASB)より公表されて以降、KPMGジャパンでは、毎年、IFRS17をテーマにしたセミナーを開催して参りました。
今回で3回目を数える当セミナーでは、まず第1部として、2019年6月26日にIASBより公表された公開草案「IFRS第17号 保険契約の修正」をテーマとし、公開草案の公表に至った経緯や公開草案の中で修正された論点、修正されずに残された課題などについて、あずさ監査法人 金融事業部 パートナーの蓑輪康喜と李煥洙より解説いたしました。修正された論点に関する解説内容にご興味のある方は、下記冊子「保険契約(IFRS第17号の修正)New on the Horizon/IFRS最新提案の解説」をご覧ください。
第2部では、公開草案に対する評価やIFRS17導入に向けた実務上の課題などをテーマとして、さまざまな立場の利害関係者の方々によるパネル・ディスカッションを実施しました。パネリストとして、2011年にIASBの理事に就任され、2019年6月にご退任されたばかりの鶯地隆継様をお招きし、財務諸表利用者のお立場から、水口啓子様(株式会社日本格付研究所 審議役兼チーフ・アナリスト)、財務諸表作成者のお立場から、西村昭様(アクサ生命保険株式会社 バリュエーションヘッド)、荒川潔様(東京海上ホールディングス株式会社 経理部マネージャー)にご登壇いただくとともに、モデレーターは、IASB元理事である山田辰己様(中央大学商学部 特任教授)にお務めいただきました。また、会計監査人の立場から、三輪登信(KPMGジャパン 保険カントリーヘッド)が登壇しました。
ディスカッションは、
- 公開草案公表までの背景と財務諸表利用者として総括的評価
- 公開草案で修正された論点に対するそれぞれの立場からの着目点
- IFRS17導入に向けた課題
- 基準最終化までのハードル
をテーマに、意見が交わされました。鶯地様からは「IFRS17の最終化には利害関係者の方からの意見が重要になってくる」とお話いただき、基準設定主体として苦労した点や議論の背景についてご紹介いただきました。また、他のパネリストの方々からは、「解釈の幅がある論点について比較可能性をどう担保するか」など、利害関係者としての率直な懸念などが提起されました。どのお話も、IFRS17の導入に深くかかわってきた方々のご意見として示唆に富んでおり、参加者の皆様も終始興味深く、聞き入られていました。
今後、基準の最終化に向けた議論が展開される中で、IFRS17導入にかかる実務上の課題検討は、より具体的に進むことが予想されます。KPMGジャパンでは、導入に関する課題解決に役立つよう、セミナーやホームページを通じた情報発信、導入支援サービスを実施して参ります。
執筆者
有限責任 あずさ監査法人