不動産契約における収益認識(IFRS第15号関連) - IFRICニュース2018年3月 - アジェンダ却下確定
IFRS解釈指針委員会ニュース(2018年3月) - 不動産契約における収益認識(IFRS第15号関連)については、2018年3月のIFRS-IC会議で審議された内容を更新しています。
不動産契約における収益認識(IFRS第15号関連)については、2018年3月のIFRS-IC会議で審議された内容を更新しています。
Article Posted date
25 April 2018
関連IFRS
IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」
概要
不動産開発会社(企業)は、不動産ユニット(集合住宅の一単位)を建設前に販売する契約を締結する場合、IFRS第15号第35項に照らして、収益を一定の期間にわたり認識するか、一時点で認識するか。
ステータス
IFRS-ICの決定
IFRS-ICは、2017年9月及び2018年3月のIFRC-IC会議で、要望書に記載された不動産ユニットを建設前に販売する契約におけるIFRS第15号35項の適用に関して、次の通り検討した。
- 収益が一定期間にわたり認識されるのか一時点で認識すべきかの評価には、その契約が強制される法的環境を考慮に入れて、契約の具体的な事実及び状況の評価が必要となる。
- IFRS-ICは、不動産ユニットを建設前に販売する契約について、IFRS第15号第35項の3つの条件について以下のように検討した。
(1)第35項(a)は、企業の履行によって提供される便益を、企業の履行につれ、顧客が同時に受領して消費することを要求する。不動産ユニットを建設前に販売する契約では、企業の履行が直ちに消費されない資産(すなわち、不動産)を創出するため、第35項(a)は該当しない。
(2)第35項(b)は、企業の履行が資産を創出・増価させるにつれ、顧客がその資産の支配を獲得することを要求する。支配とは、その資産の使用を指図し、その資産から残りの便益のほとんどすべてを獲得する能力を指す。第35項(b)を適用する際には、支配に関する要求事項を、企業の履行が創出・増価させる資産に適用することが重要である。それは、例えば、将来において不動産を獲得する権利ではない。また、将来において不動産を獲得する権利を売却又は担保差入れする権利は、不動産自体に対する支配の証拠ではない。顧客が不動産ユニットの建設中にその使用を指図する能力を有しているとする証拠はないため、顧客は部分的に完成したユニットを支配しておらず、第35項(b)の要件は満たされていないとIFRS-ICは判断した。
(3)第35項(c)は、(i)企業の履行が、企業が他に転用できる資産を創出せず、かつ、(ii)企業が現在までに完了した履行に対する支払を受ける強制可能な権利を有していることを要求する。BC143項によると、この要件の根底にある目的は、資産が顧客のために創出されていくにつれて、企業が財又はサービスに対する支配を顧客に移転するかどうかを判定することである。IFRS-ICは、本項の強制可能な権利の評価が、権利の存在及びその強制可能性に焦点を当てていることに着目した。企業がその権利を行使する確率や顧客が契約を解約する確率は、この評価に関連性がない。B12項は、支払を受ける強制可能な権利を企業が有しているかどうかを評価する際に、企業は契約条件を、その契約条件を補足するか又はその契約条件に優先する可能性のある法令又は判例とともに考慮すると述べている。
企業は契約で特定された不動産ユニットを他の用途に振り向けようとしても、顧客はその資産に対する権利を強制することができ、企業はこの資産を他に転用することはできず、第35項(c)の(i)の要件を満たす。しかしながら、企業は第35項(c)の(ii)に記述されているような、現在まで完了した履行について支払を受ける強制可能な権利を有していない。裁判所が契約の解約の要請を受け入れた場合には、企業は解約ペナルティーを受け取る権利しかなく、これは、現在までに完了した履行について企業に補償するものではないとの判例があるからである。
上記の検討に基づき、IFRS-ICは、要望書に記載された不動産ユニットを建設前に販売する契約においては、IFRS第15号第35項の3つの要件のいずれも満たされていないと結論を下した。したがって、IFRS第15号の第38項を適用して、収益を一時点で認識することとなる。
IFRS-ICは、2018年3月のIFRS-IC会議で、現状のIFRS基準書の要求事項が十分な判断の基礎を示していると判断し、アジェンダに追加しないことを決定した。