「KPMGグローバルサステナビリティ報告調査2022」日本版の発行

「KPMGグローバルサステナビリティ報告調査2022」日本版を発行しました。

KPMGジャパンは、ESG課題に対し自社のサステナブルな価値創造に向けた取り組みに関しての「KPMGグローバルサステナビリティ2022」日本版を発行しました。

―企業のサステナビリティ情報の報告について、58の国と地域の各上位100社、計5,800社を調査―
 
  • 日本は調査対象100社すべてがサステナビリティ報告書を発行し、主要な調査項目において、グローバル全体を上回る割合となっている
  • サステナビリティ情報に対する第三者保証を取得する割合は、グローバルでは横ばいが続くも、日本では前回(2020年)との比較で9ポイント上昇し、75%となった
  • 日本はサステナビリティ報告にマテリアリティ評価の結果を活用する割合が95%と高く、また広く社会全般におよぼす影響を含むマテリアリティを特定している割合が高いのが特徴
  • 生物多様性の喪失に関したリスクを報告する割合が増加し、特に日本では前回の4%から64%へと急増
  • 日本はサステナビリティ報告においてネガティブな側面を報告する割合が低い

KPMGジャパン(東京都千代田区、チェアマン:森俊哉)は、世界58の国と地域の各上位100社・計5,800社が、ESG課題に対し自社のサステナブルな価値創造に向けた取り組みに関して、どのような報告を行っているかを調査し、その結果をまとめた「KPMGグローバルサステナビリティ報告調査2022」(原題:Big Shifts, Small Steps: KPMG Survey of Sustainability Reporting 2022)日本版を発行しました。

企業はこれまでも、持続可能な社会の実現に向け、さまざまなステークホルダーの期待に応えるため、サステナビリティ報告に取り組んできました。今日、サステナビリティ報告の義務化や規制が進みつつあり、取り巻く状況が劇的に変化しつつあります。本調査では、今日のサステナビリティ報告の現状のほか、企業がポジティブな変化をもたらし、価値を創造しながらも、制度により求められる要件に応えるために考慮すべき事項について考察しています。

本調査結果の主なポイント

1. 日本は調査対象100社すべてがサステナビリティ報告書を発行し、主要な調査項目において、グローバル全体を上回る割合となっている

サステナビリティ報告を制度化する動きや、投資家やその他のステークホルダーからのサステナビリティ情報に対するニーズの高まりを受け、サステナビリティ報告を行う企業の割合は、約10年前の2011年はグローバル全体で64%であったのに対し、2022年は79%に上昇しました。なかでも日本は、調査対象企業100社すべてが報告を行っており、前回2020年に続き、国別では最も高い割合となりました。

また、本調査では、サステナビリティ報告に含まれることが想定されている多岐にわたる項目を調査対象としています。そのうちの主要な調査項目において、日本企業は、グローバル全体の報告割合を上回りました。それは、日本の売上上位企業におけるサステナビリティ情報開示への感度が高く、実直に取組んでいる結果が顕著に表れているといえます。

図1 主な調査結果の比較

 

N100※1

日本※2

サステナビリティ報告を実施する割合

79%

100%

年次財務報告書でサステナビリティ情報を示す割合

60%

94%

GRIスタンダードを利用した報告の割合

68%

87%

SASB基準に則した報告の割合

33%

40%

マテリアリティ評価を活用した報告の割合

71%

95%

サステナビリティ報告に対する第三者保証の取得割合

47%

75%

CO2排出量削減目標を報告する割合

71%

95%

TCFD提言に沿った報告の割合

34%

94%

生物多様性に関する報告を実施する割合

40%

64%

SDGsに関する報告を実施する割合

71%

89%

E(環境)に関するリスクを報告する割合

46%

90%

S(社会)に関するリスクを報告する割合

43%

80%

G(ガバナンス)に関するリスクを報告する割合

71%

87%

2. サステナビリティ情報に対する第三者保証を取得する割合は、グローバルでは横ばいが続くも、日本では前回(2020年)との比較で9ポイント上昇し、75%となっている

サステナビリティ報告の少なくとも一部について第三者保証を取得する企業の割合は、2015年以降、グローバル全体ではほぼ横ばいの40%台で推移しています。一方、日本企業における第三者保証の取得割合は比較的高く、今回の調査では75%と、前回の66%から上昇しました。情報の信頼性を高めることへの日本企業における関心の高さが示されているといえます。

2022年12月に金融庁の金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」が公表した報告では、サステナビリティ情報が今後策定されるであろう基準に基づいて有価証券報告書に記載される場合、法定開示における高い信頼性の確保に対する投資家のニーズや、保証に関する国際的な流れを踏まえ、保証が求められていくことが考えられるとされています。こうした動きを受けて、今後、サステナビリティ情報に対する保証を取得する割合は高まることが考えられます。

図2 サステナビリティ報告に対する第三者保証の取得割合

big-shifts-small-steps-1

   母数: サステナビリティやESGに関する報告を実施する N100企業 4,581社、およびG250企業240社

3. 日本はサステナビリティ報告にマテリアリティ評価の結果を活用する割合が95%と高く、また広く社会全般におよぼす影響を含むマテリアリティを特定している割合が高いのが特徴

企業にとって何がマテリアルであるのかを分析し、その観点で様々なインパクトについて評価することは、企業が自らの存在意義に基づき、持続的な価値を創出する経営を推進するうえでの基礎をなすものです。また、企業報告の内容を検討するうえでも、有益な出発点となります。調査の結果、サステナビリティ報告を行う企業全体の71%がマテリアリティ評価を実施していると見られます。日本企業に絞るとその割合は95%とさらに高くなっています。さらにKPMGは、企業がどのような視座からマテリアリティを評価しているのか、すなわち、企業およびステークホルダーへの影響、社会全般におよぼす影響のいずれによって評価しているのかを調査しました。その結果、グローバルでは、企業およびステークホルダーへの影響の観点からマテリアリティをとらえて報告する企業の割合が最も多く41%となりました。それが日本企業では31%にとどまる一方、企業およびステークホルダーに加え、広範な社会的影響を踏まえた分析評価に基づき報告を行う企業の割合が53%と最も多く、特徴的な結果となりました。サステナビリティ報告における記載の多くは、環境や社会、およびステークホルダーが関心を有する事項が中心となるため、日本企業のサステナビリティ報告の内容は、目的への適合性が高いといえます。

図3 マテリアリティの概念別にみた開示の割合

big-shifts-small-steps-2

   母数: サステナビリティやESGに関する報告を実施するN100企業4,581社、G250企業240社
       およびサステナビリティやESGに関する報告を実施する日本の N100企業 100社

4. 生物多様性の喪失に関するリスクを報告する割合が増加し、特に日本では前回の4%から64%へと急増

前回(2020年)のKPMGグローバルサステナビリティ報告調査では、自然や生物多様性の喪失に伴い直面するリスクについて、企業がどのように報告しているかを初めて調査しました。その後の2年間で、生物多様性喪失や自然関連のリスクが、企業やそのサプライチェーンに影響をおよぼす差し迫ったリスクとして認識されるようになり、その報告の割合も、グローバル全体で前回の23%から40%へと増加しました。日本では、その増加がさらに急激なものとなっており、前回わずか4%であったのに対して今回は64%となりました。
自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の提言や、2022年末に開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP15)で2030年までの目標を定めた「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の採択、また国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が今後のリサーチテーマの1つに生物多様性を挙げたことなどの動きは、企業における生物多様性喪失や自然関連のリスクの評価や、関連する報告を今後さらに後押しすると考えられます。

図4 生物多様性に関する報告を実施する割合

big-shifts-small-steps-3

   母数: サステナビリティやESGに関する報告を実施する N100企業 4,581社、G250企業240社、
       および日本の N100企業 100社

5. 日本はサステナビリティ報告においてネガティブな側面を報告する割合が低い

本調査では、調査の各項目において、ネガティブな影響の報告の状況についても確認しています。それらを報告する企業の割合は、グローバル全体でも高くはなく、日本ではさらに低いことがわかりました。たとえば、SDGsに対するネガティブな影響の報告は、グローバルでは10%の企業が報告しているのに対し、日本では4%となっています。シナリオ分析に基づく気候変動の潜在的な影響について報告している割合は、グローバルでは6%であるのに対し、日本は5%です。また、S(社会)のリスクの潜在的な影響を定量的に報告している割合は、グローバルでは3%であるのに対し、日本は2%、G(ガバナンス)のリスクの潜在的な影響の定量的な報告については、グローバルで2%であるのに対し、日本は1%となっています。
これまでのビジネスモデルを継続した際に、ネガティブな影響が生じることが想定される場合は、それらを明らかにしたうえで、いかに対処するかを伝える必要があります。また、サステナビリティに関連する取組みを推進するうえでは、社会や環境に対するあるポジティブな取組みが、別の課題を生じさせるというジレンマに直面すること考えられるため、ネガティブな側面も含めた偏りのない報告を行うことが、企業の責任でもあると考えます。

図5 日本企業による報告の割合が低い項目

 

N100※1

日本※2

SDGsに対するポジティブ/ネガティブ両方の影響を報告

10%

4%

環境(気候関連)リスクに関するシナリオ分析による潜在的な影響のモデル化を含む報告

6%

5%

社会リスクに関する潜在的な影響の定量化情報を含む報告

3%

2%

ガバナンスリスクに関する潜在的な影響の定量化情報を含む報告

2%

1%

 

本調査からは、項目別にみれば多くのトピックについて報告を行っている日本企業の割合が高いことが分かりました。その一方で、ネガティブな影響について報告する割合が必ずしも高いとは言えない状況であることも判明しました。
持続可能な社会の実現に向けた取組みをポジティブとネガティブの両側面から報告することで、投資家だけでなく、より広い範囲のステークホルダーと信頼と共感を高めていくことが日本企業に期待されます。

「KPMGグローバルサステナビリティ報告調査2022」について

KPMGインターナショナルは、世界58か国・地域を対象に、各国・地域の収益ランキングの上位100社、計5,800社に対し、2021年7月1日から2022年6月30日に発行された年次報告書、統合報告書、サステナビリティ報告書および企業のホームページ上で公表されている情報をもとに、企業のESG課題に対するサステナブルな価値創造に向けた取り組みの報告に焦点を当て独自に調査を実施しています。また、レポートの一部では、2021年度Fortune Global 500の上位250社に対象を絞ったデータや、前回(2020年)の調査との比較、セクターに関する調査結果も紹介しています。

The Big Shifts, Small Steps: KPMG Survey of Sustainability Reporting 2022 (英語版)
「KPMGグローバルサステナビリティ報告調査2022」日本版フルレポートはこちら


※1  調査対象である58の各国・地域の売上高上位100社(計5,800社)の割合

※2  調査対象とした日本の売上高上位100社の割合

KPMGジャパンについて

KPMGジャパンは、KPMGインターナショナルの日本におけるメンバーファームの総称であり、監査、税務、アドバイザリーの3つの分野にわたる8つのプロフェッショナルファームによって構成されています。クライアントが抱える経営課題に対して、各分野のプロフェッショナルが専門的知識やスキルを活かして連携し、またKPMGのグローバルネットワークも活用しながら、価値あるサービスを提供しています。

日本におけるメンバーファームは以下のとおりです。
有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人、KPMGコンサルティング株式会社、株式会社KPMG FAS、KPMGあずさサステナビリティ株式会社、KPMGヘルスケアジャパン株式会社、KPMG社会保険労務士法人、株式会社KPMG Ignition Tokyo

KPMGインターナショナルについて

KPMGは、監査、税務、アドバイザリーサービスを提供する、独立したプロフェッショナルファームによるグローバルな組織体です。世界143の国と地域のメンバーファームに265,000名の人員を擁し、サービスを提供しています。KPMGの各ファームは、法律上独立した別の組織体です。
KPMG International Limitedは英国の保証有限責任会社(private English company limited by guarantee)です。KPMG International Limitedおよびその関連事業体は、クライアントに対していかなるサービスも提供していません。

お問合せ