KPMGジャパン「日本の企業報告に関する調査2021」を発行

KPMGジャパンは、「日本の企業報告に関する調査2021」を発行します。

KPMGジャパンは、「日本の企業報告に関する調査2021」を発行します。

KPMGジャパン(東京都千代田区、チェアマン:森 俊哉)は、2022年4月に、「日本の企業報告に関する調査2021」を発行します。本調査は、過去7年にわたり「日本企業の統合報告に関する調査」として実施しており、第8回目となる今回は、従来から対象としている統合報告書、有価証券報告書の記述情報に加え、サステナビリティ報告書や企業ウェブサイト上のサステナビリティに関連するページ(これらを総称して、以下「サステナビリティ報告」)の記載内容も対象に分析を行いました。

調査の対象は、日経225構成企業が発行した統合報告書、有価証券報告書、サステナビリティ報告、および2021年1月~12月に「自己表明型統合レポート」を発行する国内の企業等716社が発行した統合報告書としています。

調査の結果からは、統合報告の継続的な取組みなどを通して、中長期的な価値創造ストーリーの説明のブラッシュアップを図る企業は増えているものの、マテリアリティの決定プロセスにおける経営層の関与度合いや、価値創造ストーリーの進捗やその分析の説明が十分ではない状況がみられます。また、ニーズが高まる気候温暖化に関わる内容について、TCFD提言への賛同の広がりもあり、任意の統合報告書やサステナビリティ報告では7割を超える企業が何らかの言及を行っています。しかし、法定開示資料である有価証券報告書をみると、まだ2割に満たない状況も明らかとなっています。

4月6日に予定しているフルレポート版に先立って、主なポイントを以下に列挙します。

本調査結果の主なポイント

マテリアリティについて記載する企業の増加傾向にあり、統合報告書では78%が言及

マテリアリティについて記載する割合は増加傾向にあり、統合報告書では78%、サステナビリティ報告では80%となりました。有価証券報告書においても、増加傾向ではあるものの、30%にとどまりました。

 

【図】マテリアリティの記載

マテリアリティの記載

取締役会が主体的にマテリアリティを評価する企業は、依然として少数にとどまる

上述の通り、マテリアリティについて記載する割合は増加しましたが、マテリアリティ評価プロセスにおける取締役会の関与についての説明は限定的です。取締役会が主体的に関与していると説明する割合は、最も高い統合報告書でも19%にとどまりました。

 

【図】マテリアリティ評価プロセスにおける取締役会の関与の説明

マテリアリティ評価プロセスにおける取締役会の関与の説明

戦略の達成度の説明に財務指標・非財務指標の両方が用いる企業は半数以下

統合報告書や有価証券報告書において、中長期の戦略を示す企業は7割を超えています。しかし、戦略の達成度の説明に用いられている指標の類型を調査した結果、財務指標と非財務指標の両方を用いていたのは、統合報告書で44%、有価証券報告書ではわずかに7%でした。まだ多くの企業がサステナビリティ課題に関する情報と財務情報を結び付けられていないことがうかがえる状況です。

 

【図】戦略の達成度の説明に用いられた業績指標

戦略の達成度の説明に用いられた業績指標

TCFD提言に関連した開示は、賛同企業の77%が統合報告書で記述する一方、有価証券報告書での記述は13%と大きな進展はみられず

日経225構成企業のうち、2021年12月末時点で、気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD)に賛同する184社について、統合報告書でTCFD提言に関連した言及のある割合は77%、有価証券報告書では13%にとどまり、前年からの大きな進展はみられませんでした。今回新たに調査したサステナビリティ報告においては、統合報告書と同水準の79%でした。任意の報告媒体である統合報告書やサステナビリティ報告での情報提供が先行している状況となり、年次の主たる財務報告を伴う有価証券報告書では、まだ慎重さがみられます。

 

【図】TCFD提言に沿った開示の状況

TCFD提言に沿った開示の状況

KPMGからの提言

KPMGジャパンは、今回の調査結果をふまえ、社会的存在意義に根差して成長を目指す企業が、より誠実に説明責任を果たし、より良い企業報告を目指すため、以下を提言します。

1. マテリアリティ-何が経営の意思決定の根幹となっているかを示す-

統合報告書、有価証券報告書の記述情報、サステナビリティ報告のいずれかにおいて、「マテリアリティ」に言及する企業は増加しました。しかし、それらが経営の意思決定に置いて念頭に置かれているのかは、必ずしも読み取れません。パーパス実現のために対処すべき重要な事象や課題を検討し、合意するプロセスであるマテリアリティ分析に経営陣が主体的に関与し、その結果としてマテリアルだと判断された事象が経営判断の根幹となっていることを示すことが大切です。

2. メトリクス-価値創造ストーリーの実現の進捗や実態を伝える-

将来目指す姿を実現するための中期的な戦略を説明する割合は増加傾向にあります。しかし、その進捗を示す適切なサステナビリティ関連メトリクスを伴う、財務へのインパクトを含む分析の提示は十分とは言えず、企業の現状認識が必ずしも読み取れません。パーパスの実現に向けて、中長期的な視点でサステナビリティに関連する課題を戦略に統合したならば、適切なメトリクスを選定して目標等を設定し、経年に渡りモニタリングを実施したうえで、経営者の分析や認識を報告書のなかで表明することで、価値創造ストーリーの歩みをより具体的かつ客観体に伝えられるでしょう。

3. 報告書ごとの目的を再整理する

統合的思考を実装する経営においては、自らの組織だけでなく、社会や主要なステークホルダーへの長期的な価値創造の双方に焦点をあて、ビジネスモデルを築き、さまざまな検討や施策を行っていると考えます。企業活動が経済・環境・社会に対して及ぼすインパクトは、長期の時間軸でみれば、いずれは企業価値にインパクトを及ぼす可能性があります。しかし、企業価値へのインパクトの度合いや、マテリアルとなるタイミングは、企業ごとに想定が異なります。こうしたマテリアリティの認識に基づき、報告媒体ごとに、その目的と想定利用者の関心をふまえて報告内容を整理し、企業の考えや経営実態を伝えることが、情報利用者からの適切な理解の獲得と、ステークホルダーとの対話の質の向上につながると考えます。

調査対象期間 2021年1月~12月
対象企業

統合報告書、有価証券報告書の記述情報、サステナビリティ報告の比較調査:日経225構成企業225社

統合報告書の発行企業および統合報告書に関する基礎情報の調査:「自己表明型統合レポート」を発行する国内の企業等716社 

調査方法 調査メンバー全員で判断基準を定めた上で、企業ごとに1人の担当者が、統合報告書、有価証券報告書、サステナビリティ報告を通読し、確認する方法で実施
協力 企業価値レポーティング・ラボ
(「自己表明型統合レポート発行企業等リスト2021年版」提供)

*日経平均株価(日経225)は株式会社日本経済新聞社の登録商標または商標です。

KPMGジャパンについて

KPMGジャパンは、KPMGの日本におけるメンバーファームの総称であり、監査、税務、アドバイザリーの3つの分野にわたる8つのプロフェッショナルファームによって構成されています。クライアントが抱える経営課題に対して、各分野のプロフェッショナルが専門的知識やスキルを活かして連携し、またKPMGのグローバルネットワークも活用しながら、価値あるサービスを提供しています。

日本におけるメンバーファームは以下のとおりです。

有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人、KPMGコンサルティング株式会社、株式会社KPMG FAS、KPMGあずさサステナビリティ株式会社、KPMGヘルスケアジャパン株式会社、KPMG社会保険労務士法人、株式会社KPMG Ignition Tokyo 

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