「KPMGジャパン CFOサーベイ2021」を発表
KPMGジャパンは「KPMGジャパン CFOサーベイ2021」を発表しました。今回はサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)により影響を受けるであろうCFOアジェンダに関連した質問を中心に29の設問で構成し、国内の上場企業461社のCFOから回答を得ました。
KPMGジャパンは「KPMGジャパン CFOサーベイ2021」を発表しました。
- SXを最優先課題に位置付けていると回答した企業(32%)と様子見をしていると回答した企業(12%)の間で、サステナビリティ課題に対する対応状況に顕著な差が見られた
- SX推進のためにCFOに求められる役割は、「価値創造のパートナー」、「変革のイネーブラー」、「企業価値のプレゼンター」の3つ
- 財務施策におけるCFOの関心事項は、昨年度の「現預金水準の見直し」から、「子会社資金管理」「財務ガバナンス強化」へ移行
- CFOが責任を持つ業務領域として、「IT戦略・システム企画」「リスクマネジメント」が増加
KPMGジャパン(東京都千代田区、チェアマン:森 俊哉)は「KPMGジャパン CFOサーベイ2021」を発表しました。本調査は2019年の開始以来今年で3回目となり、今回はサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)※1により影響を受けるであろうCFOアジェンダに関連した質問を中心に29の設問で構成し、国内の上場企業461社のCFOから回答を得ました。
今回の調査では、経営課題として「SXは最優先課題であり事業戦略の前提として位置付けている」と回答した企業が32%であった一方、「影響を図りかねているため様子見」と回答した企業は12%であり、2つの回答群の間でサステナビリティ課題に対する意識や対応状況に大きな差が見られました。例として、SX推進における課題として、前者では「SXを実現するための戦略の策定(29%)・実行(30%)」が挙げられ、すでに具体的なアクションへ視点が進んでいるのに対して、後者では「サステナビリティ関連課題の把握と評価(62%)」との回答が目立ちました。経営課題としてのSXのプライオリティを高めることが鍵であり、その位置づけによりSX推進のスピードに差が生じると推察され、結果として中長期的な企業価値へ影響すると想定されます。
今回の調査の結果、SXを推進し中長期的な企業価値を高めていくために、CFOは「価値創造のパートナー」、「変革のイネーブラー」、「企業価値のプレゼンター」の3つの役割を果たすことが求められると明らかになりました。
※1 サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)
サステナビリティの視点を戦略的意思決定に組み込み、ビジネスモデルのレジリエンスを高め、中長期な成果としての企業価値向上を実現するためのトランスフォーメーション
「KPMGジャパンCFOサーベイ2021」の主なポイント
1. SX推進には経営課題としてのSXのプライオリティを高めることが重要
「経営課題におけるSXの位置づけ」に関する質問において、SXは「最優先課題であり、事業戦略の前提として位置付けている」との回答は32%であった一方、「影響を図りかねているため様子見」との回答は12%で、サステナビリティ課題に対する意識や対応状況に大きな差が見られました。
図1: 経営課題におけるSXの位置づけとして、最も当てはまるもの(単一回答)
「SXを進める上で自社が抱える課題」に関する質問において、SXを最優先課題に位置付ける企業では、「SXを実現するための戦略の策定(29%)・実行(30%)」が課題として挙げられ、すでに具体的なアクションが進んでいる一方、様子見を行っている企業では、「サステナビリティ関連課題の把握と評価(62%)」という回答が目立ちました。また「SXを進める上で投資戦略をどのように変化させていくか」という質問において、SXを最優先課題に位置付ける企業は「DX投資(69%)」「環境投資(65%)」「人材投資(55%)」を増やすと回答している一方、様子見を行っている企業の51%が「まだ判断しかねている」という回答でした。以上の結果から、経営課題としてのSXのプライオリティを高めることが重要であり、その度合いによりSX推進のスピードに差が生じ、結果として中長期的な企業価値に影響すると考えられます。
図2: SXを優先課題に位置付ける企業(最優先企業)および様子見をしている企業(様子見企業)の主な回答
2. SXの推進におけるCFOの3つの役割
今回の調査で、経理財務を始めとするCFOアジェンダに対する課題意識を分析した結果、SXを推進し中長期的な企業価値を高めていくために、CFOは以下の3つの役割を果たすことが求められると考えられます。
- 価値創造のパートナー
中長期的な企業価値の向上を見据え、非財務的要素を踏まえた意思決定に資する情報をCEOや取締役会に提供する。 - 変革のイネーブラー
企業行動が社会に与える影響を視野に入れてリスク管理を行い、企業価値への影響を適切にコントロールし、従来の財務情報ベースの経営管理に非財務情報を統合し、SXを加速させる。 - 企業価値のプレゼンター
サステナビリティ課題への取り組みと成果が適切に企業価値へ反映されるように、投資家や金融機関を含めたステークホルダーとのコミュニケーションに注力する。
図3: SX推進に求められるCFOの3つの役割
3. 財務施策におけるCFOの関心事項は、昨年度の「現預金水準の見直し」から、「子会社資金管理」「財務ガバナンス強化」へ移行
新型コロナウイルス感染症がビジネスにもたらす影響が顕在化した2020年の調査では、資金調達や「キャッシュ」に対する施策として、多くのCFOが自社の「現預金水準の見直し」を最優先課題として挙げていました。前回調査からおよそ1年が経過し、喫緊の資金手当てについて一定の目途を付ける企業が多くなる中で、売上規模の大きい企業を中心として、CFOの関心は「子会社資金管理の強化」や「財務ガバナンスの強化」に移っています。
図4: 資金調達や「キャッシュ」に対して現時点で実行中または検討中の施策
4. CFOが責任を持つ業務領域として、「IT戦略・システム企画」「リスクマネジメント」が増加
「現在CFOが責任者となっている業務領域」に関する質問では、2019年の調査結果と比較して「IT戦略・システム企画業務」(22%→37%)および「リスクマネジメント」(28%→41%)が大幅に増加しています。
IT戦略・システム企画業務の増加については、デジタル技術を活用してビジネスを根本的に変革し、データを経営に役立てるという企業のDXが進んでおり、IT領域におけるCFOの責任・役割が増しているものと推察されます。リスクマネジメントが増加した背景には、ESGの要素を含む非財務情報が企業価値に影響を与えることが認識されるようになり、CFOはリスクの財務的な側面に限らず、非財務的な情報も含めて管理すべきという意識が高まっていることが要因と考えられます。
図5: 現在CFOが責任者となっている業務領域
調査概要
名称 | 「KPMGジャパンCFOサーベイ2021」 |
調査対象 | 上場企業461社のCFO ※売上高1,000億円未満が248社、売上高1,000億円以上5,000億円未満が115社、売上高5,000億以上3兆円未満が74社、売上高3兆円以上が24社 |
調査期間 | 2021年9月1日~10月8日 |
調査方法 | インターネットによる回答。全29問。 SXにより影響を受けるであろうCFOアジェンダに関連した質問。 |
本調査の詳細は、「KPMGジャパン CFOサーベイ2021」のページをご覧ください。
KPMGジャパンについて
KPMGジャパンは、KPMGの日本におけるメンバーファームの総称であり、監査、税務、アドバイザリーの3つの分野にわたる8つのプロフェッショナルファームによって構成されています。クライアントが抱える経営課題に対して、各分野のプロフェッショナルが専門的知識やスキルを活かして連携し、またKPMGのグローバルネットワークも活用しながら、価値あるサービスを提供しています。日本におけるメンバーファームは以下のとおりです。
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