「年金運用ガバナンスに関する実態調査2020」を発表

下方リスクを意識した「ポートフォリオ見直し」が今後の焦点に

有限責任 あずさ監査法人(本部:東京都新宿区、理事長:高波博之)は、確定給付型企業年金の運用担当者155名を対象に、第2回目となる年金運用ガバナンスに関する実態調査を2020年8-9月に実施し、調査結果を発表しました。

本調査結果の主なポイント

ガバナンス体制やモニタリング体制は2年前と大きな変化はなし

2018年度の調査から大きな変化はありません。モニタリング体制に関しては、一部の企業では毎月あるいは四半期ごとといった頻度でマネジメント層への報告がなされている一方、定期的な報告がなされていない企業も一定数存在しており、2年前と同様に企業間のばらつきがみられます。

年金運用実績の報告頻度

年金ガバナンスアンケート集計報告書2020

運用人材の配置・育成は依然として組織的対応が不十分

2018年度の調査から変わらず、規模を問わず大半の企業では、年金運用担当者は兼務しながら年金運用に従事している状況であり、かつ兼務者における年金運用業務への従事割合も50%以下が大半となっています。

また、人材の配置時には適性や経験を踏まえて選任する企業が多いものの、育成については本人の努力に委ねられている企業が多くなっています。人材配置や育成、マネジメントの関与など組織的対応の確立が課題と言えます。

年金運用担当者の業務従事度

年金ガバナンスアンケート集計報告書2020

スチュワードシップ・コード対応が未確定の企業は約7割にのぼる

スチュワードシップ・コードについては、検討中が約30%、未検討が約40%と、まだ対応を決めていない企業が前回の調査から変わらず大半を占めています。外部専門家の利用については、40%程度の企業で行われていますが、大企業が中心です。

社内で取り組みを進めていくには、年金運用や年金制度運営に関する専門知識や経験が必要になるため、必要に応じてこれらの事項に長けた外部機関のコンサルテーションを利用することが望ましいと考えられます。

年金ガバナンスアンケート集計報告書2020

今後の課題は下方リスクを意識した「ポートフォリオの見直し」がトップ

本調査は新型コロナウイルス感染症の影響を受けた2020年8月~9月に実施されました。今後の課題についての回答は2年前に引き続き「ポートフォリオの見直し」が最も多く、次いで「社内の運用人材の能力向上」や「ガバナンス体制の向上」が挙げられています。リスクを抑えたポートフォリオの構築や影響を受けにくい資産への切り替えが志向されていると思われます。

また、コロナ下での出社制限により、押印・書面文化による業務遂行の制約や、個人情報を扱うことによるテレワーク実施の困難、運用機関とのコミュニケーションがとりにくくなったことや新規運用機関とのアクセスの難しさが新たな課題として挙げられています。

調査概要

調査対象

以下に該当する上場企業(約1,500社)の年金運用実務担当者

  1. 連結従業員数300名以上
  2. 有価証券報告書に退職給付制度に関する注記をしている
  3. 確定給付企業年金または厚生年金基金を実施している旨の注記がされている
調査期間 2020年8月~9月
調査方法 インターネットによる回答(前回は書面)
回答数 155名(回答率:約10%)

あずさ監査法人について

有限責任 あずさ監査法人は、全国主要都市に約6,000名の人員を擁し、監査や各種証明業務をはじめ、財務関連アドバイザリーサービス、株式上場支援などを提供しています。 金融、情報・通信・メディア、製造、官公庁など、業界特有のニーズに対応した専門性の高いサービスを提供する体制を有するとともに、4大国際会計事務所のひとつであるKPMGインターナショナルのメンバーファームとして、147ヵ国に拡がるネットワークを通じ、グローバルな視点からクライアントを支援しています。

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