KPMGモビリティ研究所、「スマートシティ わが国の主要5都市における意識調査」を発表
KPMGモビリティ研究所は、「スマートシティ わが国の主要5都市における意識調査~住みやすい街づくりのためにできること」を公表しました。
KPMGモビリティ研究所は、「スマートシティ わが国の主要5都市における意識調査~住みやすい街づくりのためにできること」を公表しました。
- 日本の都市住民の関心が最も高いのは、「医療サービスの充実」(43%)
- 「モビリティ」に関して日本の都市住民の満足度は3.67と高く、他のアジア都市住民を0.2ポイント上回る
- 都市の持続的成長に必要な「教育と労働力」、「イノベーション文化の醸成」への関心度は、アジアと比べて日本は低い
KPMGジャパン(本社:東京都千代田区、チェアマン:森俊哉)の、国内外のモビリティに関わる研究・調査を行うKPMGモビリティ研究所は、「スマートシティ わが国の主要5都市における意識調査~住みやすい街づくりのためにできること」を公表しました。本調査は、日本の主要5都市である東京、大阪、名古屋、札幌、福岡の住民に、スマートシティに関する6つの項目に関し、現状をどう評価しこれから何を期待するかという観点で意識調査を実施・分析し、さらにアジアの都市と比較しています。
近年、日本各地でスマートシティの実証実験や構想・計画が発表、推進されていますが、既にインフラが相当レベルで整備されている日本においては、新技術の活用に主軸を置いた技術オリエンテッドな計画が多数を占めています。しかし、スマートシティの効果を最大限に発揮するためには、包括的なアプローチが必要です。本調査では、より進化したスマートシティ実現に向け、その必要要素のうち特に交通機関/モビリティ、教育(将来の労働力の育成)、住環境、医療サービス、エネルギー/資源、テクノロジーの6つの視点から考察をしました。主な結果は以下の通りです。
1)日本の都市住民の関心が最も高いのは、「医療サービスの充実」(43%)
2)「モビリティ」に関して日本の都市住民の満足度は3.67と高く、他のアジア都市住民を0.2ポイント上回る
交通機関/モビリティ項目の調査では、アジアの各都市(評点平均3.47)と比較すると、日本の公共交通やモビリティインフラ品質の全体的な評点は3.67と高くなっており、鉄道や地下鉄網の発達した日本の都市部においては、住民が一定以上満足していることがわかります。これは、エネルギー/資源管理項目の調査で改善が必要なものとして、アジアの都市で割合が最も高い「エネルギー効率の改善(68%)」が、日本においては7項目中4番目(50%)と低いこととも合致します。
しかし再生可能エネルギー源の利用促進については、諸外国での関心度の高さやESG・SDGsといったキーワードに代表される環境意識の高まりを踏まえると、喫緊の課題として今後加速していくものと予想されます。
3)都市の持続的成長に必要な「教育と労働力」、「イノベーション文化の醸成」への関心度は、アジアと比べて日本は低い
日本はアジアの都市と比較すると「教育の強化と将来の労働力の育成」が重要との認識が高くありません(日本34%、アジア40%)。また、都市の継続的な成功のための要素として「起業家支援やイノベーションを推奨する文化の醸成」は日本のすべての都市において9項目中9番目(12%)と最も低く、この点においても7番目(20%)となっているアジア諸国に比べ認識が薄いことが分かります。
スマートシティの持続的発展のために必須の住民参画において、基盤となる教育については、全体の評点平均が3.10と、アジアの都市の平均3.42に比べて低く、特に教育先進都市と言われる上海(3.71)、シンガポール(3.68)と比較すると低い評価になっています。今後、生涯教育やSTEAM教育*1の充実を進め、都市課題の解決には教育への投資が必要であるという認識を高める、イノベーション創出のサイクル実現が必要です。
*1 STEAM教育:Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art (芸術)、Mathematics(数学)の それぞれの頭文字をとったもので、学習を実社会での課題解決に生かしていくための教科横断的な教育。
「今後10年間継続して快適で暮らしやすい空間にするために、都市に重要な要素」
- 各項目につき、5段階評価(5:非常に重要である~1:重要ではない)で回答
- グラフは、「非常に重要である」と回答した方の割合を記載
本調査では、国内とアジアの各都市のアンケート調査を通して、住民の都市課題に係るニーズを把握・分析していますが、高齢化の進展という共通課題がありながらも、各都市の個別環境や住民意識の違いを背景とする重点課題の相違も認められました。
今後、日本においてスマートシティの構築を推進し、都市での生活をより豊かにしていくためには、そもそもスマートシティとは何か、誰のためのものか、という住民視点に立ち戻り課題解決を目指すとともに、スマートシティの開発・構築だけでなく、都市マネジメントのなかでスマートシティの開発・構築を継続的な取組みにつなげ、いかにして実証実験段階から社会実装段階に展開していくかについてもあわせて考慮していくことが重要です。
「スマートシティ わが国の主要5都市における意識調査」について
調査の概要 | 6分野(交通機関/モビリティ、教育(将来の労働力の育成)、住環境、医療サービス、エネルギー/資源、テクノロジー)の現状評価・今後期待することについて、アンケートを実施 |
調査対象 | 東京、大阪、名古屋、札幌、福岡の18歳以上の住民 |
調査時期 | 2020年1月 |
調査方法 | オンラインによる回答 |
回答数 | 4,147名 |
アジア都市との比較については、KPMG中国 香港事務所が2019年1月に発表したレポート「コネクティッドシティ:アジア太平洋地域での市民の洞察」(日本語版2020年3月発行)と質問項目を同一にし、その結果と比較しています。
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KPMGモビリティ研究所について
「KPMGモビリティ研究所」は、KPMGグローバルの各関連研究グループと連携し、社会構造の変化を1つの切り口=モビリティで捉えて産業横断的に研究しています。国内外のモビリティに関わる動向の情報収集や調査研究、モビリティ関連分野の専門家の育成、内外の知見に関する情報発信、そして将来的に産学官連携のハブとしての役割を果たしながら、日本のモビリティ発展に寄与することを目指しています。