真のDXを成功に導く「三位一体」の経営基盤構築

本記事は、真のDXを成功に導くための新たな道筋をKPMGのプロフェッショナルが対談形式で伝えます。

本記事は、真のDXを成功に導くための新たな道筋をKPMGのプロフェッショナルが対談形式で伝えます。

本稿は、2025年8月18日公開のダイヤモンド・オンラインに掲載された記事広告です。

DX投資は多くの企業にとって不可欠なものとなっているが、その投資に見合う成果を上げていると断言できる企業は多くないだろう。DXの成功を突き詰めるには、経営者、ビジネス部門、IT・デジタル部門それぞれの視点のベクトルを合わせる必要がある。あずさ監査法人のデジタルアドバイザリーをリードする3人のプロフェッショナルが、DXへの新たな道筋を示す。

システム・組織・人の 経営基盤構築を

編集部(以下太文字):多くの企業がDXに取り組んでいますが、成否を分けるポイントは何でしょうか。

島田:DX成功のための重要な要素として、経営者のコミットメントや全社横断的なDX戦略の策定と施策の実行が挙げられます。特に、経営者、ビジネス部門、IT・デジタル部門が「三位一体」となって変革を実現していくことが重要です。

真のDXは、ビジネスモデルの革新や新規ビジネスの創出といった企業全体の大きな変革を目指すものです。そのためには、部門間の協調や連携が不可欠であり、経営者が強いリーダーシップを発揮し、ミッションやビジョンの共有、制度や仕掛けづくりによって、推進態勢を構築することが重要です。

宇宿:三位一体でない場合に何が起きるかというと、ビジネス現場は真の課題ではなく、目先の困り事に囚われてしまいます。それが、業務のデジタル化レベルで終わってしまいがちな要因です。

 一方、IT・デジタル部門はビジネスニーズがつかめず、何がDXのゴールかが見えません。テクノロジーの知識はあっても、どう活用すればいいか判断できないのです。ビジネス側とIT・デジタル側が一体となることで、初めて真の課題が見え、それを解決するDXが進められます。このプロセスにおいて、経営者の役割は大きな方向性を示し、部門を越えた共創カルチャーを醸成することにあります。

木村:経営者は、そもそもDXの成功とは何なのか、という点を突き詰める必要があると思います。

 たとえば、3年の歳月をかけたDXプロジェクトがあったとします。3年前に設定した目標は達せられたかもしれませんが、一方でテクノロジーは極めて速いスピードで進化しており、生成AIのように、同じ目標をもっと効率的に達成することができるようにもなっています。DXによって競争優位を維持すること自体が難しくなってきているともいえます。スピーディなテクノロジーの進化とこれを受けた事業環境の変化をタイムリーにとらまえて足元の取り組みや施策を柔軟に変えていく、言わば「適応力」を持たなければ、持続的な成長が望めない時代ともいえましょう。DXの成功とは、事業環境の変化に俊敏かつ柔軟に適応していける経営基盤を構築することだといえます。ここでいう経営基盤には、テクノロジーだけでなく、組織や人の要素も含まれます。

真のDXを成功に導く「三位一体」の経営基盤構築図表01

左から:
あずさ監査法人
Digital Innovation事業部 
パートナー 宇宿 哲平

あずさ監査法人
Digital Innovation & Assurance 統轄事業部 
統轄事業部長 パートナー 木村 学志

あずさ監査法人
Digital Advisory事業部 
マネージング・ディレクター 島田 武光

その経営基盤の構築をどう進めていけばいいのでしょうか。

木村:DXとテクノロジーは切り離せませんから、まずテクノロジーの現時点での限界と、将来の可能性について進化のベクトルを理解できるケイパビリティ(組織能力)を持つことです。そして、テクノロジーを活用することで事業がどう変わっていくかについて、高感度のアンテナを持った人材・チームが必要となります。この2つが揃うことで、テクノロジーを活用した複数の変革シナリオをPoC(概念実証)的に少しずつ進め、常に数年先を見据えて最適な取り組みを取捨選択できるようになります。

 テクノロジーの限界と可能性を見極めるケイパビリティ、それを事業にどのように活かせるか、事業環境の変化を見極める高感度な人材・チーム、そして柔軟かつ、スピード感を持って変革シナリオを推進できるリーダーシップ。この3つの要素こそが、三位一体だと考えます。

島田:三位一体を実現するには、日常的に深く踏み込んだコミュニケーションを通じて、互いの「言語」を理解し、距離を縮め、共通の価値観や感覚を共有できるレベルに達する必要があります。それによって、ビジネス部門はテクノロジーの限界と可能性を理解できるようになり、IT・デジタル部門は真のビジネスニーズを把握できるようになります。

 我々あずさ監査法人のデジタルアドバイザリーサービスも、まさに三位一体の態勢で、クライアントのDXを支援しています。私が所属するDigital Advisory事業部と、会計士やIT・デジタルの専門家、データサイエンティストなど多様な専門家が集まる宇宿のDigital Innovation事業部は、物理的にも心理的にも日常的に密なコミュニケーションを重ねており、木村が経営者の視点でDigital Innovation & Assurance統轄事業部を束ねています。

宇宿:三位一体を達成するためには、経営の視点を理解したうえで、ビジネス現場とテクノロジー部門の対話において「トランスレーター」(翻訳者)の役割を担える人材が初期段階で必要です。ビジネス部門出身でもテクノロジー部門出身でもかまいませんが、そうした人材を育成することが三位一体実現の準備として重要だと考えます。

木村:企業がDXに取り組む際、経営者直属のDX推進チームを組成するケースが見られますが、時にビジネスの担い手となる部門から独立した別の組織になっています。その結果、現場間のコミュニケーションが取れていないケースや、予算編成、施策の実行などで摩擦が発生することで肝心のDXが停滞し、あるいは妥協の産物となってしまいがちです。我々がクライアント企業のDX推進を戦略から実行までトータルで支援する組織を立ち上げるに当たって工夫したのは、Digital Advisory事業部のビジネス視点とDigital Inno-vation事業部のテクノロジー視点を組織の壁を意識することなく、日常的に掛け合わせることができる環境を、これら事業部を統括する一つの組織の中につくったことです。

 宇宿のDigital Innovation事業部は、あずさ監査法人全体のR&D部隊であり、我々の本丸であるアシュアランス(監査)部門とも一体となって、監査の未来を切り拓くミッションを担っています。そのため、テクノロジーの可能性と限界の見極めを含めて多彩なケイパビリティを構築できています。そのうえで、コンサルティング部隊であるアドバイザリー部門とも密に連携し、サービスの品質や提供価値を高めています。このような大きな戦略の下に組成されたハイブリッド型組織であり、メインストリーム事業を巻き込んだDXを推進しています。

テクノロジーに対して 常に「中立」な視点を持つ

あずさ監査法人のデジタルアドバイザリーの強みは何でしょうか。

島田:我々の強みの源泉は、監査のDXに大きく投資してきたことです。それがファクトに基づく意思決定支援につながっています。現在の監査は、企業のシステムから大量のデータを取得し、それを分析する手法へと進化しています。企業経営者にとっても目指すべき方向は同じで、ありとあらゆるデータをリアルタイムで取得し、ファクトに基づく意思決定を行う必要があります。

 たとえば1兆円企業でも、売上データをドリルダウンしていくと、数百円、数千円単位の個々の商品の売上明細にたどり着きます。データを大きくとらえるか、細かく見るか。そのフォーカスや解像度を自由自在に動かし、マクロとミクロ両方の視点からファクトをとらえるのがデータドリブン経営の本質です。我々は監査のDXを通じて獲得してきたそのケイパビリティを、企業のDX支援において存分に活かしています。すなわち、「データセントリックなコンサルティング」です。

 我々のデジタルアドバイザリーは、データ分析能力、監査で培った知見、そしてハイブリッド型組織という強みを活かし、CIO/CDO(最高デジタル責任者)アジェンダを全方位でサポートします。

宇宿:別の角度から補足すると、我々は「インサイトの提供」と言っていますが、データを次のアクションにつなげられることも強みです。そのためには、データを細かく分解して理解する狭義の「分析」も重要ですが、それ以上に大事なのは、分解したものを「統合」するフェーズです。分析(分解)と統合を行き来しながらインサイトを導き出し、さらに「ストーリー」を構築していくこと。それが次のアクションにつながります。

DXを成功させるため、経営者にはどんな視点や姿勢が必要ですか。

木村:テクノロジーの可能性と限界をよく見極め、テクノロジーに対して過大な期待を抱かず、かといって敬遠もせず、「ニュートラルな視点」を持ち続けることです。そして、テクノロジーの進化のベクトルを見据えて、スピーディに仮説・実行・検証を続ける。そうすることで、変化し続ける事業環境、技術の変化を冷静に判断し、臨機応変に適応することが可能になります。

島田:テクノロジーの進化は非常に速く、いまできないことが1年後にはできるようになるかもしれません。このような変化に追随するためには、どんどんトライしていくアジャイルな企業姿勢が重要です。失敗が多いほど成功の数も増えます。だからこそ、経営者は失敗に対して感情的にならず、常にニュートラルでいるべきだと思います。

宇宿:ニュートラルでいるためには、足元ではなく「遠くを見る」視座が大切です。自分の立場を超え、組織全体としての行く先、経営課題といった大きな視点でとらえれば、物事の「本質」が見えてきます。

木村:経営者は、テクノロジーに関するさまざまな提案や「誘惑」に直面します。往々にして、そうした提案はテクノロジーやその未来について過度な期待を抱かせてしまうことがあります。

 一方、我々はテクノロジーやプロダクトに対しては常に「中立」です。したがって、経営者がニュートラルな視点でDXに取り組むことを真に支援できるのは、監査法人のアドバイザリーとしての大きな強みだと自負しています。

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